いつも通り私は咲のお見舞いに行った。
でもいつもとは違って先約がいた。
それもお母さんでもない、
男子の声がする。
『え……?』
病室を覗くと
『角名くん……?』
そこには間違いなく角名くんの姿があった。
いつの間にこんなに仲良くなってた?
そんなことを思いながらも病室に入ろうとすると2人の会話が耳に入った。
西野「私がずっとあなたの傍にいてあげれば良かった。裏切ったのにあなたはずっと私のお見舞いに来てくれた……本当は私、あなたの傍にいる資格ないんだ……」
『っ……!』
もしかしてずっと気にしてたの……?
咲は昔から人一倍責任を感じる子だった。
だからこそ“ 大丈夫だよ ”と証明するために
お見舞いに行っていたこともあった。
もしかしたら、逆効果だった……?
私の方こそ咲のことを考えられてなかったのかもしれない。
角名「そんなことないよ」
西野「え……?」
角名「信じてるって……その言葉だけで十分嬉しかったと思うよ」
西野「!」
そうだよ。角名くんの言う通りだよ。
私、咲がいなかったらとっくに負けてた。
だから咲には自分を責めないで欲しかった。
角名「俺が言うのもなんだけど……自分を責めないで」
『!』
昔、私が咲に言った言葉
まさか角名くんも同じことを言うなんてね。
色んな気持ちが混ざりあって
複雑な気持ちになった。
気づけば私は泣いていた。
そのまま声を殺して泣いた。
ドアにもたれかかってひたすらに。
咲、ありがとう_______________ 。
結局その日は病室に寄らず帰った。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!