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第1話

欠片を残して
25
2020/02/23 12:10
すべり台に頭を乗せて空を見る。

いつもより晴れた空が、俺を見下ろす。

優しい風と強い風が交互に行き交い、髪の毛を揺らす。

心臓に手を当ててみると、無いはずの心臓が音を立てた気がして、少しびっくりする。

まあ、気のせいなのだけど。

俺は幽霊なのだから。

なぜ幽霊になったかって?

そうそう。その事を話すために俺は今日ここに来たんだ。


あれは、雪の降る夜の事だった。

辺りはもうクリスマスの準備をしていて、イルミネーションとやらがきらきらしていた。

その中、俺は病室の中で本を読んでいた。

別に、小説が好きなわけではないんだけど、彼女が来るまで暇だったんだ。

キリのいいところで小説をとじ、目を閉じた。

30分後ぐらいでふと目が覚めると、布団の上に少しの重みがあった。

俺は体を起こし、布団を見ると、そこには彼女が眠っていた。

しやすやと寝息を立てるその姿は、まるで天使のように可愛いかった。

そんなことを思っているうちに、彼女がピクリと動き、眠そうな顔をしながら起き上がった。

「おはよ」

俺が声を掛けると、彼女はふわっと笑顔を見せる。

「おはよう。弘樹(ひろき)くん」

透き通った優しい声は、個室の中に響きわたった。

やっぱりこの声は落ち着くなぁ。と改めて思った。

昔から聞き慣れているこの声が、俺は大好きだ。

「水穂(みずほ)」

俺が声を掛ける。

「ずっとずっと一緒にいような」

「それは弘樹君の頑張り次第だね」

この会話を最後に、俺の命は途切れたんだ。













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