『同性を好きになる』
ただそれだけのことが自身の存在価値を揺らがせていた
己が異物のように思えて、望まれていないように思えて
そんな中で自分を認めてくれる世界を見つけてしまったら
そこで溺れてしまうのは仕方のないことのように思う
中学生の頃に同性愛に目覚めたものの、仲間探しを始めたのは二十歳を過ぎてからだった
踏み込んだ世界は想像以上に汚くて
俺自身も汚れなければ、この世界にすら居場所はないと思った
それでも踏み切れなくて、以前よりも孤独を感じるようになっていた
自分を大切にする気持ちが更に薄れていき自暴自棄になった
自分のことをかわいいと言ってくれる人にふらふらとついて行き
自らを傷付けては、また恐怖し
恐怖が落ち着いたら次の人、と気付けば汚れてしまっていた
意思のない汚れは何の意味もなく
ただただ汚れただけ
そんな自分が世界に浸透出来るはずもなかった
物心ついた時から酷い言葉を浴びせ続けられた自分に対して、『かわいい』と声を掛けてくる人たちが異常に思えて、会うことをやめた
それでも『かわいい』と言われるために媚びを売るような真似をした
自己承認欲を満たしながら、何かを失い続けていた
そんな時だった
勇太に出会ったのは
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。