乱数はあなたに喜ばれたのが嬉しい様でニコニコしながら電話帳を開く。
先程の嬉しそうな顔は何処へやら。
顔から表情が消え去り、目から輝きが無くなった。
手が止まった乱数を、あなたは心配そうに見詰めた。
露骨に嫌そうな顔と声音をしていた。
其れを見ていたあなたは頭に疑問符だけを浮かべていた。
乱数は自分達の番号を入れた後、寂雷の番号を消そうとした。
乱数が消去しようとしたことに気付いた瞬間、直ぐに其れを阻止した。
拗ねていた。
あなたは少し考える様な顔をした。
あなたは乱数に突然顔を近づけたと思ったら…
接吻したのだ。乱数に触れるだけの軽い接吻を。
その現場を目撃した幻太郎と帝統は固まっていた。
乱数も理解が追い付かず、固まっていた。
《回想》
此れは、あなたが偶然つけたテレビでの出来事だった。
あなたがつけたテレビには男女が接吻をしている場面が映っていた。
一郎は急いであなたの目を手で隠した。
三郎はテレビの電源を急いで切り、二郎は自分の目を覆いあたふたしていた。
一郎はあなたの目を覆っていた手をさっと退ける。
《回想終了》
先程まで黙っていた乱数が口を開いた。
膝に座っていたあなたを自分側に向かせてぎゅっと抱き付く。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!