第70話

3ー42
1,409
2020/08/01 09:53
「処で紅葉君」

森は顔を上げて紅葉の方を見た

「探偵社に囚われた時……
 何故逃げなかったのかね?
 君なら脱出は容易だったろう」
「何故かのう…
 茶が旨かったからかのう?」

紅葉は袖で口元を隠しながら
夕日が差し込む外の景色を見つめた

彼女は思い出していたのだ
太宰との取引を……

それは元マフィアの鏡花の命を守り
彼女が光の世界に行く…
即ち探偵社に入社するという
彼女の夢を叶える為のものだ

紅葉は太宰に従い鏡花の為に
暫く捕虜として探偵社内で大人しく待った

結果、鏡花は無事探偵社に入社する事が出来た

「太宰は今回の結末まで凡て見えておった
 恐ろしい男じゃ」

ポツリと呟く紅葉に
森は静かに口を開いた

「紅葉君
 君は強い……
 君が大切にしていた鏡花君が居なくなった今…
 もし君がポートマフィアを去る気なら
 追うのは難しいだろうな…」

首領としては気弱な言葉を発する森に
紅葉は目を見開くが静かに笑った

「無論じゃ
 ……じゃが生憎と
 頼りない首領が
 組織を立て直す手伝いがあるでのう……
 それに…今は此処が気に入っておる」
『…姐さん』

紅葉の発言にあなたは嬉しそうに微笑んだ

森も目を細めて窓の外を見遣った

「ふふ、嬉しいけど…
 私の守備範囲は十二歳以下だよ?」
「黙れ
 口を縫い合わすぞ」
「えーそれちょっと怖ーい
 あなたちゃん助けてー」
『ぇっと…』
「これっ
 あなたを困らすでない!」
「はは…」

室内は楽しげな声が広がり
ボトルが空になるまで
祝勝会は続いた

こうして……
ポートマフィア、探偵社、ギルドの戦いは
幕を閉じたのだった

プリ小説オーディオドラマ