付き合って2ヶ月くらい経った頃
こんな噂が広まり始めた。
“ 人の彼氏を奪ったビッチ ”
“ 九条さんを落とす賭け ”
気にしないでいたけどその噂もどんどん大きくなった。
『急に呼び出してごめん』
「大丈夫だよ」
そう言って優しい笑顔を見せてくれる
……本当にずるい。
噂なんてものはますます信じられなくなった。
『あの噂は本当なの……?』
「違うよ、あれは嘘。あなたは気にしなくていいよ、俺がいるから」
『……うん』
彼の優しさに甘えていた。
ある日の昼休み__
「お前、九条さんとまだ付き合ってんのかよ」
「いいよな〜、お前ばっかり。ズリぃ」
「意外と尻軽女だぜ?」
「マジかよ」
「顔はいいけど」
「顔はまじでどタイプ」
「少し優しくしただけで信じ込んじゃってさ」
「お前最低だなw」
「人の彼氏奪ったっていう噂もお前が流したもんなw」
聞こえっちゃったよ全部
期待してた私がバカみたい
1番の味方だと思ってたのに
『今日も呼び出してごめん』
「大丈夫、噂のこと?それなら気にし___」
『別れよう』
「え?」
『私、あなたのこと勘違いしてたみたい』
「勘違い?」
『そう勘違い。優しいし、私のことを何よりも1番に考えてくれて、これ以上の人なんてこの先いないって思っとった。でも実際違った……あんたみたいなクズに甘えきってた私が馬鹿だった』
「っ……!聞いてたのかよ」
『聞かれちゃまずい様な話してんじゃねぇよ』
「!」
『さようなら』
それから噂はだんだん薄れていって、気づけば卒業していた。
この時から恋愛は嫌いだ_______________
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!