爆豪とかいう男と睨み合っていると、『スタート』という声が鳴り響いた。
突然始まったこともあって、一瞬固まったけどいっせいに走り出した。
演習試験の説明を殆ど聞いておらず何がなにやら状態の私は少し出遅れたけどみんなに着いて行った。
あれを倒せば良い…ってことかな
想像してたより大きい……。
やっぱ私には無理だよ啓吾。私の個性に攻撃力なんてないもん。
もうこのまま帰りたいな。疲れたし。
頑張ったでしょ、私だって十分。
嫌いな勉強も、特訓も頑張った。
頑張ったものを無駄にするのは嫌だ…って。
あの時はそう思ったけど。
もし仮に雄英に受かったとして。今日までの頑張りが報われたとして。
………それで、私が報われるなんてことはない。
結局は私の願いなんて叶えられっこないんだから。
そう思いながら目の前に現れたロボットに近づく。
このロボット、他のやつよりも大きい。強そう。
みんなが逃げていく中、私は近づいていく。
ロボットが言葉を理解出来るわけなんてなく、私目掛けて攻撃を仕掛けてきた
…………まぁ、死ねるわけないって分かってるからさ。
『てめぇが殺るロボなんてねぇんだよ俺が全部ぶっ壊す!!』
負けたく、ないからさ。
啓吾に今までいっぱい教わってきた。
啓吾は速いから。追いつくことで必死だった。
だからこそ、私にもひとつあるんだ。
『勝てる秘策』というやつが。
啓吾に比べたら全然遅い。
大きなロボの攻撃を上手く避けて、そのまま自分の方に誘導する。
ほとんどの受験者はこの場から逃げていて近くには私しかいないから必然的に私を追ってくる。
そのまま走っているとようやく違うロボットを見つけた。
上手く軌道を修正して、ロボットに挟み撃ちにされる状態となった。
ギリギリまでロボット達が近づいてくるのを待って。
あとほんの数メートルで押しつぶされるという距離で
“持ち前のスピードと羽で”、上へと飛び立った。
勢いの止まらないロボ同士が勢いよくぶつかって破壊された。
攻撃力のない私は、速さで勝負するしかない。
だから壊せたロボットの数はかなり少ない。
説明なんて聞いてなかったから、何ポイント稼げているのかも分からない。
………落ちてたら落ちてたで、別にどうでも良いけど。
『受かっててほしいな』って思うのは、なんでなのかな
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!