蒼一さん
わたしはあなたのことを
お慕いしています
そんなこと
言えるはずもないけれど
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
翌日場所に快晴だった。わたしは買い出しのため、街へ出た。
紙に書かれたものを、指示通りに買っていく。終える頃には、両手がいっぱいになるほどの荷物になっていた。
「ふぅ、いい運動になりそう」
落とさないように気をつけながら歩いた。
「そこのお嬢さん」
「え?」
振り向くと、知らない老爺がいた。老爺は、歪な木の椅子に腰掛けている。
「お嬢さん、王族の人間かい?」
「そうです」
「分家のほうの使用人かね」
「はい」
「そうか、そうか。そりゃご苦労なこった」
老爺は笑っていた。だから、わたしも笑い返した。
普段は他人に話しかけたりしない。それでも、話をしたのは、老爺だったからだ。
こんな老いた人が、悪い人間なわけない。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。