無料ケータイ夢小説ならプリ小説 byGMO

前の話
一覧へ
次の話

第1話

フランスの帰国子女




「すみません。安藤瑞乃さんってどなたですか??」

とある日の放課後、あの男子がクラスにやってきた。それも、私の友達に会いに。

友達の瑞乃は目を丸くして急いで教室の扉まで小走りで向かう。

「これ、理科室に教科書忘れてましたよ。」

「あ。すみません…!ないと思ったら…。」

「へへへ。たまにありますよね。じゃあ、また。」

たったこれだけの出来事だった。

今の瞬間、教室は確実に彼の放つ強い金色のようなオーラに包まれていた。

多くの生徒の視線はそちらに集まっていた。

瑞乃はというと…今の彼の笑顔に釘付けで…そのまま扉の前で突っ立って、彼の背中を見届けていた。

その後私に駆け寄ってこう言ってきた。

「…ねぇ……初めて話したけど…めっちゃかっこいいよ…!!」



彼の名は逢坂雅。


フランスからの帰国子女と聞いている。


そして、学年首席。


その容姿の良さから、女子にかなりモテていて人気が高い人物であり、


いっつもキラキラしてて、

ニコニコしてて、

女の子にたくさん話しかけられてウザイはずなのにそんな素振りも見せない。

それでいて頭も良いし、運動神経も良いと聞く。


所謂、完璧人間。


全然抜けがないし、これといって悪い所も無い。


だからこそ私は、彼が何を考えているか分からない。


何か胸の内に隠れていそうな…そんな気がしたから。



彼は、私があまり好まないタイプの人物だ。




むしろ、苦手だし、そんな彼が嫌いだ。



なのに、


「あー…。純理、私今人生で初めての一目惚れをしてしまったっぽい…」


「え…えーー?!」


そんな彼の事を、友達が好きになってしまった。



第1話 フランスの帰国子女

今日はお互いに部活がお休み。
瑞乃は吹奏楽部で、私はバドミントン部だ。

帰りに私達は駅前のカフェで話してから帰ることになった。話題はもちろん、逢坂雅のことについてだ。

「逢坂くん…本当にかっこよかったなぁ…」

と、タピオカミルクティーを飲みながら瑞乃が言う。

「逢坂がイケメンなのは確かに分かるよ?でも、一目惚れなんて信じない方が良いよ。」

「えー?なんでー?」

「私からしたら、一目惚れする人の気持ちが分からないよ。中身も知りもしない状態でよくそれで、この人の事が好き!って判断できるよなーって思っちゃう!」

私は瑞乃のためを想ってはっきり言った。話すのに熱がはいりすぎて、手に持ってる抹茶タピオカが進まない。

「それに、かっこいい=好きに繋がると決まった訳じゃないでしょう?」

「でもなー。あの時逢坂くんの笑顔見たらさー…今までに無い感覚になったというか…。」

「えー?」

「キュンってなったの…!それに、男性に対して顔を赤くするとか初めてだよ…!」

とはいえ、彼女は面食いだ。好きな芸能人の傾向だって、どの人も誰が見てもイケメンと思う人ばかり。それを知っていた私は、この気持ちを恋心だとすぐには確定させたくなかった。

「うーん。せめてものさぁ、今すぐに瑞乃の気持ちを恋愛感情だって決めつけない方がいいと思う。瑞乃イケメン好きじゃん?だから、私からしてみたら、ただのミーハー心にも見えるんだよね。」

「えー!?」

何を言っても瑞乃はそんな事無いと言う。

「分かんないじゃん。何日かしたら冷めてるかもよ?何週間とか経ってみて、それでもまだ逢坂の事が気になって仕方ないとかなら、それは恋心かもしれないけど…。」

単純に私が逢坂の事を良く思ってないからこそ、瑞乃には悪いけど、彼女が彼を好きになった事を認めたくないし、逢坂とくっ付いてほしくないっていう気持ちもあった。それに、


瑞乃に片想いしている人を私は知っていたから…。その人のためにも瑞乃の逢坂への気持ちが恋愛感情だと、すぐには決め付けたくなかったんだ。


「分かったよ。純理がそこまで言うなら、もう少し様子を見るよ。でも、本当に本当に、逢坂くんが好きだ!って確信したら、その時はまた相談に乗ってね!でも、それには私から逢坂くんにも近付いて話したりしてみないと…!」

「瑞乃…。あーいうタイプは多分女子のガードが高いと思うよ?変に近付くと、女子から「あなた逢坂くんの何?」とか言われるよ?あー…女子って怖いわー。」

「少女漫画の見すぎじゃない?」

「読んでないわ!」

私は思い切り抹茶タピオカをすすった。


ーーーーーーーーーーー

それから1週間近く経った時。

それは、吹奏楽部の活動中だった。

うちには音楽室の隣に、吹奏楽室がある。

部活の準備中に、とある人が廊下を通り過ぎた。


今のは…?!


私は慌てて廊下に飛び出した。


そこには、逢坂くんがいた。


逢坂くんが音楽室に入って行ったのだ。


だからつい彼を追いかけてしまったのだ。


「お…逢坂くん…だよね?」


「…?」


逢坂くんは私の声で振り向く。

「そうです。」

「ど…どうしたの?」

「いや、音楽室に携帯を忘れたみたいで。」

「あ…良かったら私も探します。」

「ありがとうございます。でも、大丈夫ですよ。机の場所覚えてるので。」

「いや、多分別のクラスの人がさっき掃除に来てたから…。忘れてったのは机の中ですか?」

と、私は自然にそのまま逢坂くんと中に入って、携帯を探す流れになった。

音楽室には私と逢坂くんの2人だけだ。


「うん。そうです。」

「あー…もしかしたら、机の中の物を既に誰かが職員室に届けたりとかしてるかもしれませんよ?」

「あー…。」

「でもまぁ、一旦探しましょうか。」

「すみません。」

逢坂くんがさっき座ってたという机の中身を見たけど、そこにはなくて。

「あれ…。無いか…。」

でも、ふとピアノの上を見てみると、そこにiPhoneが置かれてあった。

「これ、そうですか?」

「あ。」

逢坂くんは私の所にやって来て、目の前に立った。

「これ、俺のだ…。良かった。ありがとうございます。」

逢坂くんは爽やかな笑顔で私にそう伝えてきた。

そんな逢坂くんを見つめてドキドキする私。ましてや、

「まさか、この間と逆の展開になるなんて。」

「え?」

「理科の教科書。あの時は俺が届けたのにね。」


と、覚えていてくれたみたいだ。

自分の顔が熱くなるのがすぐに分かった。


「2-C組の…確か名前は…安藤瑞乃さん…だよね?」

「うん。そうです。」

「へへ。あってたあってた。そうじゃん、俺たち同い年なんだから、安藤さんも俺に敬語じゃなくて良いのに。」

「あ…うん…。

逢坂くんは私の手を取り、

「ありがとうね。」

とお礼を言ってくれた。何だこの素振り。私には王子のように見えた。

「うん…。」

つい照れてしまって、こんな薄い反応しか出来なかった私。


この二人きりの空間で、こんな事言われたら…。


私はドキドキして顔が見れなかった。


「安藤さんは、吹奏楽部なの?」

「…うん。そう。」

「へぇ、専攻楽器は?」

「えっと…フルート…。」

すると逢坂くんは感心したようで、

「そうなんだ…!俺、小さい時にピアノ習ってたけど、木管とか金管とかは吹けないからなぁ。フルート難しいって聞くから、尊敬するよ。」

なんて、驚くリアクションを取ってくれた。
そうやってずっと笑顔で私に声をかけ続けてくれた。
私も、まだこの時間を終わらせたくなくて、こんな事を言ってみた。

「大した事無いよ…。逢坂くん、ピアノ弾けるの?」

「弾けるけど、少しだよ。」

「き…聴いてみたい…!良かったら…今……先生いないし…。」

「えぇ…?良いのかなぁ?」

「先生この時間来ないから、大丈夫…!」

逢坂くんは少しだけうーんと唸って教室の入口を見た後、

「…じゃあ、いっか!」

と、笑顔でそう言ってピアノの椅子に座り、蓋を開けた。

「何弾いて欲しい?」

「逢坂くんが得意のやつで…。」

「えー?なんだろうなぁ。」

そう言って10秒くらい経った時に、逢坂くんは滑らかに曲を弾き始めた。

長い指、そして透き通るような音色…

ピアノと一緒に呼吸をしている感じの、抜け所の無い、綺麗な演奏を見せてくれた。

全然素人なんかじゃない。

逢坂くんは、こんなに上手にピアノまで弾けるんだ…。

私はそんな逢坂くんに見とれて、どんどん鼓動が大きくなっていった。


「…凄い……!」

つい拍手をする私。

「ありがとう…。久しぶりに弾いたなぁ…。」

「今の曲は?」

「あぁ、この曲はね、俺がフランスにいた頃におばあちゃんから教わった、思い出の曲なんだ。」

「フランス…?」

「俺、父親が日本人で、母親がフランス人なんだ。……って、ごめん。そこまで聞いてないか。」


「いやいや!そんな…!」

逢坂くんはピアノの蓋を閉めて椅子から立ち上がると、私の肩に触れてこう言ってきた。

「部活中にごめんね。付き合ってくれてありがとう。iPhoneもありがとうね。じゃあ、またね。」


そう言って私に手を振って音楽室から出て行った。




「逢坂くん…。」




純理、もう確定させて良い?私は逢坂くんの事がやっぱり好きだよ。


ーーーーーーーーーーー

「またねって言われたんだよ?ヤバくない!?」

「それだけじゃんって感じ。」

「えー!?それだけじゃんって…純理、恋心ってもんを分かってない!」

「どうせ1年以上彼氏なんていませんよー。でも、学年中から人気の逢坂が放つ「またね」なんて、どうって事無いやつじゃない?多分逢坂自身は覚えてないし、誰にでも言ってそうじゃない?」

「逢坂くんが軽い男にはとてもじゃないけど見えない。」

この子、逢坂に本気か?私はこんな事を聞いてみた。

「ねぇ、瑞乃は逢坂とどうなりたいの?」

「そりゃあ…付き合えたら良いなって思ってるよ。」

なんだって…!?私は驚いて声の音量が上がる。

「え…!?ハードル高いと思うよ!?だって噂じゃほんと、週に何回も告られてるって話しじゃん?逢坂が良いなって思う子が現れたら、その子と付き合っちゃうよ!?」

「やっぱりそうだよね…。」

「逢坂の事は宛にならないけど、瑞乃が付き合いたいと思うなら、告白するタイミングは遅くない方がいいと思う。」

と咄嗟にそう伝えたは良いものの、逢坂と瑞乃にはくっついて欲しくないんだよなぁ…。

ーーーーーーーーーーーーーーー

「逢坂くん、好きです。私と付き合ってください…!お願いします…!」


え、嘘、告白現場ですか!?


私はその場から立ち去らず、階段の影に隠れてその現場を覗いてしまった。


「…君の気持ち、嬉しい。ありがとう。」


「え、じゃあ…!?」


その子は一瞬目を輝かせていたが、


逢坂は首を横に振った。



「でもごめん。君の気持ちには答えられない。」



「え…。」



「本当にごめん。」



初めまして出くわした逢坂の告白現場。



「付き合う事は出来ないけど、友達としてで良かったら、これからも声掛けて欲しい。」


逢坂の噂を何度か聞いたことがあった。逢坂は全員の女の子の告白を保留にしてキープしてる説とか、酷い振り方をしてるとか、でも真実は違う。




逢坂はちょっぴり辛そうな顔をしながら断っていた。



ただ、ずるい。



逢坂は天然でやってるのかもしれないけど、友達としてはとか言われちゃったら、私にもまだチャンスはあるかもとか思っちゃう人、いるかもしれないよね。


なんて考え事をしていたら、女の子は階段を降りてきて、そのまま私の存在に気付かずスルーして降りて行った。

私もその場を立ち去ろうと思ったら…





階段から降りてきた逢坂とがっつり目が合ってしまった。


そして小さい声で、



「…聞いてたの……?」



と私に尋ねる逢坂。



なんだか儚げな笑顔だった。



「え、いや…その…。これはたまたま気付いちゃったというか…。」

「……怒ってる訳じゃないよ。」

と、逢坂は私に優しげな笑顔を向けると、そのままその場から立ち去っていった。

なんであんなに辛そうな顔してるんだろう。モテる男は辛いよってか?

これは瑞乃も告白した所で、振られるのも目に見えているのでは?

遅くない方がいいと瑞乃には伝えたけど、案外逢坂って本当に軽い男じゃないのかも。自分が好きになった人としか付き合えないタイプなのかも。

だとしたら時間をかけるべき…?

でも、私にはもう1件抱えてる事情があった。


「広夢、ちょっと良い?」

私は中学からの友達の広夢を呼び出した。

「瑞乃がさ、最近ヤバいんだよね。逢坂雅って分かる?」

「逢坂ってあの?モテ王子の?」

「そう。瑞乃、最近そいつの事にすっかり夢中でね。そう遠くないうちに告白するかもしれない。」

「えっ、マジで?」

広夢は瑞乃の事が好きだ。私は前から相談を受けていたから知っていて、完全に板挟み状態というわけだ。

私自身も瑞乃の味方をしていいのか、広夢の味方をしていいのか分からない。

もちろん、裏で何考えてるか分からない、八方美人逢坂より、広夢と付き合って欲しいというのはある。とはいえ瑞乃は逢坂と上手くいきたいと思っているわけで。だからこそ、どのバランスで2人の味方に付けばいいのかが難しい所。

「なんてこった。ヤバいやつがライバルになっちゃったか。」

「諦めるの?」

「まさか。」

広夢はクスッと笑いながらそう言ってきた。

「とはいえ、このままだと瑞乃はガンガン行くと思うよ。あの子、1回ロックオンして夢中になったら、一点集中型だから。それに意外と行動派だよ?」

「なるほどなぁ。どうするかなぁ。」

と、腕を組みながら広夢。

「ていうかさ、2人は一緒に出かけに行ったりとかしないの?」

「いや…した事ない。」

それを聞いて私は肩を掴んで広夢を揺する。

「なんで!?馬鹿じゃないの!?想ってるだけじゃ何も進まないじゃん。広夢、慎重になり過ぎだよ。」

「あー、うーん、分かってるよ…。」

「もう!しっかりしてよー。瑞乃がどうやったら振り向いてくれるのか、考えないと。」

「純理、いつになく熱血だな。」

そう言われて肩を掴んでいた手の力をゆるめる。

「えー!?だって、瑞乃の事は応援してあげたい気持ちもあるけど、あの逢坂と付き合うより広夢と付き合う方が絶対幸せになるって思うもん!!」

「へぇ!?そんなに!?」

「だって逢坂、何考えてるか分からないし、確かにイケメンかもしれないけど、広夢の方が絶対大切にしてくれそうだなって思うもん。広夢が一途なの、私は知ってるよ。」

「お、おう…。」

「まぁ、完全な私情だけどね。とにかく、瑞乃となんかデートでもしてきたら??」

「デートっていってもどうやって!?俺、部活だってあるし休み合うか分からないぜ?」

と、何かとネガティブな広夢。

「そんなの放課後一緒に帰るとかだけでも良いじゃない!!とにかく瑞乃には早くアプローチかけないと!誘いにくいなら私がなんか策でも考えようか?」

「良いのか?」

「うん。だって広夢案外ウブで話進まなそうだもん。考えてみるからちょっと時間ちょうだいね。」

という事で、私が瑞乃をどうやってデートに誘うかを考える事にした。どうにかして今逢坂に向いている矢印を、広夢に向かせないと。

ーーーーーーーーーーーー

ある日の放課後、図書委員の私は今日は当番の日だったので図書室にいた。

すると…


あの逢坂くんが1人で図書室にやって来ていて、小説のコーナーで借りる本を探していた。

私は勇気を出して声をかけに行った。

「逢坂くん。」

「…あ、安藤さん?」

逢坂くんはしゃがんで下の段を探していたが、私に声をかけられたと同時に立ち上がった。

「最近…よく会うね。」

「そうだね。」

「何か探してる本があるの?」

「うん。クラスの友達にオススメの本の名前を聞いたから、図書室にあるか探しに来たんだ。」

「もしかして朝読の?」

「あぁ、そうそう。図書室で前に借りたってその子が言ってて。」

「なんて本?貸出リスト見ればすぐに分かるよ。」

「ほんと?」

という事でリストを見てみると、今はその本は別の生徒の元に貸し出されていた。

「あぁ、残念。まぁ新刊で本屋で買っても良いんだけど、朝読のだしなぁってね。見てくれてありがとう。」

「ううん。全然。普段は小説は読まないの?」

「たまに読むかなぁくらい。でも活字は苦手ではないし、読みたいのがあったら全然読むよ。」

「そうなんだ。」

この時私はちょっと嬉しくなった。だって私は小説をよく読んでいるから。ある程度有名な作品とかは大体熟読済みだ。人にオススメすることだって容易い。

「そしたら、私がお気に入りの本を教えてあげるよ。逢坂くん、どういうジャンルが好きなの?」

「ほんとに!?ジャンルは問わないよ。ミステリー系でも恋愛系でも、なんでも好きだよ。あ、強いて言うならホラーとか、グロテスクなのはちょっと…って感じ。」

ホラー苦手なんだ…?そんな一面を知って可愛いなと思う私。

「そしたら、あれにしようかな。ちょっとここで待ってて。」

私は受付前辺りの席に逢坂くんに座って待っててもらって、在庫を確かめて取りに行った。

あえて逢坂くんには恋愛ものを渡した。

「これ!めちゃくちゃ感動するよ!」

「ハートフルワールド?」

「うん。これ、三角関係の話なんだけどすごく純愛で…もう、とにかく泣けるし切ないし、むしろ三角関係どころじゃない…みたいな。」

「へぇ…!そしたらこれ借りようかな。」

「うん!是非読んでみて!」

逢坂くんに自分の好きな本を読んで貰えるのは嬉しい…!そしたら、こういう事を頼むのもアリだよね…?

「逢坂くんのオススメの本とかあったりする?」

「え?俺のオススメ?」

「うん!お互いに感想伝え合ったら楽しそうじゃない?」

と、私なりのアプローチ。逢坂くんとの共通点を少しでも多く作りたい。

「そうだね。この図書室にあるか分からないけど…」

そうだ。いい事考えた。

「逢坂くん、良かったらLINE教えて?」

「え?LINE?」

「うん。長居させるのもあれだし、逢坂くんのお家にあるやつでオススメのを貸してよ。ここだとタイトルとか忘れそうだし、LINEで教えて?」

「それもそうだね。じゃあ、家に着いたら何個か好きなやつ送ります。」

やった…!好きな人とLINEが交換できるなんて…!私は即座にQRコードを出した。逢坂くんもQRコードを出してくれてお互いに交換した。そして、貸し出しのカードを記入してもらって、本を手渡した。

「ありがとう逢坂くん。LINE待ってます。」

「こちらこそ、ありがとう。じゃあ、LINEします。」

逢坂くんは手を振って、図書室を出ていった。

かっこいい…。逢坂くんの後ろ姿を見えなくなるまで見届けた。

「逢坂ってあの子ー?めちゃくちゃオーラすごいね。かっこいいじゃん。安藤ちゃん、あの子が好きなんだ?」

「せ、先輩ー!恥ずかしいからやめてくださいー!」

なんて、図書委員の先輩にいじられてしまったけど、やっぱり誰が見てもかっこいいんだな逢坂くんって。

よし、純理と柚と凛子に報告しよう。

ーーーーーーーーーーーー

「ちょっと!広夢?」

「なんだよ急に電話なんて。」

「大変だよ!瑞乃が逢坂とLINE交換したってさ!!」

「えぇ…!?」

今は部活も終わって帰ってきて夕飯を済ませた後。さっき瑞乃からLINEが入ってきてて、どうやら瑞乃は図書室で逢坂に会ったらしく、オススメの本を共有し合うのにLINEを交換したと言う。朝読以外では全く本を読まない広夢には出来ない技だ。

「今頃、この本が良いよー?ってLINEし合ってるんじゃないの?やばいよ?どんどんあの子達の仲が育まれていくよ?あんた、瑞乃との共通点ない訳?」

「俺と瑞乃の共通点だろ?そんなもん…なんかあったっけ。」

「こっちが聞いてんのよ!」

「うわー。なんかあったっけなぁ。それにしても瑞乃、ガンガン行くのな。」

「言ったじゃん!彼女は一点集中型だって。のめり込んだらグワーーって行動するの!もう!次の休み教えなさい。」

という事で広夢が次の日曜日がお休みというので、そこで個人LINEで瑞乃にも声をかけてみた。もちろん私と遊ぼうって言う名目で。

瑞乃はどうやら日曜日は午前中が部活で、午後からなら空いてるらしい。

「広夢、私その日は部活だから、2人で行きなさいよ?」

「えぇ!?純理居ない系!?」

「居ない系!?じゃないよ!この度胸なし!何のための茶髪なの!?」

「茶髪関係ねーから!」

という事で約束を漕ぎ着けた訳だけど、日曜日まであと3日もある。その間に何か進展があったら困る…。

すると次の日、早速1つの進展が。

「え、うそ、逢坂雅じゃない…!?」

「きゃあ!なんで!?」

うちのクラスから黄色い声援が聞こえる。

「安藤さんいますか?」

「安藤さん!?いるよ!」

そう。うちのクラスに逢坂がやってきたのだ。理由は、瑞乃に小説を届けるためだった。

「あぁあ。あんなににやけちゃって。」
「瑞乃すごい乙女な顔してるねん。」

と私の言葉に対して柚。

それにしても逢坂、いっつもあの笑顔だよな。爽やかなあのキラキラオーラの王子様スマイル。どうも私には胡散臭く見えて気持ちが悪い。

広夢の方が絶対いい男だっつの。

瑞乃がウキウキしながらこちらに戻ってきた。

「逢坂くんから本借りちゃったー。」

「瑞乃可愛いなぁ。乙女ちゃんだね。」

その時クラスの女子が…

「安藤ちゃん、逢坂くんにどうやって近付いたの!?」

と押し寄せてきた。逢坂親衛隊といったところか?

「えぇ!?私はただ昨日たまたま図書室で会って、本の話で意気投合しただけだよー。それで、ぜひ読んで欲しいって私にオススメしてくれた本を持ってきてくれたんだ。」

と笑顔で瑞乃。

「何それうらやま。本かー。私読まない。」

「ねー。」

と話しながら自分達の席に戻っていく女子達。

「何あれめんどくさ。」

「純理!聞こえちゃうよ!」

と柚に止められる。

だってそうじゃん。女子のそういう、かっこいい男子に目がなくて、対象の男子と少しでも仲良い素振りをしている女子を見つけては、気に入らないことがあるとすぐ詰め寄ったりする所が本当に嫌い。

お前は逢坂のなんだよ?彼女じゃないだろ?って感じ。

こんなのばっかりに好意を寄せられる逢坂も大変だな。

瑞乃は積極的に1人でLINE交換までしたって言うのに。どうせあんたらはLINE交換すら出来てないんでしょ?って感じ。

「これだから女子ってめんどくさい。」

だから私は、自分の好きな人の存在を話していない。

私はトイレへと席を立った。

廊下を歩きながら窓の外を見ると、校庭へ向かう上級生達の姿が。ジャージの袖の色で分けられてるからすぐに分かる。

そこには、バスケ部部長で生徒会長の徳原清人徳原清人とくはら さやと先輩もいた。

そう、私の好きな人は彼。


「先輩ー!」

私は先輩を呼んでみた。私はバド部だけど、体育館を使う部活同士で絡みが多いのだ。清人先輩とはそこでたまに話したりする。

清人先輩はすぐにキョロキョロする。そして上を見上げて私の姿を捕える。

「おお!上か!」

「体育ですかー?」

「そうそう!今日持久走するんだって。」

「頑張ってください!」

「うん、ありがとう。」

たったこれだけの会話だけど、私はこれで充分幸せな気持ちになれる。
清人先輩は一瞬私に手を振ってくれて、同級生の友達と校庭へと向かって行った。

清人先輩、かっこいい。

生徒会長なんて手の届かない人すぎるけど、いつかちゃんと気持ちを伝えられたらって思ってる。

その夜、4人のグループLINEにこんなメッセージが飛んできた。瑞乃からだ。

「逢坂くんの小説、夢中になって読んでたら読み終わっちゃった!逢坂くんにお礼の何かを渡したいんだけど、何か良い案は無いかなぁ?」

なんてこった。広夢…!どんどん進展しているよ!?

私はまた広夢へ電話。

「なんだよ純理。」

「何してんの広夢!」

「え、寝てた。」

「はぁ?呑気だな。」

「失礼な。部活終わって帰ってきてそのまま部屋で寝落ちしてたんだよ。」

「それより!またこっちは進展あったよ!」

「え?」

「あんた今朝逢坂が教室に本届けに来た時居たっけ?」

「何それ。朝練だったから、校庭から移動してた時だったんじゃん?」

逢坂との最新の状態を広夢に共有して、日曜日のデートをどうするつもりかの話をした。

「日曜日は私は居ないんだよ!?」

「いや、その事なんだけど、俺でガッカリしないかなと思って。」

「はぁ!?何怖気付いてるの。」

「だって瑞乃、俺の事なんて全然眼中に無いぜ?いきなりデートで大丈夫かなって。」

という広夢。

「えー?じゃあ誰か呼べば?私は行けないし、光陽は言っておくけど私と同じく部活だよ?男子バド部もその日は部活あるのさ。」

光陽とは同じクラスの男子で、男子バドミントン部に所属しているから絡みが濃い。

「えー?じゃあ康作か??」

「日曜日はうちが体育館使うから、バスケ部は無いんじゃない?聞いてみたら?」

康作も同じクラスの男子。バスケ部だから、所謂清人先輩の後輩に当たる人だ。ちなみに清人先輩と康作の2人は幼稚園が一緒で、よく遊んでいたと聞いている。清人先輩が引っ越したから、小学校は違ったみたいだけど、中学で再会したと聞いている。

「そうだな。康作に聞いてみるか。てか、康作と俺と瑞乃って…どんなトリオだよ。柚の方が良いのか?」

「そこは自分で決めなさい。」

「えー。」

そんなこんなで電話を終えた後LINEを開いてみると、返事の早い柚との会話が炸裂していて…。

「うわ!こんなに進んで…!」

何か食べ物をプレゼントするかとなり、最終的には、明日朝に柚がよく学校行く前に寄っている駅前の美味しいパン屋さんに瑞乃と一緒に寄ってから行こうとなったそうだ。お昼ご飯にでも食べてと、オススメのパンを買って行ってそれを瑞乃から逢坂に渡すという魂胆だそうだ。

なんて事なんだ…。

どんどん瑞乃が逢坂に近づいて行く…。

逢坂は瑞乃の事、まだなんとも思ってなさそうだけど、この恋は本当に実るのか…?

なんて、そんな事思ったら瑞乃に失礼か。

私は私で、どうやったら広夢の方に振り向いてくれるかを考えたい。

ーーーーーーーーーーーーーー

「瑞乃!ここここ!このパン屋さん、朝の8時からやってるんだー!」

「へぇ!綺麗なお店!」

柚と2人で入ると、そこには綺麗な外国の女性店員さんがいた。

「店長さん!おはよう!」

その女性に柚は元気よく話しかける。

「おはよう柚ちゃん。今日はお友達も一緒なのね。」

「うん!」

しかも日本語が上手だ。ちなみに店長さんらしい。

「瑞乃!柚はね、よくここのメロンパンを食べるよ!後はクリームパンも美味しいよ!」

「うわぁ、どれも美味しそう…。そう言えば全然相手の食の趣味聞いてなかった…。」

「サプライズだし大丈夫じゃない!?優しそうだしきっと食べてくれるよ!」

という事で、柚オススメのメロンパンと、私が気になったレアチーズパンを買った。

「店長さん聞いて!友達がこれから好きな子にこのパンをプレゼントするの!」

「あら!ロマンチックね。喜んで貰えるといいわね。」

「はい!」

綺麗な外国の女性店長さんは、丁寧に包んで渡してくれた。笑顔が眩しい人だった。

それから、勇気が無いので柚にも立ち会ってもらい…。

「逢坂くん!小説面白かった!ありがとう。」

「良かった!喜んでもらえたなら何より。」

と少しの間感想を伝えた後、これをお礼にと買ってきたパンを渡した。

「お礼にこれ!良かったら食べてください!」

「え。いいの!?」

「うん。ここにいる 柚姫ゆずきちゃんと一緒に買いに行ったの。彼女のオススメのお店みたいで。」

「学校行く前によく寄るんだぁ!美味しくてつい食べたくなっちゃうの!」

逢坂くんはその袋を見つめ、ロゴを見る。

「Paillettes JAPAN…へぇ!このパン屋好きなんだ?」

「うん。そうだよ!」

と柚。すると驚きの答えが。

「なんか嬉しいなぁ。ここ、俺の親が経営してるパン屋なんだ。」

え…?親が経営!?

「そうなの!?」

「うん。ちなみに買ったのは駅前店?」

「うん。」

「そっか。じゃあ、今日は俺の母さんと会ってるのかな?」

か、母さん!?
という事はさっきの綺麗な女性店長さんって…!?

「え!柚!じゃあさっき会った方って…!」
「間違いない!逢坂くんのお母さんだったんだね!」

「やっぱりそうか。今日は駅前店に出勤だと聞いてたから。母さん、この近辺のエリアマネージャーでもあるからね。何店舗か店長として立場置いてるんだ。」

驚きの展開に私は目をぱちくりさせる。逢坂くんって何者…!?

そう言えば帰国子女っていう情報の他に、実家は金持ちって噂で聞いた事がある。

逢坂くんは袋の中身を見ていた。

「あ!メロンパンとクリームパン!?ありがとう。美味しく頂きます。」

逢坂くんは笑顔で私にそう伝えてくれた。

「良かったね瑞乃!」

「うん!」

「俺もバイトしてるから、今度俺が働いてる時にもおいでね。」

と、笑顔でそう伝えてくれる逢坂くんの笑顔がすごく眩しかった。

ーーーーーーーーーーーー

柚と瑞乃が教室に戻ってきた。


「おはよう。2人ともどこに行ってたの?」

「逢坂っちのクラスだよん。」

と柚。
げ、昨日のLINEでのパンを買っていくって話が決行されたんだ…!?

「喜んでもらったんだ。逢坂くん、今日もかっこよかったなぁ…。」

なんてうっとりしている瑞乃。

「ほぉ。」

そしてこんな報告も。

「びっくりしたよ!柚のお気に入りのパン屋さん、逢坂くんの親が経営するお店らしい!」

「えぇ!?」

「あのパン屋チェーンで色んな所にお店あるんだよね!逢坂っちはお坊ちゃまなのかも!」

「えぇぇー!?」

と驚く私。瑞乃はずっと逢坂を思い出して浮かれている…。

瑞乃が好きな人と良いことがあったなら、それは友達として喜ぶべきだとは思う。

でも、このままじゃ広夢が…。

瑞乃の逢坂雅へのアプローチはまだまだ続く。







続く