言っている意味がわからず、固まったままめぐちゃんを見つめる。
(誰と話してるのって……どういう意味……?)
困惑したまま視線を目の前に移すと、悲しそうに小さく微笑む大ちゃんがいた。
黙ったままの私達にそう告げると、少し心配そうな顔を見せるめぐちゃん。
教室を出て行こうとするも、一度立ち止まって振り返ると何か言いたそうに私達を見る。それでも何も言わずに黙ったままクルリと背を向けると、そのまま静かに教室を後にしたーー。
ずっと黙ったままめぐちゃんを見送った私は、ゆっくりと首を動かすと目の前の大ちゃんへと視線を移した。
相変わらず悲しそうな顔をしている大ちゃんに向けて、小さく震える声で話し掛けてみる。
カタカタと震える手をキュッと握り締めると、答えを求めて大ちゃんを見つめる。そんな私から視線を逸らすと、黙って俯いてしまった大ちゃん。
そんな姿を見て、再び私の中で生まれはじめる小さな不安。そんな不安に押し潰されそうになりながらも、震える手を大ちゃんへ向けてそっと伸ばしてみるーー。
ーーー!?
大ちゃんに触れたはずの私の手は、そのまますり抜けるようにして宙を舞った。
驚いた私は、自分の手をただ呆然と見つめた。
小さく震える声に反応してゆっくりと視線を上げてみれば、私を見つめる大ちゃんと瞳がぶつかった。その大ちゃんの瞳からは涙が流れ、とても辛く悲しそうな顔をしている。
泣きながら謝る大ちゃんの姿を見て、まるで心臓を鷲掴みにされているかのように胸が苦しくなる。
(そんな訳あるはずがない……)
私は椅子から立ち上がると一歩後ずさった。
(嘘……っ嘘……っ!)
涙に濡れた顔で悲しそうに微笑む大ちゃん。
私は震える自分の手を見つめると、今日あった出来事を一つ一つ思い出した。
先程めぐちゃんに言われた言葉。
音楽室で不思議そうな顔をしていた瞳ちゃん。
タイムカプセルを開けた時の皆んなの笑顔と会話。
初めから感じていた違和感。
そうーー
私は、大ちゃん以外と目も合わせていなければ会話もしていなかった。
チラリと窓に視線を移すと外はもうすっかりと陽が落ち、教室の灯りでまるで鏡のように私の姿を映し出す窓硝子。
(あぁ……そうだったんだ)
高校生になった話し。
廃校の話し。
タイムカプセルを掘り起こす話し。
大ちゃんから聞かされたその話しは、どれも私にはよくわからなかった。
窓に映った自分の姿を見て、その理由がようやくわかった。
幼い顔で涙を流すセーラー服姿の小さな自分を見て、私は小さく微笑んだーー。














編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。