俺と涼雅が昼飯を食い終わってやっと一休みと思った途端、澪奈が目を輝かせて手を引く。
分かりやすくしょんぼりとした澪奈を見た日向が追い討ちをかけるように笑いながら言った。
引けなくなって澪奈とコーヒーカップに行ったが、俺はコーヒーカップを嫌という程、回転させられたせいで降りた時にはその場に膝をついた。
柵の外から呆れた顔を浮かべていた涼雅に肩を貸してもらい、近くのベンチへ。
澪奈は日向を連れて風のように去っていった。
ベンチの隣にあった自動販売機で水を買ってくれた涼雅が俺に差し出す。
いなくなるに間違いはない…。
でも、ここで涼雅に言うべきなのかと言われたら言わない方がいいだろう。
涼雅の問いかけを無視して、俺は慌ててスマホを出すと澪奈に電話をかけた。
止めようとした瞬間に切られた電話。
画面には3時ぴったりを表示していた。
俺はそう言うと、ジェットコースター乗り場に向かって走り出した。その後を涼雅がついてくる。
園内を走ったからスグにジェットコースター乗り場に着いたがそこはもう大混乱が起きていた。
この重大さが分からない涼雅を怒鳴り返し、俺は必死に止めるための知恵を絞る。
時速180km…壁を立てて止めるか?
いや、そんなことをしたら乗っている乗客がいくら安全レバーを下げていても怪我しかねない。
引っ張ったら多分、俺の腕がもげるし……
……なら、前に紐で壁をつけて押し進めながら段々と速さを落とす?
それだ。それならきっと出来る。
消火栓にあるホースなら強度もあるだろうし…
荷物を投げ捨てて、涼雅を置いていって、教えてもらった場所に全速力で向かう。
周りの人がヤバい人みたいな目で見てくるが、俺はそんな目も気にせず、消火栓を開けるとそのホースを取って職員の声を無視してジェットコースターの場所へと戻った…。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!