第9話

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2020/05/27 10:00
日和
日和
えっ……?
 言っている意味がわからず、固まったままめぐちゃんを見つめる。

(誰と話してるのって……どういう意味……?)

 困惑したまま視線を目の前に移すと、悲しそうに小さく微笑む大ちゃんがいた。
めぐ
めぐ
……私達もう浩一の家に行くから、終わったら来てね。……それじゃ、後でね
 黙ったままの私達にそう告げると、少し心配そうな顔を見せるめぐちゃん。

 教室を出て行こうとするも、一度立ち止まって振り返ると何か言いたそうに私達を見る。それでも何も言わずに黙ったままクルリと背を向けると、そのまま静かに教室を後にしたーー。

 ずっと黙ったままめぐちゃんを見送った私は、ゆっくりと首を動かすと目の前の大ちゃんへと視線を移した。

 相変わらず悲しそうな顔をしている大ちゃんに向けて、小さく震える声で話し掛けてみる。
日和
日和
大ちゃん……。誰と話してるのって……どういう意味だろ……?
 カタカタと震える手をキュッと握り締めると、答えを求めて大ちゃんを見つめる。そんな私から視線を逸らすと、黙って俯いてしまった大ちゃん。

 そんな姿を見て、再び私の中で生まれはじめる小さな不安。そんな不安に押し潰されそうになりながらも、震える手を大ちゃんへ向けてそっと伸ばしてみるーー。

 ーーー!?
日和
日和
……え?
 大ちゃんに触れたはずの私の手は、そのまますり抜けるようにして宙を舞った。
日和
日和
なん……で……?
 驚いた私は、自分の手をただ呆然と見つめた。
大樹
大樹
……ごめん。ひよ、ごめん……
 小さく震える声に反応してゆっくりと視線を上げてみれば、私を見つめる大ちゃんと瞳がぶつかった。その大ちゃんの瞳からは涙が流れ、とても辛く悲しそうな顔をしている。
大樹
大樹
ずっと待たせてごめん……
 泣きながら謝る大ちゃんの姿を見て、まるで心臓を鷲掴みにされているかのように胸が苦しくなる。
大樹
大樹
俺、ずっとひよの事探してたんだ……
(そんな訳あるはずがない……)

 私は椅子から立ち上がると一歩後ずさった。

(嘘……っ嘘……っ!)
大樹
大樹
まさか学校にいるとは思わなくて……。ずっと一人で待たせてごめんね
 涙に濡れた顔で悲しそうに微笑む大ちゃん。

 私は震える自分の手を見つめると、今日あった出来事を一つ一つ思い出した。

 先程めぐちゃんに言われた言葉。
 音楽室で不思議そうな顔をしていた瞳ちゃん。
 タイムカプセルを開けた時の皆んなの笑顔と会話。

 初めから感じていた違和感。

 そうーー
 私は、大ちゃん以外と目も合わせていなければ会話もしていなかった。

 チラリと窓に視線を移すと外はもうすっかりと陽が落ち、教室の灯りでまるで鏡のように私の姿を映し出す窓硝子。

(あぁ……そうだったんだ)

 高校生になった話し。
 廃校の話し。
 タイムカプセルを掘り起こす話し。
 大ちゃんから聞かされたその話しは、どれも私にはよくわからなかった。

 窓に映った自分の姿を見て、その理由がようやくわかった。

 幼い顔で涙を流すセーラー服姿の小さな自分を見て、私は小さく微笑んだーー。

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