高校の友人に会って久しぶりに盛り上がった。友人、と言えばいいのだろうか。
一度も友人と思ったことはない。けらけらと笑う低い声。私は彼を一度も友人として見ていない。
一人の異性として見ている。帰りたくないな。仕事が辛かった。一人が辛かった。みんな頑張ってるからと言い聞かせ自分の身体に鞭を打っている。
彼に会ったせいでだんだんと限界になってきてしまった。
改札口の前に立った時、私は現実に引き戻されてその場にしゃがみこんでしまった。
力なく首を横に振る。
この改札口を通り抜けたらもう彼に会えない気がする。
そんなわけない。
彼はこうして私に会ってくれた。
時間が無いのは私の方だ。
声を絞り出したと同時に涙が溢れた。
えとな、と涙声で名前を呼ぶと、無理矢理立ち上がるように支えられる。
今夜はオールかー、と私の前を行くえとなの手を握り返した。
彼は高校の時こんなに優しかっただろうか。好きだと思った。この気持ちを隠し続けている意味はあるのだろうか。
立ち止まって私の涙を拭ってくれた。その優しさに涙が溢れてくる。それを見て彼が笑って、「情けないなあ」と零した。
ずず、と私が鼻をすする。
今なんてと聞き返すと彼は私から顔を背けて「何でもない」とぶっきらぼうに言葉を投げた。ちゃんと聞こえていた。
だからこんなに今顔が熱いのだ。泣いてるせいもあるけど、もっと熱くなった
夜の空気を肺に取り込む。噎せるくらいに。
眠たげな目がこちらを見て、口角が上がった。
ぶわあと全身に熱が巡って、指先まで熱く、溶けてしまうんじゃないかなんて馬鹿みたいなことを考えている。
彼の頬が微かに朱に染まっているのが見える
また歩き出した。今日はもう帰さないからって、彼は言った。遠くで電車の、最後の発射音が聞こえた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。