今回は7話-15話を雅視点で語ります✨
𝑀𝒾𝓎𝒶𝒷𝒾 𝓈𝒾𝒹𝑒.Ⅱ
熱も下がって学校に行けるようになってからも、俺は何度も純理に話しかけに行った。そんな時にその光景を清人くんに見られた俺たち。清人くんにはめっちゃ仲良いね、お似合いじゃん!と言われた。そう言われて俺は悪い気はしなかったけど、純理からしてみたらそうではなかったようで…。
清人くんが去ってからというもの、物凄く怒られた。
「ふざけんな逢坂!!どうしてくれるの?!清人先輩に勘違いされたでしょ?!」
その言葉を聞いて一瞬で悟った。やっぱりそうか。この子、清人くんの事が好きなんだって。
それからある日の放課後、
清人くんに用があって体育館にやって来ていた俺。同じバスケ部の康作もその場にはいて、部活が始まる前に清人くんのシュート練に付き合っている時に、バドミントン部で体育館に居た純理がこちらにやって来た。
そしたら康作が何を思ってか、俺と清人くんでフリースロー対決をしてみてよと提案をしてきた。勝った方に純理がご褒美をしてねと。しかもそのご褒美というのが、
「じゃあこうしようか!勝った方が純理とデートね!」
康作の突然の提案に、俺は内心驚いていた。純理もそれを聞いて何言ってんの?!とすごく動揺。清人くんとデート出来るかもしれないという期待と、俺とはデートしたくないっていう拒絶をする感じの両方が伝わってきた。俺はそんな彼女を見て、彼女の為にわざと負けようとは思えなかった。清人くんばかりを応援する彼女に何故か少しムッとしてしまっている自分が居たからだ。このまま清人くんを勝たせて、純理と清人くんがデートするっていう普通の展開に運ばせるのがつまらなくて、申し訳ないけど意地悪をしてしまった。
だから俺は手を抜かず、本気でシュートをした。
清人くんが卒業した後に、この出来事をふと思い出して彼にこの時の事を聞いたら、
「雅が純理ちゃんの事好きなんだと思ったから、お前を勝たす展開にしようって思ってわざと外しに行ったんだよ!」
と返してきた。どうやらあの時の俺らは変な意思の疎通をしていたようだ。
本気で投げた俺はシュートを決めて、清人くんに勝利。俺と純理がデートをすることになった。とはいえ、純理がすんなり俺とのデートを決行させようとするはずが無い。
「なんで逢坂が勝つの?!私は清人先輩と行きたかったのに。空気読んでよバカ…!」
「純理ちゃん、もしかして…」
「うん。そうだよ。私は清人先輩の事が好きなの。絶対清人先輩にはバラすなよ!」
体育館の出た所の隅で2人でそんな話をしたっけ。
それで、本当にデートの話がなかったことに終わりそうだった中、康作が「清人くんの誕プレ2人で選んできなよ。」と提案してくれた事で、デートは決行する運びになった。
清人くんの事を想う純理。そっか、俺が単純にその恋を応援してあげれば、純理は俺に心を開いてくれるんじゃないかな?そう思って俺は純理と清人くんのキューピット役をかってでる事にした。
純理との初めてのデートは、デート感なんて全然無かったけど、俺のアドバイスのおかげで清人くんにいいプレゼントが買えたと喜んでくれた。それを聞いて俺もホッとしたのを覚えてる。
プレゼントを本人に渡し終えた後に報告も貰ったっけ。
そんな彼女に俺はこう伝えた。
「清人くんの事、しっかり捕まえておきなよ」
それは、
こうして好きな人と会えなくなってしまった俺のようにはならないで欲しい。
そんな意味を込めた言葉だった。
この頃の俺は、夏休みや冬休みには必ずパリに帰り、エルザの行方を探していた。
というのも、エルザは元々住んでいた所から引っ越してしまい、レオも今の居場所を知らないと言うのだ。エルザの行方の手掛かりを探すために定期的にパリに行くという生活を送っていた俺だったからこそ、純理にそう伝えたのだ。
俺にとって、好きな人がそばに居るってことは当たり前ではなかったから。
それから俺は、純理の恋を応援し続けた。
そのはずなのに、
俺は純理をつい困らせてしまう。
屋上で2人、他のカップルが来て帰るタイミングを失った時だって、外壁の影に隠れながらどさくさに紛れて肩を抱いたり、
手を繋いでしまったり。
嫌だと言いつつ顔を赤くしてる純理が本当に可愛くて、つい意地悪ばかりをしてしまっていた。
そんな時に純理に、私の事をどう思ってるんだと聞かれた。俺は彼女に、良い友達だと思ってると返した。
そしたら純理には反論されてしまって、友達になんてなってないと。それに、手を繋いでくるのも抱きついてくるのもおかしいと言われた。
「……なんなの?あなたは私に何を求めているの?」
「往生際が悪いってやつだよ。俺は君と同じで、負けず嫌いだから。それに…君の反応があまりに可愛いから、つい面白くて」
俺は、強ばった顔で尋ねてきた彼女に対してそう返して、ギュッと抱きしめてしまった。
そう。往生際が悪いんだ。俺は。
ストレートには言わなかったけど、純理に言われた「大嫌い」をどこかでずっと引きずっていたのだ。往生際が悪いっていうのはそういう事。
諦めたくなかったんだ。
純理に、俺の事を好きになってもらいたかったから。
嫌いな存在のままで居続けるのは悔しい。
恋とかそんなんじゃなくて、人として好きになってもらいたかった。
ただ、それだけだった。
……“それだけにしてた”。
俺は彼女を抱きしめたまま、こう尋ねた。
「前より……少しは俺の事好きになってくれた……?」
でも、そのタイミングで予鈴が鳴った。
俺はそれと同時にハッとなって、急に彼女の返答を聞くのが怖くなった。また嫌いと言われるかもしれないと。
だから彼女の答えを聞かずして屋上を後にした。でも、彼女は後日、照れながらも答えてくれた。
「……本当に…前よりは……って感じ」
「前よりは……何?」
「前よりはって言ったら、一つしかないでしょ答えは。察してよ。じゃあね」
俺はそれが、驚く程に嬉しかった。
純理がほんの少しでも俺のことを好きになってくれたっていうその事実が本当に嬉しくて、
階段に残された俺は1人、手で口を抑え赤面していた。
馬鹿。なんでこんなに純理の言動に一喜一憂してるんだ。
この時俺は、胸がギュッと苦しくなった。
そんな中事件は起きた。
純理が俺へのとある誤解を解くために同学年の女子生徒に向かって言及した事によって、嫌がらせを受けたのだ。
純理は2人の女子生徒によって、体育館の裏の倉庫に閉じ込められてしまった。
瑞乃達と一緒に助けに行った俺。扉が中から開けられないようにと外に立てかけられた木はどけたものの、何かの拍子に純理が中で棚を倒してしまったようで、純理は1人、その棚を動かせず結果的に外からも中からも開けられない状態になってしまった。
だから俺は、はめ殺しの窓まで上って、そこからガラスを割って中に入り彼女を助けに行った。
「怖かったね。ごめん。こうなる前に守れなくて」
と彼女を強く抱きしめる俺だったけど、
「ほんと…!あんたになんて…出会わなければ良かった…!!」
と純理から言われた時、心抉られる気分になった。俺は自分を恨んだ。純理が俺のせいでこんな目に遭ってしまった事、そして、君の身に何か起こる前に助けに行くと前に約束したのに果たせなかった事を強く恨んだ。
それから彼女を助け、生徒会長である清人くんにも掛け合ったことによって、以降そういった派閥争いは徐々に無くなっていく事になるのだが……
それ以来俺は純理に顔を合わせづらくなった。
彼女は俺に出会いたくなかった。それは純理の心からの気持ちだと受け取っていたから。
俺はきっとこの先もずっと、彼女の事を笑顔に出来ない。
だから距離を置いていたのだけど、
数週間後、テスト期間を終えた後に康作と柚にカラオケに誘われた俺は、その行った先で純理と出くわした。
実はあの後、帰りに康作と柚に「いつの間に純理を誘っていたのか」と驚きの気持ちを伝えたら、
「みーやん、本当はずっと純理に会いに行きたかったんじゃないの?」
と柚から言われた。2人の計らいには感謝しかない。
純理はあの日の言葉について謝ってきた。
こうして俺と純理はまた徐々に関わる頻度が戻っていき、
ついには2人で始業式の日の放課後にご飯に行く事になった。
純理から誘われた事が凄く嬉しかった。
この日俺は、純理にパリのお土産を渡したかったのもあった。
みんなに配る用のお土産のクッキーは純理の手にも渡っていたけど、純理にはそれとは別でキーホルダーを買っていたのだ。
それは、ルーブル美術館の外の広場にあるガラスのピラミッドのデザインをしたもの。前に純理と2人で清人くんの誕プレを探しに行った時に、カフェの中でこのピラミッドの話をしたなぁ…なんて思い出して買ったものだ。
エルザの事を探す為にこうしてパリに来たというのに、他の女の子の事を思ってこんな事をするなんて俺は何を考えてるんだ…とも思ったけど、
それでも俺は純理へのお土産を買うと決め、純理に手渡した。
しかも買いたくなった理由はもう1つあって。
ピラミッドを見て純理との会話を思い出したからという理由以外に、
ノブからこんなことを聞いていたからというのもあった。
冬休み中に、俺が日本に不在の時に新年会をしたそうで、そこに参加して純理に会ったノブが俺にこんな事をLINEしてきたのだ。
「雅が居なくて純理が寂しそうにしてたよ」と。
純理にお土産を買って行きたかったのは、それが理由でもあった。
そんなの聞いて、嬉しくないはずがない。
純理にお土産を手渡した時、急に純理に会いたかったという気持ちが溢れかえった俺は、つい純理の腰に手を回し、抱き寄せるような行動をとってしまった。
「俺が居なくて寂しかったみたいだったから、俺に会いたくなったら、今度からそれ見て思い出して」
そしたら純理に酷く拒絶されてしまった。
触らないで。誰にでもこういうことするんでしょう?と。
そんな事を言われたのは凄くショックだった。けど、俺は純理に対しての自分の行動がどんどんどんどんおかしくなっていたことに自分でも気付いていたからこそ、彼女にはごめんと謝った。
ただその後にこう伝えた。
「…会いたいって思っていたのは、俺だけだったみたいだね」
って。
純理、俺はね、
本気で純理に会いたいって思ってたんだよ。
純理とは“友達になりたい”。ただその一心なのに、どうしてこう上手くいかない?
彼女にとことん嫌われてしまったのだろうなと思っていた次の日、
屋上で昼寝をしていた俺の元に、純理が1人で訪ねてきた。
彼女に頬を強く抓られ、俺は起こされたのだ。
でも、俺を起こす前に彼女は俺に向かって何かを言っていた。
そしてなんと、髪を触られる感触があった。
信じられない。
純理が俺の髪を触っていたって事になるよね…?
しかも、寝ぼけた状態の薄らとした意識の中、俺にはこんな言葉が聞こえてきた気がした。
「いっつも素直になれなくてごめん」
と。
この言葉、本当に純理が吐いた言葉なんだよね?
夢の中の話じゃないよね?
だから俺はそんな彼女が愛おしくなって、目覚めた後にその場でギュッと彼女を抱きしめたのだ。
俺にはこんなの嬉し過ぎた。そしたらついフランス語で「会いたくてたまらなかった」と彼女に伝えていた。
なんでフランス語で伝えたかって?
そんなの、ただの照れ隠しだ。
純理は言った。どうやらノブから俺が弄ぶような奴じゃないという話を受けたそうで、彼女はノブの言葉を信じてみようと思えたと。
「まだそりゃあ…八方美人とも思ってるし、どっか胡散臭いとも思ってる。でもそれは、あなたの素が全然見えなかったからだと思う。だから、私と友達になりたいのなら…もっと素を見せてよ…」
俺のことを抱き返してそう言ってくれる純理にドキドキした俺。彼女にそんな俺の心情がバレないよう、俺は平静を装った。
ねぇ、俺。もうこんな事は止してくれ。
俺にはエルザがいるだろ?
どうして純理にドキドキなんかするんだよ。
頼むからもうこんな気持ちにならないでくれよ。
後日、純理と広夢、瑞乃の3人と一緒にハピネスランドに行った時だって、瑞乃に片想いしていた広夢の背中を押す為にと、途中で純理と2人きりになったけど、このまま2人で居たいと思ってしまっている自分もいて、もう俺の心はグチャグチャだった。
だから後日俺は、ノブや清人くん以外に唯一俺とエルザの話を知っている瑞乃に純理の事での相談をしたのだ。
「俺、最近変なんだ」
「変…?」
「俺は…今でも本気でエルザの事を愛しているし、すぐにでも会いたいって思う。やり直そうって伝えたい気持ちも、何も変わってないんだ。なのに…最近…彼女といるのがやけに苦しいんだ。この気持ち、とっぱらってしまいたい」
瑞乃には特に、誰の事を指しているのか名前は上げていなかった。けど、彼女は言った。
「好きなんだね…純理の事」
認めたくなかった俺の気持ちを、彼女が代弁してくれたかのようだった。
そう。俺はずっと彼女への想いを見て見ぬふりをし続けて今日まで来ていたのだ。
瑞乃の言葉に首を縦に振った俺だけど、俺はこんな気持ちを持ってはいけない。
俺の1番はエルザだから。
こんなの絶対、一時の感情なだけ。
気の迷いでこんな感情を持ったに違いないと瑞乃には伝えた。けど、彼女は言うのだ。
「エルザちゃんと再会出来た時、その時の雅くんの気持ち次第で決めれば良いと思う。純理への気持ちを無理に捨てる必要なんてないよ。むしろその気持ち、大切にして欲しい」
と。
そう言われたものの、俺はその言葉には何も返事が出来なかった。
それに純理は清人くんが好きだ。俺は純理の恋路の邪魔をしたいなんて微塵も思ったことは無い。そこは純粋に彼女の恋が実れば良いと願っていた。
けど、
純理はバレンタインの日に清人くんに告白し、失恋してしまった。実は彼には彼女が居たというのだ。どうやら前に付き合っていた彼女と復縁したばかりとの事だ。そんな話、清人くん本人から俺もノブも聞いてなかったので驚いた。
その日純理は、俺や清人くん、ノブの地元の駅ビルの中にあるオープンデッキで清人くんに会っていたらしく、彼と別れた後、1人になりたくなかった純理はノブと俺に連絡をくれた。ノブは塾で電話に出られなかったそうで、なので俺が純理の元へ駆けつけた。
酷く傷付いている彼女の話を聞く俺。彼女の声は震えていて、泣きたいのをずっと我慢しているように見えた。
強がっている彼女に向かって俺は両手を広げた。すると純理は涙を流し始めた。なので俺は、そんな彼女の事を優しく抱きしめ背中を摩った。
彼女を救いたい気持ちでいっぱいだった。
失恋の辛さは俺も知っているから。
ボロボロの彼女は俺に甘えてくれ、その後は彼女の家まで送った。
道中彼女のことはそっとしてあげようと思って特段何か別の話を振ったりなどはしなかったけど、
純理の事を守りたかった俺と、
誰かにそばにいてほしかった純理は
この日の帰り、静かに手を繋ぎながら歩いた。
彼女の手はとても冷たかった。
その次の日、彼女はお礼だと言ってバレンタインにみんなに配っていたというトリュフのあまりを俺に持ってきてくれた。
トリュフだけじゃ足りないと、俺は彼女への意地悪で、今日から名前で呼んでと伝えた。
純理が呼んでくれることは無いだろうと思ったが、意外にも彼女からの返答は、
「…気が向いたらね」
だった。
なので俺は、じゃあ俺達は友達って事でいいのかな?と彼女に問いかけた。そしたら彼女は言ったのだ。
「そういう事で良いよ」
と。
やっと彼女に存在を認めてもらった感じがして、尋常じゃなく嬉しかった俺。
そこからは純理の俺への対応が少しずつ丸くなっていった。
そしてその日から数日後、なんとフランスからレオが突然うちの学校にやって来た。
冬休みを使って、俺に内緒で遊びに来たという。その場に立ち会っていた純理に向かって、フランスの主流の挨拶であるビズをしてきた。それも純理に抱き着きながら。
そこまではまだ良いとしても、その後にレオは純理のおでこにキスをしたのだ。
それにイラッとしてしまった俺は、
「おい!!!レオ!!!」
と、ついカッとなってレオに怒鳴ってしまった。
あーもう……頼むからこんな感情にならないでくれよ。それも純理の前でこんな風になるなよ。
こんな自分が情けない。
その後合流した柚とノブも交えて5人でレオと東京散策をした俺たち。
行く先で純理にレオが過度なスキンシップを取っているのを見る度に腹を立ててしまい、またも止めに入った。
レオは元々女の子好きだし、純理にだけというより柚にだって同じようにスキンシップは取っていた。だから気にする事なんて何もなかったというのに、それでも俺は純理とレオが途中たまに2人になるのが非常に嫌だった。
しかも彼は彼女の事を「純理」と呼び捨てで呼ぶ。俺でさえこの時は ちゃん付けだったのに、先を越された事にも腹を立てていた。
でも、何より腹を立てていたのはレオに対してよりも自分にだ。
認めたくない。
純理への恋愛感情なんて捨てろよ。
俺が愛しているのはエルザだけだ。
こんな感情消えてくれよ。
俺はどうしたら良いかもう分からなかった。
次の日だって、昨日のお礼を言いに純理と柚に会うべく2人のクラスに行った時に、俺は純理にこんなことを尋ねてしまった。
「レオのこと好きなのかい?」
「え…?それは、どういう意味の好き…?」
「…惚れた?」
と。
でも純理は、そんなにすぐに好きとかならないし、清人くんに振られてそう経ってなかったからこそ、しばらく恋愛はしたくないと返してきた。
それを聞いた俺は安心したし、
ちょっぴり悲しくなった。
「逢坂…?昨日からちょっとなんか変じゃない…?ねぇ、逢坂ってばー」
窓の外を見てボーッとしていた俺に純理は俺の手をつついてそう声をかけてきた。
逢坂……ね。
レオのことはレオくんと呼ぶのにね。
その呼ばれ方、もう嫌だよ。
距離を感じて辛いよ。
俺はそんな想いを秘めたまま、彼女の手を握り、自分の頬に当ててこう尋ねた。
「…いつになったら名前で呼んでくれるの?」
あぁ……胸が苦しい。
俺はこんなに君の事が……
って、
だから…!!俺は何を考えてるんだ。
エルザ、こんな事思ってごめん。エルザが居ながら本当にごめん。
すぐに純理への気持ちは捨てるから。
俺はそう思いながら「昨日からなんか変だよ」と言ってきた純理に対してこう返したのだ。
「…ごめんね。確かに俺…変なんだ。今……心が変なんだよ」
「え……?」
「でも俺は……こんな風に心が変になってる場合じゃないんだ」
心が変。それは「恋」の事。
純理へのこの気持ちが“恋”だとは本人にバレたくないし、認めたくない俺。だからこういった形での伝え方となったのだ。
俺は、君に恋をしてる場合じゃないんだって。
純理に伝えているようで、完全にこの言葉は完全に自分に向けてのものだった。
だから俺はまたしばらく、純理のいるこの教室には顔を出さないようになった。
純理がさっきの俺の言葉をどう捉えたのかについては、全く分からない。
続く
アンケート
ここまで読んでみて、びっくりした真相部分は?
フリースロー対決で雅がシュートを決めた理由の部分
11%
清人くんのこと、しっかり捕まえておきなよ の意図
33%
屋上で起こされた時のフランス語は照れ隠しだった事
0%
雅の言った「心が変」とは「恋」を表していた事
56%
投票数: 9票
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。