朝、目が覚めると、蒼一さんがわたしを見つめていた。
キョトンとするわたし。
「もしかして、昨日のこと覚えてないの?」
「え、なんこことですか?」
「……もういい」
「ぇ、え?」
昨日、わたしは蒼一さんになにかしただろうか?
思い出そうとしたけれど、だめだった。
蒼一さんはなにも教えてくれなかった。
わたしを見るたび、ため息をついた。
なにかしたのかな。
わけがわからなかった。
それでも、気になることがある。
蒼一さんの首もとにできた赤い斑点。
まるで誰かに付けられたような跡。
いつ、だれが、付けたのか。
わたしは、知らない。
「ねぇ」
「なんですか?」
「きみって案外大胆だよね」
「なんのことですか?」
なんのことだろう。
まぁ、いいか。
だって、こうやって蒼一さんとお話しができている。
それだけで、しあわせだから。
[終]
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。