叫び出したい気持ちを抑えて、私は大きなクリスマスツリーの下で、首を縦に振る他なかった。優しい目をした彼は、残酷に、私に、さよならを告げるのだった。
よりにもよって、
世の中が浮ついてる今日という日に、
泣き出したい気持ちを必死に抑えて、涙を飲み込んで、私は突然訪れたさよならに、
驚くほど冷静に処理しすぎてしまったのだ。
これじゃあ毎年ちょこぺろに振られたことを思い出してしまう。
ちょこぺろが私を好きじゃなくなったことを、思い出してしまう。
最悪の思い出を、彼は私の思い出に刻み込んで、去ってしまうのだ。
まさか周りのカップルも、すぐそばにいるカップルが別れてるなんて思いもしないだろう。
ずっとなんて言葉は嘘なんだ、いつかは別れる時は来る。
それは恋人同士が終わる時とかじゃなくて、死ぬ時とか、今回は、終わる時だけど。
どうせだったら死ぬ時が良かったな、なんて馬鹿げたことを考えていたもう叶うことなんかないけどね。
ちょこぺろと見るのはこれが最後になるけど、せめて、せめて綺麗な思い出も、私の中には残ってほしかった。
サンタさんも酷い人だ。大人になった子供には、こんな風に、現実ばかりプレゼントしてくる。
瞳から溢れてしまった涙には気づかないふりをした。
せっかくおめかししてきたのに。
ちょこぺろが悩みながら選んでくれたピアスも「よく分かんないけど、その色好きだよ」
と言ってくれたリップもつけてきたのに。
全部、真っ白になってしまった。
クリスマスの夜に、私の幸せが散る。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。