神晃side
ああ、皿洗いめっちゃ疲れた···。
結局、江華にはどんなに頼んでもお金を貸してもらえず、4800円分で約3時間、皿洗いをさせられた···。
江華はもう、夕飯の準備をし、野菜を切る音が聞こえる。今日の夕飯は、回鍋肉らしい。エプロン姿は少しだけ···かわいい。
ほんとになんで、俺はあんな奴と結婚したんだ、と最近思う。なんか、神威が産まれてから更に冷たくなってね?神威にめっちゃ優しくね?神威ずるくね?
おっといけねぇ。自分の子供に嫉妬する親がどこにいる。
けど、今、俺の足元で積み木で遊んでいる神威が、本当に羨ましく思えた。
「とうさん、みてみて!いつもそらにうかんでるふねつくったよ!これね、びゅーんってとべるんだよ!」
「おお!さすがだなぁ!」
さっきまでお腹を大きく膨らませてた神威は、すっかり元の体型に戻っていた。
「さっきのおみせのごはん、おいしかったね!」
「そうだな。」
「おれ、ごはんはちゅうかがいちばんすき!」
「夜兎の子だなぁ、お前は!」
夜兎族が最も好むのは中華料理だ。洋服も基本的に中華服だし。けど、なぜ『中華』なのかは未だに解明されていないそうだ。
「とうさんはちゅうかすきー?」
「おお、好きだぞ!さっきの中華屋さんの中華がどこのものよりも1番うまいなぁ···。」
ドン!!
台所の方から、いつもより強く野菜を切った音がする···。まさか···!
江華が台所から出てきた。目が、オロチを殺るときよりも怖い···。そして、両手に持ってるのは、家にある全部の包丁···。
「おい、ハゲ?今、なんて言ったかわからなかったから、もう一回言ってくれるか?」
「いや、江華さんの中華はうまいなぁ···なんて···。」
「神威···。父さんなんて言ってた?」
「か、かあさんのちゅうかがいちばんおいしいっていってたよ···?」
「二人して嘘をつくな!」
「「きこえてんじゃんんんんん!!」」
言った直後、江華が両手の包丁を一気に投げてきた。
俺は急いで、神威を肩車して、全力で外に逃げた。
江華は、包丁以外にも、家にある皿や神威のおもちゃなど大量に投げ続けてくる。
「あー!おれがつくったふねー!」
「後でまた作れぇぇぇえええ!!」
「とうさんんん!ひだりにほうちょうくるううう!」
そう言って神威は、俺の首を『ゴキッ』といわせて右に寄せる。
「痛ぇけどありがとおおおお!!!」
慌てて家の門に隠れて、難を逃れた···。
しかし、江華をなだめるまで約2時間かかり、神威は「おなかすいた」をずっと連呼しまくり···。ようやく夕飯にありつけた···。
アニメ324話「徨安のヌシ」より抜粋です!
次の更新は、22日〜です🙇💦
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。