阿部side
あなたはこの状況が理解できないらしく、
目を点にして不思議そうに俺を見つめていた。
俺には見えたよ。
あなたの頭の上に“?”がポポポッって並んでるの。笑
やっぱり疑問に思っちゃうか。笑
「俺がふっかの背中を押したんだよ?」
とか勝手に変なこと言えないし…
「共有スケジュールに書いてたじゃん!」
とか嘘つくのも良くないよね…
だから俺は嘘をついて本当のことを言った。
ウソ→買い物してたこと
本当→位置情報アプリで居場所を確認したこと
うん、あなたは強がってる。
本当はふっかと一緒に食べるはずだったんだよね。
両方食べたかったって言うのは本当で、
1人で2つ食べようと思っていたと言うのはウソ。
あなたも俺と同じで半分ウソ半分ホントのことを言って
無理やり自分を納得させようとしている。
俺らって似たもの同士なのかな。
それとも、本音で話せない仲なのかな。
心の奥がなんだかモヤッとした。
・
深澤side
はぁ…最悪。
今頃あなたは1人で丼物を食べているんだろうな…
本当に申し訳ないことをしてしまった。
マネージャーが運転をしながら収録の話をしているが、
一切耳に入ってこない。
入ってきたとしてもスーーーッと耳から耳へ抜けていく。
こんな様子で番組の収録なんかできるのかな。
俺は自然とスマホの画面の片隅にある位置情報アプリを
開いた。
最近開いてなかったからアプリが起動するまで
時間がかかる。
1%…2%…とローディングされて行くのにつれて、
俺の体力が1%…2%…と削れていくような気がした。
画面が100%になったとき、俺は目を疑った。
何でかって?
だってさ…
あなたと阿部が同じ場所にいるんだもん。
同じ建物にいるだけだとしても、おかしいでしょ。
もしかして、阿部は俺のスケジュール変更に気づいて
あなたの元へ向かったのか?
俺の背中を押してくれたのも阿部だし、
北海道展をしてるのを教えてくれたのも阿部。
ってことは…
♡×160
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!