第19話

遊園地
120
2020/04/09 11:00
桜井 紫苑
何か悪ぃな、折角来たのに。
暁月 日向
なーにしけたことを言ってんの!紫苑のおかげで私と澪奈は助かったんだから!まぁ、澪奈は普通に何周もするコースターだと思ってたみたいだけど?
桜井 紫苑
は?
柊 澪奈
ちょっ、馬鹿日向!それは言わないって約束だったじゃん!?
暁月 日向
あっれー?そうだったっけ?あははっ、ごめんごめーん!
柊 澪奈
絶対わざとでしょ〜!?
武政 涼雅
すげぇな、考え方が…
柊 澪奈
ち、違うし!
桜井 紫苑
まぁ…楽しかったら良いんじゃないか?全員無事だったんだし。
暁月 日向
アンタはボロッボロだけどねー
桜井 紫苑
言うな…
少し痛いけど何とか動けるようになった俺は3人と駅に向かっていた。

俺のせいで時間が潰れたのは申し訳ない。

でも、潰してでもあれはやらないといけないことだ。
暁月 日向
それにしてもさ、紫苑よくすぐに対応したね?スタッフさんでも慌てて全然動けてなかったのに。
武政 涼雅
あー、こいつ、澪奈と電話するなりお前らが乗るコースターが暴走するとか言い出してすぐに向かったんだよ。
暁月 日向
えっ、マジで?
武政 涼雅
マジマジ。俺も嘘って思ってたんだけど行ったら実際なってて驚いた。
柊 澪奈
何それ凄〜い!紫苑、未来予知でも出来るようになったの?
桜井 紫苑
んー、何となく思っただけ?
柊 澪奈
何となくか〜…未来が見えるならさー?
少しガッカリしたのか肩を落とした澪奈は俺の横から数歩前に出ると前を向いたまま…
柊 澪奈
…“私の未来”を見てもらいたかったな。
…と呟いた。
暁月 日向
澪奈の未来なら世界王者っしょ!
柊 澪奈
世界王者!?そこまで行けるかなぁ…
桜井 紫苑
……澪奈なら未来予知しなくても大丈夫だって、何とかなりそう。
柊 澪奈
だと良いけどね〜
振り向いた澪奈はニッと笑う。

日向や涼雅が見ればいつも通りの澪奈だが、俺から見ると何処かその笑顔は寂しそうに見える。

閉ざされた未来だと分かってそんなことを聞くということはきっと“生きたい”、と強く思っているはず。
桜井 紫苑
ああ…




















『ステージ3、暴走ジェットコースターを止めろ』

「クリア」

次のステージは“44日後”。
桜井 紫苑
は?
柊 澪奈
どうしたの?
桜井 紫苑
あ、いや、何も無い…
帰りの電車、クリア通知と共に予告された次のステージまでの間の日数に俺は思わず声を上げていた。


いや、マジでちょっと待てよ。44日?
澪奈の余命ってあと2ヶ月のはずだよな?

仮に44日後にステージ4をクリアしたとして、その後にステージ5があるわけだろ?

こんなふざけた間だと次はもっと長くなる。
んなことされたら、ゲームクリアより澪奈の病気が勝つ可能性の方が高くなんじゃねぇかよ。
桜井 紫苑
……。
44という不吉な数字を俺はじっと見つめる。

残念ながら主権は俺にない。
つまり、ただただ澪奈が死ぬ前にステージ5が来るように願う他ないと言うわけだ。


失敗しても『continue』すれば、時を遡って同じ日に同じ内容を出来る。
だから、澪奈が死ぬ前にステージ5が始まれば取り敢えず、希望は見えるけど…

…GAME OVERになれば俺の大切なものを失わないといけなくなる。

そして、失うものが消えたら俺が死ぬ。
武政 涼雅
おっ、もう着くぞ。スマホしまえ。
桜井 紫苑
お、おう。
涼雅に言われてスマホをしまうと電車はすぐに俺達が降りる駅へと到着した。

改札を出ると俺達はいつも通り俺と涼雅、澪奈と日向に分かれる。

そして、いつも通りにどーでもいいことを話しながら涼雅と別れるところまで歩く。


全てが何事もないいつも通り。


2人の死を見続けている俺、一人以外は…

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