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第12話

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【今、大ちゃんは幸せですか?
 十年後って事はもう二十三歳だね。
 きっと凄くカッコ良くなってるんだろうなぁ。】



 涙に濡れる瞼をそっと開くと、大樹は誰もいなくなった空間を見つめた。すると、ヒラリと何かが舞って床へと落ちた。

 それを追うようにして身を屈めた大樹は、足元に落ちたそれをそっと拾い上げてみる。すると、それはキャンディータフトの押し花が収まった少しいびつな形の栞だった。



【私は今十二歳です。
 中学生になったんだよ。
 でもね、具合が悪くて学校に行けてないの。
 毎日寂しいです。
 早く私も大ちゃんと一緒に学校に行きたいな。】



 栞をギュッと握りしめた大樹は、フラリと歩き出すと机に置かれた封筒を手に取った。

 ゆっくりと椅子に腰を掛け、涙を拭って取り出した手紙を読み始めた大樹。



【まだ一度も着れていないセーラー服、早く大ちゃんに見せたいな。
 それを着て一緒に学校へ行くのが今の私の目標なの。
 軋む廊下、私も早く歩いてみたいな。
 来年の春には、一緒に桜が見れたらいいね。】



 手紙を持つ手は小刻みに震え出し、大樹は涙を拭いながら咽び泣いた。



【頑張って元気になったら、大ちゃんと思い出いっぱい作るの。
 一緒に中学校を卒業して、高校も、一緒だと嬉しいな。
 十年後の私達は何をしてるのかな?
 今でも一緒にいますか?
 一緒にいれたら嬉しいな。】



 栞を握りしめた手にグッと力を入れると、悲痛に顔を歪ませた大樹は誰もいない教室で一人泣き叫んだ。



【大ちゃん、私ね。
 ずっとずっと……大ちゃんの事が好きでした。

 大ちゃんに出会えて、私は本当に幸せです。】



 静まり返った校舎には大樹の悲痛な泣き声だけが虚しく響き渡り、まるでそれを慰めるかのように、桜の花びらを乗せた風が優しく吹いてその声をさらっていったーー。








 ー完ー