第53話

3ー25
1,709
2020/03/14 01:15
「此れがQの監 禁施設か…」

Qの異能発動前
異能特務課との密会中に
右腕を負傷した太宰は
森奥深くにある小屋の前で足を止めた

太宰が呟いた瞬間
背後から電源音と共に
強い明かりに照らされる

ザッと茂みから出てきたのは
銃で武装した男達と
ギルドの団員である
ハンチング帽を被った青年___ジョン・Sと
長髪で陰気な顔をした男___ラヴクラフトだ

ジョンは手を挙げながら太宰に笑いかけた

「こんばんは
 うちの作戦参謀は
 敵の行動予測が得意なもので」
「……罠か」

太宰はジョンの発言に不適な笑みを浮かべた

互いに睨み合い
緊迫した雰囲気になり始めた時
太宰の背にある小屋の上空に
何か黒い塊が浮かんだ

先に気づいたラヴクラフトが
動向を見つめていると
その塊は急激な速さで
ラヴクラフトに向かって飛んできた

あまりの速さに対処しきれず
彼はそのまま大きく飛ばされる

此の衝撃に巻き込まれた
小屋を照らすライトは次々と消えていく

敵襲に驚いた男達は銃を構えるが
敵を視認する前に
いきなり体を浮かされ
その後地面に強く叩きつけられた

太宰が頭をガシガシと掻きながら
溜息を吐いていると
太宰と挟んでジョンの前に
1人の男が地面に足をつけた

「最初に云っとくがなぁ…
 この塵片したら
 次は手前だからな?」

背後でまだ残っているギルドの男達を
指差しながら太宰に睨みを利かすのは
先程まで異能力で攻撃を繰り出していた
ポートマフィアの幹部___中原中也だった

現れた中也に対して
太宰は明らかに嫌そうな顔で
そっぽ向いた

「矢ッ張りこうなった…
 だから朝から遣る気が
 出なかったのだよねぇ」
「馬鹿な!
 こんな奇襲
 戦略予測には一言も……!」

ジョンは中也の登場に驚きながらも
新たな攻撃の為に
異能力で地面に向かって
葡萄の太い蔓を手の平から出したが…

「はい
 悪いけどそれ禁止」

太宰がジョンの背中側から
肩をポンポン叩くと
蔓は太宰の異能の光と共に
直ぐに消え失せた

“触れる事であらゆる異能を無効化する力”
其れが太宰の異能力だ

「はぁー…
 最悪だ…」

太宰がまた更に深く溜息を吐いた

既に太宰の異能の効果を知っていたジョンが
悔しげな顔をしていると

「其れはこっちの台詞だ!」

中也は苛立ちの声を上げながら
ジョンに向かって重力で強化した
重い蹴りを入れる

ラヴクラフトと同様に
小屋から大きく離れた処まで
ジョンは蹴り飛ばされて行った

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