第39話

3ー11
1,925
2020/01/30 09:07
『あー…』

戦いに来たわけではないのに
何故この展開になったのだろうかと
この様子に呆気に取られたあなたが声を出す

すると背後から気配と女の声がした

「アンタの相手はアタシだよ!」

あなたは鉈を振りかぶる与謝野の攻撃から
避ける為に後方に飛んだ

そのまま与謝野はあなたを追いながら
連続して鉈で攻撃を繰り出した
あなたはそれに当たらぬよう
後方に飛びながら避け続ける

しかし、後ろ向きで移動するあなたより
前に向かって走る与謝野の方が移動が早いため
あなたと与謝野の距離がだんだんと短くなってくる

そして、遂に鉈の攻撃範囲内に入ろうとしていた

「悪いけど暫く大人しくしててもらうよ!」

そう云ってあなたの肩に刃を当てる寸前

(異能力……〈空間操作〉)

あなたは脳内で呟くと
異能発動時の光と共に
片手にライフルが出現する

あなたはそれをしっかりと両手で握り
銃床に鉈を打つけて防御した

「なっ⁉」

与謝野は突然のライフルの出現に
驚いたが攻撃を休まずあなたを追った

一方あなたは鉈を打つけた
衝撃を利用し後方に飛んで着地するが
今度は咄嗟に横に避けた

丁度その時、あなたと入れ替わりで
賢治に蹴りを入れていた中也が
あなたが一度着地した場所に
静かに脚をつけた

その瞬間、背後に影が迫った

「ん?」

あなたを追っていた与謝野は
横に避けたことにより距離が空いた為
あなたではなく
今度は一番近い中也の背後から
鉈を大きく振り下ろした

しかし
気配を素早く察知した中也は高く飛んだ

飛んだ先は廃線の天井

「何⁉」

与謝野は驚きの声を上げた

中也が天井に足をつけ
逆さまの状態で立っていたからである

しかし与謝野は直ぐに納得した様に声を出した

「その異能……
 “重力遣い”の中原中也だね」
「ちっ……
 太宰の兵六玉が喋ったか」

中也は誰にも聞こえない声でボソリと呟く

しかし、いつまでも天井に立ったままでは
決着はつかないので中也は自身の異能を解いた

「よっ……と」

与謝野は帽子を片手に押さえながら
天井から降りてきた中也と
距離を取る為に少し後方に飛んだが
中也が降り立つと同時に
凄まじい音と砂埃がたつ

衝撃波で自分達の足元が大きく抉れ
中也を中心に半球状の窪みが出来ていた

地面に着地する寸前に
自身の重力を操り重くさせたのだった

「さァ……
 “重力”と戦いてぇのは
 何方だ⁉」

中也が殺気を出しながら声を張り上げる

沈黙が満ち
場は膠着状態に陥った

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