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第1話

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32,475
2018/02/02 02:53
蒼一さん


わたしはあなたのことを


お慕いしています




そんなこと


言えるはずもないけれど




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



翌日場所に快晴だった。わたしは買い出しのため、街へ出た。

紙に書かれたものを、指示通りに買っていく。終える頃には、両手がいっぱいになるほどの荷物になっていた。

「ふぅ、いい運動になりそう」

落とさないように気をつけながら歩いた。

「そこのお嬢さん」

「え?」

振り向くと、知らない老爺がいた。老爺は、歪な木の椅子に腰掛けている。
「お嬢さん、王族の人間かい?」

「そうです」

「分家のほうの使用人かね」

「はい」

「そうか、そうか。そりゃご苦労なこった」

老爺は笑っていた。だから、わたしも笑い返した。

普段は他人に話しかけたりしない。それでも、話をしたのは、老爺だったからだ。

こんな老いた人が、悪い人間なわけない。

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