前の話
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おとぎばなしに出てくるような生き物って本当にいると思う?
たとえば、月夜にきれいな歌声を響かせる人魚姫。
たとえば、なんでも願い事を三つ叶えてくれる魔人。
たとえば、略奪の、あるいは心優しい鬼。
たとえば、魔法で姿を変えられた野獣やカエル。
天使、魔女、オオカミ男、吸血鬼……。
そして、妖精――――。
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今日から高校二年生!
といっても既に始業式は終わっていて、今はその帰り道。
いろんな意味でドキドキだったクラス替えは見事大勝利を収めた。
一番仲良しの紫苑ちゃんと一緒だったし、それに片思い中の常盤くんとも同じクラス……。
弾む足取りで桜並木の下を歩いていると、
急に吹いた突風で桜の花びらと一緒に飛んできた砂が目に入ってしまった。
痛む目をこすりながら道を歩いていると、
ドサッ
桜の舞う幻想的ともいえる景色の中で、あきらかに花びらとは違う、なにかの落ちた音が聞こえた。
興味本位で音の聞こえた方に近づいていく。
ひときわ大きな桜の木の下。舞い落ちるピンク色の花弁と一緒に空から落ちてきたのは、
――――手のひらサイズの可愛らしい〝妖精〟だった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。