やっと学校へ到着。
こうやって毎朝挨拶し合えるのもこの学期最後か。
夏休みに入れば龍友と会う回数も急激に減る。
その度、私は悲しみに浸るだろう。
けど、1日があるから頑張れるよ。私。
ダッシュで教室に入る前、
キーンコーンカーンコーン
丁度チャイムがなってしまった。
あ、忘れてた。
寝坊&遅刻の王。
佐野玲於がいた。
先生の不気味な笑顔から始まった終業式。
校長の長い話も当然聞かされて
眠い中頑張っていた。
龍友に反応した私。
目はガンガンに開いて
龍友と目が合う。
変顔してきてちょっとひいたけど
そんなところが好きなんだ。
ば ~ か
そう口パクで言う龍友に
う る さ い
そう言い返した。
そんな光景を玲於が見ているとも知らず。
.
終業式は早く終わるからいいのに
なんて言ったって、私にはまだ居残りがある。
一学期最後のHRを、終えて
カバンに荷物を詰め込んで行く準備。
すっかり元気になったような玲於で安心。
ドアのそばで待っている玲於は
余程人気で1年生や同学年の子が玲於に会いに来ている。
黄色い歓声ってやつ?
なんか隣りずらいんだよな。
素っ気ない玲於。
どこがいいんだろ。
意地悪でいっつもいじめてくるのに。
でも、優しい1面も。
そういうところかな。
早く歩いていってしまう玲於の横に追いつくと
来んな
と、邪魔者扱いする。
つい反抗的になって玲於の腕を掴んで止まる。
お返しだ。
可愛い子がいえばかわいくなる言葉。
私にはもちろん向いていない
真剣な目で私を見てる玲於。
玲於の腕を離して職員室に向かおうとしたら
玲於に手を掴まれて
グサッ…
きついなぁ、今の。
玲於に言われ慣れてるのに今のは傷ついた。
やっぱ、駄目だったかぁ。
玲於には叶わない。
それからは素直に玲於の後ろを歩いた。
今日はご機嫌ななめな玲於さん。
なかなか口を聞いてくれない。
ま、そんな時もあっていいかな、なんて。
職員室に入るとやっぱ、コーヒーの匂い。
私の担任の元へ。
私の担任の後ろに泉さんがいた。
呼ばれているのか。
うるさい担任だ。
良かった…私は回避…
悪魔だ、この人。
" 転校の手続きだが… "
え?
後ろで聞こえた会話。
転校
というフレーズに反応した。
振り向くとやはりさっきも話していた泉さん。
それって、文化祭回れないんじゃ…
いつ見ても綺麗な泉さんだったが
今は寂しそうで壊れてしまいそう。
先生の話なんか頭にない。
ただ、泉さんが転校しちゃうと龍友が…
職員室を出てたまたま見えた泉さんの目を擦ったところを見て
私はいつの間にか走り出していた。
龍友の悲しむところなんか見たくないから。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!