第17話

ジェットコースター
245
2019/08/06 14:11
俺と涼雅が昼飯を食い終わってやっと一休みと思った途端、澪奈が目を輝かせて手を引く。
桜井 紫苑
ん?
柊 澪奈
コーヒーカップ!
桜井 紫苑
昼飯、食い終わったばっか…
柊 澪奈
え〜…
分かりやすくしょんぼりとした澪奈を見た日向が追い討ちをかけるように笑いながら言った。
暁月 日向
澪奈、きっと紫苑は弱いから行きたくないんだよ。だから、弱虫は諦めなって。涼雅なら行ってくれるよ。
武政 涼雅
は?
桜井 紫苑
べ、別に行けるし。
柊 澪奈
ほんと!?行こ行こ!!
引けなくなって澪奈とコーヒーカップに行ったが、俺はコーヒーカップを嫌という程、回転させられたせいで降りた時にはその場に膝をついた。
女性
お、お客様、大丈夫ですか?
桜井 紫苑
は、い……。
武政 涼雅
すいません、そいつ。預かります。
柊 澪奈
大丈夫?紫苑。
桜井 紫苑
ああ…日向と回っといてくれ……
柊 澪奈
うん!
柵の外から呆れた顔を浮かべていた涼雅に肩を貸してもらい、近くのベンチへ。


澪奈は日向を連れて風のように去っていった。
武政 涼雅
吐くんなら、トイレ行けよ。
桜井 紫苑
分かってるし…。
武政 涼雅
ほら、水。
桜井 紫苑
あんがと…
ベンチの隣にあった自動販売機で水を買ってくれた涼雅が俺に差し出す。
武政 涼雅
てか、やんわりと断れば良かっただけじゃん。食ってすぐ後にあんな遠心力で吐きそうになるやつ乗るか?
桜井 紫苑
いつもなら断って乗んねぇよ…
武政 涼雅
じゃあ、何で?
桜井 紫苑
いや、澪奈がやりたいことを全部叶えてあげたくてさ…
武政 涼雅
何だよ、その澪奈がいなくなるみたいな言い方。
いなくなるに間違いはない…。
でも、ここで涼雅に言うべきなのかと言われたら言わない方がいいだろう。
桜井 紫苑
何となく気分的に叶えたいってこと。
武政 涼雅
そういうこと。
桜井 紫苑
ああ、ところで今何時?
武政 涼雅
今?えっと〜…2時58分だな。
桜井 紫苑
……マジで?
武政 涼雅
マジだけど…用事でもあった?
涼雅の問いかけを無視して、俺は慌ててスマホを出すと澪奈に電話をかけた。
柊 澪奈
『は〜い?』
桜井 紫苑
俺だ。今、どこにいる?
柊 澪奈
『ジェットコースターの列!』
桜井 紫苑
それに乗る ───
柊 澪奈
『あっ!もう順番来たから行くね!』
止めようとした瞬間に切られた電話。
画面には3時ぴったりを表示していた。
桜井 紫苑
ヤバい…
武政 涼雅
何が?
桜井 紫苑
ジェットコースターに向かうぞ。
武政 涼雅
体調はいいのか?
桜井 紫苑
俺の体調なんかよりも澪奈と日向だ。アイツらの今から乗るジェットコースターは暴走する。何とかして止めないと誰かが振り落とされて死ぬ。
武政 涼雅
い、いきなり何言い出すんだよ…
桜井 紫苑
本気だ。
俺はそう言うと、ジェットコースター乗り場に向かって走り出した。その後を涼雅がついてくる。


園内を走ったからスグにジェットコースター乗り場に着いたがそこはもう大混乱が起きていた。
桜井 紫苑
あの!何があったんですか?
女子
えっ?あ、あぁ、今走ってるあのジェットコースターが止まらなくなったらしくて…園の人も非常停止ボタンを押してるのに止まらないらしいです…
武政 涼雅
マジで…
桜井 紫苑
誰も振り落とされてないよな!?
女子
私がここから見ていた限りじゃまだ大丈夫です…!
桜井 紫苑
チッ、落とされるのも時間の問題…あの時速180kmの鉄の塊をどうやって止めようか…
武政 涼雅
はぁ!?お前、あれを止める気!?
桜井 紫苑
止めるんだよ!!止めないと、乗客は振り落とされて死ぬし、俺も澪奈も死ぬからな!!!
この重大さが分からない涼雅を怒鳴り返し、俺は必死に止めるための知恵を絞る。


時速180km…壁を立てて止めるか?
いや、そんなことをしたら乗っている乗客がいくら安全レバーを下げていても怪我しかねない。
引っ張ったら多分、俺の腕がもげるし……
……なら、前に紐で壁をつけて押し進めながら段々と速さを落とす?
それだ。それならきっと出来る。
消火栓にあるホースなら強度もあるだろうし…
桜井 紫苑
…あのこの辺に消火栓ある所が何処かとか知ってます?
女子
んっと……あっ!この近くにある電気ゴーカートにならあると思いますよ!
桜井 紫苑
ありがとうございます!
荷物を投げ捨てて、涼雅を置いていって、教えてもらった場所に全速力で向かう。
桜井 紫苑
あった…!
周りの人がヤバい人みたいな目で見てくるが、俺はそんな目も気にせず、消火栓を開けるとそのホースを取って職員の声を無視してジェットコースターの場所へと戻った…。

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