龍友side
泉ちゃんとお茶中に1本の電話が。
あ、あなたやん。
軽々しくいつものように声をかけたら
追われてる…だとか言い出して僕の心臓は高く波を打つ。
目の前で心配そうに見上げる泉ちゃん。
なんて普段出さない寂しそうな顔と声。
ビックリしてえ?と聞いてしまった。
はぁ、僕は絶好なチャンスを逃した。
せっかく泉ちゃんの距離が縮むはずやったのに。
けど、、何故かあなたが追われてる
そう聞いた時は無性にも腹が立ち、焦った。
焦る気持ちを越して不安定にもなりそうやった。
泉ちゃんに頭を下げて出てきたカフェ。
今すぐ僕が言ったらんとダメな気がしてん。
早く、早く、
と、自分を急かすように走った。
そう携帯から声があって
さっきよりもスピードを上げてスーパーに向かった。
スーパー特有の音が流れる間、僕には心臓の音しか聞こえなかった。
どこにおるんや。
まだ、不審者おるかもしれへんのに。
探してあげへんと…
目を凝らしてあなたを探していると
あなたらしき人が携帯を握りしめて端にいた。
僕はすぐさまあなたに駆け寄った。
泣きそうな顔で僕に抱き着いた。
積極的。
なんて言ってられへん!!!
僕もあなたの背中に手を回す。
力の抜ける声で話す彼女を見てると愛しくなってきた。
僕の胸の中で話すから振動がこそばゆい。
僕から離れたあなたは顔を真っ赤にしながら
手は震えたまま。
声は出さず頷く。
なんやろ、この母性本能みたいな感覚。
守ってあげてぇ…そう思う。
普段は言わないあなたのお願い。
あなたの頭を撫でれば嬉しそうに笑う。
僕は震えるあなたの手を取ってスーパーを、出た。
恥ずかしそうに照れるあなたをいじめたくなって
恋人繋ぎしてやった。
別に繋いだらあかん理由なんか無いしな。
ぶぉっ、?
なんや?今の方言。
めちゃめちゃ可愛い。萌える。
そう言って恋人繋ぎから普通の繋ぎ方にした。
なんかこのままやとあかん気がしたから。
泣きそうな目で僕をみつめる。
彼女は下を、向いて小さく頷く。
なんか今日はあなたが愛しくてしゃあない。
ぎゅっと握ってやった。
ありがとう、そう呟くあなたに心臓は高く跳ねた。
実は言うと僕だって緊張して照れてしまいそうで、
ずっと堪えてんやで。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!