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第20話

入院
148
2020/04/17 11:00
柊 澪奈
私、明日から暫く学校を休みます。
そう澪奈がみんなに向けて言ったのは遊園地に行ってから半月ほど経った日の朝のHRの時間だった。
柊 澪奈
理由は家の用事で〜…まぁ、戻って来れたら一番良いんだけど、もしかしたらそのままやめる可能性もあるんだよね。
桜井 紫苑
マジか…
病状が悪化し始めたら入院とかあるからいつかはこうなるとは思っていたけど、俺が想像していた時は意外と早かった。

ステージ4まであと28日。
余命宣告の日まではあと1ヶ月半。
……衰弱し始めるまであと1ヶ月。
柊 澪奈
まぁ戻ってこれたら良いな〜、とは思っています!
笑顔で言い切った澪奈の表情は少し暗い。

戻ってこれないと分かっているのに戻ってこれたら良いななんて言いたくないだろう。

HRが終わると澪奈は俺、涼雅、日向を廊下に連れ出して人があまりいない階段に移動する。
柊 澪奈
3人にはちゃんと言っといた方が良いかなって思って呼んだんだけど…
暁月 日向
なになに?
柊 澪奈
実は〜…家の用事って言うより私自身に問題があって入院するんだよね。
暁月 日向
えっ!?入い ─────
柊 澪奈
声おっきい!
日向の口を手で塞いだ澪奈が苦笑する。
暁月 日向
ご、ごめんごめん、驚いちゃって…
武政 涼雅
てか、入院って大丈夫なのか?
柊 澪奈
う〜ん、多分?さっきも言ったけど、戻ってこれたらいいなとは思ってるよ。でも、分からないんだよねぇ
曖昧な説明。
柊 澪奈
で、良かったらお見舞いに来て貰えたら嬉しいなって!
桜井 紫苑
…行く、毎日行く。
柊 澪奈
ほんと!?え〜っとね、病院名と私の病室は確か…
顎に手を当てて思い出すように澪奈が言ったのは有名な大学病院。
診察を受けていた病室とは違う場所だった。
暁月 日向
私も行ける限りは毎日行く!
武政 涼雅
俺も。
柊 澪奈
ありがと〜!嬉しい!
暁月 日向
治ったらさ?また4人でどっか行こ?
柊 澪奈
…うん!
桜井 紫苑
……。
澪奈の笑顔は一瞬曇ったのは気の所為だろうか。
柊 澪奈
また遊ぼうね!
澪奈のカウントダウンは刻一刻と迫っている。

この時、そんな辛く悲しい現実を強く見せつけられたような気分に俺はなった……




















次の日の放課後、俺達は早速澪奈の様子を見に行こうと3人で堂々と部活をサボる。

少し時間はかかったが無事に病院に着くと、昨日聞いた病室を広い院内から探し、ドアをノック。
柊 澪奈
どうぞー
聞き慣れた声にスライド式のドアを開けると、患者服の澪奈がベッドでさくらんぼを摘んでいた。
柊 澪奈
おっ、みんな!
桜井 紫苑
美味そうだな…
柊 澪奈
お母さんが入院手続きを終わらした時に一緒にくれたの。
暁月 日向
おー、流石澪奈ママ!
澪奈の腕には点滴が繋がれていて、薬が1滴1滴と管の中へと落ちていく。
武政 涼雅
お菓子買ってきたから食べられそうだったら食べて。
柊 澪奈
わっ!こんなにいいの?
暁月 日向
いーのいーの!澪奈は細過ぎる!
桜井 紫苑
食って元気になれ。
柊 澪奈
細過ぎるって…逆にこんなに食べたら太っちゃう気がする…
暁月 日向
太っても澪奈は可愛いから大丈夫!
柊 澪奈
何それ〜!
まだ自然に笑えている。

無茶して笑うのはもう知ってる。
だからこそ、この笑顔に曇りがかかった時、その時が澪奈がかなり危ない状態ってサインだ。
……って、俺は何を考えているんだろ。
心配ばかりしてたら、俺の精神が持たない。

澪奈は大丈夫だって思わないと。
柊 澪奈
紫苑?
桜井 紫苑
…あ、何?
柊 澪奈
何かぼ〜っとしてたから。
桜井 紫苑
ちょっと考え事。
柊 澪奈
え?感覚人間の紫苑が考え事なんて…
桜井 紫苑
おい、失礼だな。
柊 澪奈
じょーだんじょーだん!
桜井 紫苑
ったく…
願おうが時の速さが速くなることはない。

これから俺は段々と元気が無くなる澪奈を見ながら、ゲームに挑戦する他にすることはない。
桜井 紫苑
…ほんと勘弁してくれよ。

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