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第5話

神威〜3歳②〜
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2019/02/11 11:09
神晃side

ああ、皿洗いめっちゃ疲れた···。
結局、江華にはどんなに頼んでもお金を貸してもらえず、4800円分で約3時間、皿洗いをさせられた···。
江華はもう、夕飯の準備をし、野菜を切る音が聞こえる。今日の夕飯は、回鍋肉らしい。エプロン姿は少しだけ···かわいい。

ほんとになんで、俺はあんな奴と結婚したんだ、と最近思う。なんか、神威が産まれてから更に冷たくなってね?神威にめっちゃ優しくね?神威ずるくね?

おっといけねぇ。自分の子供に嫉妬する親がどこにいる。

けど、今、俺の足元で積み木で遊んでいる神威が、本当に羨ましく思えた。

「とうさん、みてみて!いつもそらにうかんでるふねつくったよ!これね、びゅーんってとべるんだよ!」
「おお!さすがだなぁ!」

さっきまでお腹を大きく膨らませてた神威は、すっかり元の体型に戻っていた。

「さっきのおみせのごはん、おいしかったね!」
「そうだな。」
「おれ、ごはんはちゅうかがいちばんすき!」
「夜兎の子だなぁ、お前は!」

夜兎族が最も好むのは中華料理だ。洋服も基本的に中華服だし。けど、なぜ『中華』なのかは未だに解明されていないそうだ。

「とうさんはちゅうかすきー?」
「おお、好きだぞ!さっきの中華屋さんの中華がどこのものよりも1番うまいなぁ···。」

ドン!!
台所の方から、いつもより強く野菜を切った音がする···。まさか···!
江華が台所から出てきた。目が、オロチを殺るときよりも怖い···。そして、両手に持ってるのは、家にある全部の包丁···。

「おい、ハゲ?今、なんて言ったかわからなかったから、もう一回言ってくれるか?」
「いや、江華さんの中華はうまいなぁ···なんて···。」
「神威···。父さんなんて言ってた?」
「か、かあさんのちゅうかがいちばんおいしいっていってたよ···?」
「二人して嘘をつくな!」
「「きこえてんじゃんんんんん!!」」

言った直後、江華が両手の包丁を一気に投げてきた。
俺は急いで、神威を肩車して、全力で外に逃げた。
江華は、包丁以外にも、家にある皿や神威のおもちゃなど大量に投げ続けてくる。

「あー!おれがつくったふねー!」
「後でまた作れぇぇぇえええ!!」
「とうさんんん!ひだりにほうちょうくるううう!」

そう言って神威は、俺の首を『ゴキッ』といわせて右に寄せる。

「痛ぇけどありがとおおおお!!!」

慌てて家の門に隠れて、難を逃れた···。
しかし、江華をなだめるまで約2時間かかり、神威は「おなかすいた」をずっと連呼しまくり···。ようやく夕飯にありつけた···。









アニメ324話「徨安のヌシ」より抜粋です!
次の更新は、22日〜です🙇💦

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