そう澪奈がみんなに向けて言ったのは遊園地に行ってから半月ほど経った日の朝のHRの時間だった。
病状が悪化し始めたら入院とかあるからいつかはこうなるとは思っていたけど、俺が想像していた時は意外と早かった。
ステージ4まであと28日。
余命宣告の日まではあと1ヶ月半。
……衰弱し始めるまであと1ヶ月。
笑顔で言い切った澪奈の表情は少し暗い。
戻ってこれないと分かっているのに戻ってこれたら良いななんて言いたくないだろう。
HRが終わると澪奈は俺、涼雅、日向を廊下に連れ出して人があまりいない階段に移動する。
日向の口を手で塞いだ澪奈が苦笑する。
曖昧な説明。
顎に手を当てて思い出すように澪奈が言ったのは有名な大学病院。
診察を受けていた病室とは違う場所だった。
澪奈の笑顔は一瞬曇ったのは気の所為だろうか。
澪奈のカウントダウンは刻一刻と迫っている。
この時、そんな辛く悲しい現実を強く見せつけられたような気分に俺はなった……
次の日の放課後、俺達は早速澪奈の様子を見に行こうと3人で堂々と部活をサボる。
少し時間はかかったが無事に病院に着くと、昨日聞いた病室を広い院内から探し、ドアをノック。
聞き慣れた声にスライド式のドアを開けると、患者服の澪奈がベッドでさくらんぼを摘んでいた。
澪奈の腕には点滴が繋がれていて、薬が1滴1滴と管の中へと落ちていく。
まだ自然に笑えている。
無茶して笑うのはもう知ってる。
だからこそ、この笑顔に曇りがかかった時、その時が澪奈がかなり危ない状態ってサインだ。
……って、俺は何を考えているんだろ。
心配ばかりしてたら、俺の精神が持たない。
澪奈は大丈夫だって思わないと。
願おうが時の速さが速くなることはない。
これから俺は段々と元気が無くなる澪奈を見ながら、ゲームに挑戦する他にすることはない。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!