窓硝子に映るセーラー服姿の自分を見つめ、私は念願だった制服のリボンにそっと触れた。
(何故気付かなかったのだろう……。いやーー本当は気付いていたのかもしれない)
それでも、認めたくなかった私は無意識に真実を見ようとしていなかった。
長い間一人で大ちゃんを待ち続けている間に、私の記憶はどんどん曖昧になっていった。
大ちゃんに会いたいーーその強い気持ちだけを残して。
そんな時、突然目の前に現れた大ちゃんに私はただ喜び、大ちゃんが話す事だけを信じた。
ずっとこのまま大ちゃんと一緒にいたい。そんな想いから真実から目を背け続けていた。
ようやくその事実に気付いた私は、忘れていた全ての記憶を取り戻すことができた。けれど、それはとても受け入れ難い事だった。
私は悲しみにそっと目を伏せると、真実と向き合う覚悟をする。
ーー四年前の冬、私は死んだのだ。
窓から大ちゃんへと視線を移すと、私は泣きながら微笑んで口を開いた。
そう言って涙を流しながらも優しく微笑んでくれる大ちゃん。そんな姿を見て、約束を守れなかった事にチクリと胸が痛んだ。
冬休みに会いに来てくれると約束したのに、私はその約束を果たせなかったのだ。
次から次へと流れ出る涙を拭いながらそう伝えると、大ちゃんは流れ出る涙を拭いながら咽び泣いた。
泣きながらも懸命に笑顔を作ってくれる大ちゃんに、私は優しさを感じて胸が熱くなった。
(大ちゃんを好きになって良かった……)
本当に、心からそう思えた。
涙を流しながらも、大ちゃんに向けて精一杯の笑顔を見せる。
(やっと気持ちを伝えられた……。もう、これで思い残す事はない)
大ちゃんのその言葉に、嬉しさで涙が止まらない。
咽び泣く大ちゃんを前に、私は涙を流しながら嗚咽した。
そんな私を目にした大ちゃんは、そっと私に近寄ると口を開いた。
私の頬を包み込むようにして手を添えた大ちゃんは、優しく微笑むとそっと瞳を閉じた。
(大ちゃん……本当に大好きだよ……。大ちゃんに出会えて良かった……。私ーー凄く幸せだったよ)
近付く大ちゃんを視界に捉えた私は、そっと瞼を閉じるとそれを受け入れたーー。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。