すべり台に頭を乗せて空を見る。
いつもより晴れた空が、俺を見下ろす。
優しい風と強い風が交互に行き交い、髪の毛を揺らす。
心臓に手を当ててみると、無いはずの心臓が音を立てた気がして、少しびっくりする。
まあ、気のせいなのだけど。
俺は幽霊なのだから。
なぜ幽霊になったかって?
そうそう。その事を話すために俺は今日ここに来たんだ。
あれは、雪の降る夜の事だった。
辺りはもうクリスマスの準備をしていて、イルミネーションとやらがきらきらしていた。
その中、俺は病室の中で本を読んでいた。
別に、小説が好きなわけではないんだけど、彼女が来るまで暇だったんだ。
キリのいいところで小説をとじ、目を閉じた。
30分後ぐらいでふと目が覚めると、布団の上に少しの重みがあった。
俺は体を起こし、布団を見ると、そこには彼女が眠っていた。
しやすやと寝息を立てるその姿は、まるで天使のように可愛いかった。
そんなことを思っているうちに、彼女がピクリと動き、眠そうな顔をしながら起き上がった。
「おはよ」
俺が声を掛けると、彼女はふわっと笑顔を見せる。
「おはよう。弘樹(ひろき)くん」
透き通った優しい声は、個室の中に響きわたった。
やっぱりこの声は落ち着くなぁ。と改めて思った。
昔から聞き慣れているこの声が、俺は大好きだ。
「水穂(みずほ)」
俺が声を掛ける。
「ずっとずっと一緒にいような」
「それは弘樹君の頑張り次第だね」
この会話を最後に、俺の命は途切れたんだ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。