校舎に向かっていた大ちゃんが、突然入り口とは別の方へと歩き出し手招きをする。
(どうしたのかな? )
そう思いながらも黙って後を追う。
校舎に沿って歩く大ちゃんの背を見つめながら歩いていると、突然大ちゃんが口を開いた。
目の前で立ち止まった大ちゃんの横まで近寄ると、その視線を辿ってみる。するとそこには、白やピンクや紫の花びらを付けた、とても綺麗な花が花壇に咲いていた。
瞳を輝かせる私を見てクスリと笑った大ちゃんは、花壇の前にしゃがむと口を開いた。
優しく微笑む大ちゃんに私は笑顔で答えた。
(忘れもしないーー大ちゃんが私にくれた花だから)
枯れない花が欲しいと言った私に、大ちゃんはキャンディータフトを押し花にして栞にしてくれた。
あれは確か、小学四年生の頃。
少し歪な形をしたその栞は、不器用な大ちゃんが私の為に一生懸命作ってくれたんだと、私は子供ながらに凄く嬉しく思ったのを覚えている。
(今でも大切に持ってるよ、なんて恥ずかしくて言えないけど。……私の宝物)
大ちゃんも覚えててくれたんだと、私は心が温かくなるのを感じた。
(……大ちゃんは、この花言葉の意味を知っているのかな?)
当時、栞を貰った私は嬉しくてキャンディータフトをたくさん本で調べた。
そんな昔の自分を思い出し、フフッと微笑む。
花を見て小さく笑った私に、大ちゃんは不思議そうに首を傾げる。
笑顔で答える私にとても優しく微笑み返した大ちゃんは、そう言うと目の前の花へと視線を移した。













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!