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第7話

純理の好きな人



部活が始まる前、康作と清人先輩と逢坂の3人が体育館にいた。

「あ!清人くん、バド部来たからそろそろ退かないと!俺ら今日外練だもんな。」

なんて康作が話しているけど、違和感なのは逢坂だ。彼がなんでここに?

そういえば康作と逢坂、最近仲が良いなぁ。

私は清人先輩に近付きたかったから、3人に話しかけた。

「この3人が揃ってるって珍しいですね。」

すると清人先輩がこう説明してきた。

「あぁ、コイツ俺に用があって探してたみたいでね。来たついでにシュート練付き合わせてたんだ。」

「そうだったんですか。」

清人先輩のシュートしてる姿が見たい。

私はそう思って、


「清人先輩、シュートしてるところ見たいです!」

と伝えた。

「え?良いけど?なんかそう言われてからすると照れんな。」

なんて言いながらも清人先輩は位置につき、シュートをしようとすると…康作がある事を言ってきた。


「ねぇねぇ、雅と清人くんでさぁ、3ポイントのシュート対決してみてよ。」


「え?清人くんと俺で?」

「うん。で、勝った方に純理がご褒美。」


この人、笑顔でいきなりとんだ提案をしてきた。何考えてるんだろう。

「純理、2人のどっちかが勝ったら何する?」

と康作。急に選択をせがまれても困る。清人先輩は言った。

「え!純理ちゃんからご褒美?なんか楽しみー!」



あぁ、そんな爽やかな笑顔で言われたら断れない…。

「康作、決められないよ…。」

と伝えると、康作がこんな提案をする。





「あら、そう?じゃあこうしようか!勝った方が純理とデートね!」





は…はいい!?


私はそれを聞いて赤面する。


待って、清人先輩とデート…!?

康作もしかして…私の清人先輩への気持ちに気付いてて、配慮してくれてるの?

「清人くん。俺はこの勝負飲んだ。どうする?」

と逢坂。悪いけどあんたには外してもらう。あんただって、私の気持ちに気付いてるはずでしょう?きっとそれを悟ってくれたからこの話飲んだんでしょう?

「純理ちゃんからのOK出てなくない?良いの?それで。康作の無茶ぶりだけど、平気なの?」

と清人先輩。勝負は目に見えている!私は即座にOKした。


「はい!お願いします!頑張ってください!」

すると清人先輩は雅の方を見て、


「あぁ、そっか。なるほど…。」

と小さく数回頷いた後に、


「OK、じゃあやろうか!」

と言った。



そっか…なるほどって何?



「康作!ルールは?」


「うん!どっちかが外したら終了にしよう!」


それからシュート対決がスタート。


先行は逢坂。さすが運動神経抜群と言われてるだけのことはある。コイツ、上手い。


…とつい、逢坂のシュートの安定さを見て感心してしまったが、何やってんの!そこは外そうよ!

でも、清人先輩が入れればリセットされる。

清人先輩のシュートは逢坂以上に安定しているし、何せ現役のバスケ部部長だ。



「先輩!頑張れ…!」


しかし…



「あ!しくった!!」



あの清人先輩がシュートを外したのだ。




…え……ええぇ!?




「雅の勝ちだね!純理!デートの相手は雅ね!」

と康作。逢坂は私に近付き、ニッコリと握手を求めてくる。

「デート、よろしくね。」

私はその手をパシっと払い除けた。

「ちょっとー!徳原ー!どいてよ!コート立てるんだけど!」

そうこうしている間にうちのバド部の人達がコートを立てる準備を始め出した。

「あ!紺野、いたの?」

「いたわ!早くどいてー!」

紺野部長にそう言われた清人先輩は、康作と逢坂と一緒に体育館から出ていった。その時に一瞬耳打ちで私に、


「頑張って。」



と言ってきた。清人先輩は小さい素振りで逢坂を指さす。




まさか先輩…わざと負けた…!!?

完全に勘違いされてる!!

私は居てもたっても居られず、体育館を出てすぐの所にまだ居た逢坂をとっ捕まえて体育館入口で話をした。


康作と清人先輩が部活に行ったことを確認した後、

「ちょっと!!!マジでいい加減にして!!」

と逢坂に怒鳴った。


「え?」


逢坂は素っ頓狂な顔をする。


もうコイツにはバレたって良い。

私は彼に怒りをぶつけた。


「なんで逢坂が勝つの?!私は清人先輩と行きたかったのに。空気読んでよバカ…!」


それを聞いた逢坂は、小さい声で

「純理ちゃん、もしかして…。」


と言った。嘘でしょ…?この様子だと、今の今まで私の気持ちには気付いていなかったようだ。


「うん。そうだよ。私は清人先輩の事が好きなの。絶対清人先輩にも周りにもバラすなよ!」


「うん。それは言わないよ。」


「当たり前だよ。言ったらマジで殺す。てか、デートもしないからね!あれは清人先輩と行きたかっただけだから。じゃあね。」


そう言い捨てて私は体育館の中に戻った。


逢坂のバカ。



清人先輩とデート出来るチャンスだったのに。




それから特に逢坂からはデートの事を言ってくることは無かったのに、もう1人はそうにはいかなかった。


「ねぇ、純理って雅とデートいつ行くの?」

休み時間に急に私の席に来てはこの間の事を掘り返してくる康作。私はそっぽを向いた。

「誰がアイツと行くもんか!!清人先輩となら行きたかったよ!」

そんな態度を取ってしまったから、康作には何か悟られてしまった。

「清人くんと?」

「うん…。」

すると康作が少ししてこんなことを口にする。


「11月10日。清人くんの誕生日なんだ。」


「え?」

その言葉を聞いて康作の目を見る。

「雅なら清人くんの事よく分かってると思うからさ、2人で選んできなよ。清人くんの誕生日プレゼント。」

知らなかった。清人先輩は11月10日生まれなんだね。去年は清人先輩にはプレゼントもあげてなかったから、これは初の試みになる。
清人先輩の為になるなら、逢坂と出かけるのは有りだ。逢坂を利用して清人先輩の喜ぶのを選べば良いんだ。

康作はきっと、私の素振りから清人先輩が好きだと悟ったのかもしれない。

だから誕生日を教えてくれたんだよね…?


「それならどうだろう?」

「…それなら……まぁ。」

康作はニッと歯を見せて笑う。

「よし!じゃあ早速さぁ、雅に言いに行ったら?彼も実は純理からの誘いを待ってるんじゃないかな?」

と言う康作。

そういえば康作、なんでご褒美をデートなんかにしたんだろう。




「逢坂、特に何も言ってこないよ?忘れてるんじゃない?」

「そうかなぁ?」

「それに、誘いに行くなんて無理。元はと言えば康作がご褒美はデートだって言い出したんだから、康作が誘ってきてよ。」

と、でかい態度でそう伝えると、

「まぁ、それもそうか。俺から言おーっと。」

と言ってA組に早速行こうとするから、その前に康作を引き止めて、

「ちょ!ちょ!ねぇ、そういえばなんでご褒美をデートにしたの?」

と聞いた。でも答えはこうだ。


「え?結果がどっちになっても面白そうだったから!」

「はぁ!?」

康作は笑いながらそう言うとA組へと行ってしまった。

康作の奴、いったい何を企んでるんだ。



それから康作が戻ってきたと思ったら…


「え。」

逢坂まで連れてきてしまったんだ。やめて…クラスで出かける話なんてしたくない!

しかも瑞乃だって別席で違う友達と話しているし…。

なので私が康作と逢坂を連れて廊下に出た。

「康作!逢坂連れ回さないで!公にコイツ絡むと厄介な事になるんだから!!」

「えぇ?なんで?」

どいつもこいつも呑気だ…。同性の康作には分からないのか?

すると逢坂が横槍を入れてくる。

「純理ちゃん、次の土日のどっちかにデート行こうよ。」

もー!廊下とは言えどいろんな人通るんだからデートとかそんな単語使わないでよ…!!

その怒りを込めて逢坂の肩にグーパンチを入れる。

「あぁ…痛いよ…。」

「こんなところでデートとか言うからだ!」

すると康作が、

「ていうかLINE交換しちゃいなよ!その方が楽だよ!」

とニヤニヤしながら言ってくる。

「そうだよ!LINE交換しよう。康作くんともそういえばまだだったね。はい。康作くんもせっかくだから是非!」

と、あっさり逢坂は自分のスマホを取り出し、QRコードの画面を出した。

「良いの!?じゃあ読み取ろー!」

康作もスマホを取り出すが、私はどうしても気が乗らない。

逢坂はいつもの王子スマイルで私の顔を見てくる。早く読み取れと言いたいのか?

「純理、読み取んないの?清人くんの誕プレ買うんでしょう?」

と康作に肩を叩かれた。その誕プレの件は康作がA組から逢坂を連れ出す時に話していたみたいで、

「純理ちゃん。是非協力させてください。」

逢坂は笑顔でそう言ってきた。

もう少しで授業も始まるし、協力してくれるって言うし…といろいろと考えて渋々逢坂のQRコードを読み取った。

「よし!これで交換完了やね!後は2人に任せるよん。」

なんだろう。康作が1番楽しそうだ。




私の連絡帳に 逢坂 雅 が入っている。なんか変な感じ。



そんな逢坂とは部活を終えて帰って来てからLINEのやり取りを始めた。



逢坂のLINEのトップ画、これはどこだろう?外国だなぁ。ガラス張りのピラミッド…テレビとかで見たことある気がする。これって拾い画…?

画像をタップしていたら、誤って通話ボタンを押してしまった私は、逢坂に電話をかけてしまった。

慌てて切るも、案の定少しして折り返しが来た。


さすがに、自分のミスの折り返しで出ないのは駄目だよなと思って、仕方なく電話に出た私。

「…もしもし。」

「もしもし。こんばんは。純理ちゃんから電話貰えるなんてびっくりした。」

変なの。逢坂と電話なんて。それにしても逢坂、今思うと声まで美声なのね。腹立つ…。

「ごめん。間違えてタップしたの。」

「あぁ、そうだったんだ。」

でも、せっかくならこのまま出かける日や場所を確定させてしまおう。LINEでいちいちメッセージのやり取りするのも面倒だ。

なのでその事を提案してみた。

「ねぇ…どうせならこの電話で決めない?出かける日と場所。」


「うん!そうしようか!」






という事で次の日曜日の午後3時。逢坂と一緒にショッピング街にやってきた。この辺なら複合施設もたくさん建ってるから、あちこち探し回せる。

それに、ここは学校からも遠い場所だから、学校の人に遭遇する心配もない。


それにしても逢坂は大人っぽい格好だなぁ。私なんて相手が逢坂だし良いかと思って、適当にジーンズにブーツ、セーターにコートを羽織って終了。完全に手抜きコーデだった。

髪もいつもはおろしてるけど、適当にサイドポニーにした。

さすがにスッピンでは出歩けないのでメイクはしてきたけどね。

一方逢坂はベージュのシャツにグレーのチェックのショートコートに黒のスキニーに革の靴を合わせ、オシャレにキメてきていた。

この人、よくよく見ると背も高いなぁ。学校で最近絡まれるようになってからというものの、今になってこういう事に気付くなんて、余程この人のことを日頃ちゃんと見てないんだなって実感した。

「…逢坂って身長高いよね。何cm?」

「んー?180cmはあるよ!」


だよなぁ。180cmあると言われて納得の私。




ちなみに今日出かける事は、後々瑞乃に知られて問い詰められても嫌だったので、予め伝えておいた。柚も凛子も知っている。

瑞乃には、さすがの私でも緊張するんじゃないかなと言われたが、多分この緊張は、瑞乃がコイツと2人で出かけた時に味わった緊張とは、また別の物のような気はする。


ひとまず駅から近い複合施設から攻める。その建物のいろんなお店をブラり。

「純理ちゃんは清人くんに何をプレゼントしたいと考えてた?」

と逢坂。

「え…?いや、それが分からないから呼んだんだよ。」

今は雑貨屋さんを見ている。売り物を見ながら逢坂がこんなことを言う。

「ちなみに清人くんは、実用性のあるものじゃないと喜ばないんだ。」

「そうなの!?」

危なっ…。それを知らずにぬいぐるみとか買っちゃったりしてたら…。なんて想像したが、そもそも清人先輩にぬいぐるみなんて絶対プレゼントしないな。

「うん。あと、アクセサリー関連も避けた方がいいかも。彼、金属アレルギーなの。」

「うわ!それ聞いといて良かった!そうだったんだ!」

一緒にいる相手は逢坂ではあったけど、清人先輩の事を考えながら買い物するのはとっても楽しかった。今に清人先輩に会いに行きたい気分だ。今頃学校で部活かな?でも、先輩は受験生。そろそろ引退の時期かな…?




それから悩みに悩む私たち。とはいえ悩んでるのは私だ。色んなものを見すぎて全部あげたくなってくる。失敗するのを完全にビビっているんだと思う。清人先輩に渡した時に、受けが良くなかったらどうしようって。

そんな時に、革製USBを見つけた。クラシカルなデザインでかっこいい。どうやら名前も入れられるようだ。

「これ、良いかもね!大学に入ると多分、パソコン使う事も増えるんじゃないかな?逢坂はどう思う?」

「うん。俺も凄くピンと来てる!世界に一つだけの自分の名前入りのUSBなんてかっこいいよ!実用的だし清人くんも喜ぶと思う。後は純理ちゃんの意思次第。俺はまだ全然付き合うから、もう少し見てから決めても良いし、任せるよ。」

逢坂はいつもの王子スマイルを私に向けてくるが、今日はなんだかその笑顔が心強く思えた。

結局、プレゼントはこの革製USBにして、ギガ数は32GBの物を選んだ。

名前を掘ってから自宅に郵送してくれるそうだ。2日後に自宅に配送してくれるようだ。

こうして無事に買い物を終えて一安心した私。


「ありがとう。本当に助かりました。」

お店を出た後に逢坂にはきちんとお礼を伝えた。


「いいえ。お役に立てたみたいで光栄だよ。」


無事に目的も果たしたし、このまま帰ろうと思った私だったけど、

「だいぶ歩いたから足疲れたでしょう?純理ちゃん、ヒールだし。少し休んで行かない?」

と逢坂に提案された。

「逢坂こそ、足疲れたんじゃない?」

「俺は全然まだ平気だよ。」

実を言うと結構足は疲れ果てていて、座りたい気分だった。今日くらいは逢坂ともう少し一緒に居てもいいか。

「でも、純理ちゃんが心配で。」

たまには逢坂の気遣いに甘えてみよう。


「じゃあ…ちょっと休みたいな。」




それから、日曜日なので多少は並んだけど、逢坂と私はさっきのお店から離れていない所にあったカフェに入り、一息ついた。


逢坂と2人でカフェ…。


何を話そう。


悩んでいると、先に逢坂からのパスが来た。






「好きなんだね。清人くんの事が本当に。」




「えっ。」


それを言われてドキッとする私。




そうだよ。コイツと康作だけは、私の気持ちを知ってるんだった。


…あ、放送委員の当番の時に、口にこそ出してはないけどノブにも気付かれてしまったかもしれないんだった。


どんどん私の感情を知ってる人が増えていってる…。大丈夫かなと不安になる。



「顔赤いよ。可愛い。」


と逢坂は微笑んでそんな事を言ってくるもんだから調子狂う。さすが、学校1の王子だ。コイツは休みの日でもこんな感じなの…?


ダメだ純理。こんな胡散臭い笑顔に惑わされてはいけない。


そんな考え事をしていたら、逢坂が優しい表情でこんなことを伝えてきた。



「大丈夫。ここには俺しかいないし、俺は誰にも話してないよ。君の大事な気持ち、粗末になんか扱わないよ。」



今まで、周囲に恋愛感情を知られた時に、あっという間に噂が拡がったり、調子に乗るなと言われたり、私が好きだから取るなとか言われたり…周りがそう言われてるのを見てきたりもした私にとっては、この言葉が異様に温かく感じた。


本当は、自分の恋愛に臆病になっているからこそ、救いの手が欲しかったし、誰かに相談だってしたかった。惚気たりもしてみたかった。

でも、瑞乃のようには出来なくて。

また同じ目に遭うんじゃないかって、過去の事がトラウマで、どうしてもその1歩が踏み出せずにいた。

相談もできない。行動にも起こせない。


なのに人の恋路にはいろいろと、こうした方がいいとか、とやかく言って…。

こんなんじゃ清人先輩と進展するわけもない。



「清人くんの事は何をきっかけに好きになったの?」


この人になら…清人先輩の話をしても大丈夫そうだと心から思えた。



「……あのね。去年の今頃くらいだったかな…。バド部って、バスケ部と同じで体育館でやるでしょう?」

「うん。」

「その関係もあって、男バスとの絡みもあったりしてさ。今の女子バド部の部長の紺野先輩と清人先輩が仲良いこともあって、たまーに清人先輩から私達に話しかけたりしてくることもあったんだ。いつからか私の名前も覚えてもらってて。それがやけに嬉しかったのを覚えてる。そこからなんか意識しちゃって…。部活で会う時だけじゃなくて、校内で見かける度に目で追うようになっちゃった。」

逢坂は相槌を打ちながら聞いてくれていた。

「気が付いてたら清人くんの事、好きになってたんだね。」

「うん。そんな感じ。」


逢坂は頬杖をついて、ちょっとうっとりした感じにこんなことを言ってきた。


「純理ちゃんも乙女だなぁ。清人くんの話してる時の純理ちゃん、一段と可愛い。清人くんに見せてあげたいくらいだよ。」


そんな事を包み隠さずに、照れもしないでストレートに伝えてくるからびっくり。自分の顔が熱くなるのが分かった。

「恥ずかしいからやめてよ…。」

私はそそくさと自分の頼んだホットココアを飲む。でも案外熱くて舌を火傷する始末。

「あつっ。」

「あらら。大丈夫かい?」

私は隣に置いてあるお冷を口にして舌の痛みを和らげようとした。

逢坂の投げかけにはとりあえず、首を縦に振るだけ振った。そんな私に逢坂が私の目を見つめ、



「君は照れ屋なんだね。学校で会う時よりもずっと、今日の君は女の子だ。」




と言った。


逢坂、やめて…。私、こういうの本当に慣れてないの。


「もう!からかわないでよ!怒るよ?」

「からかってない。本心を伝えただけだよ。」

とニッコリ笑って返してくる逢坂。

こんな本心だかどうかも分からない王子的言葉を放って、いろんな女子を落として来たのか。そう思うと腹立たしい。

でもそんな戦法、私には効かないからな。

くそー…。コイツの真意が全然読めない。



そうだ。私もストレートにそう言えばいいんだ。


「ほんと…そういう言葉も全部腹立つわ。胡散臭い。そうやって女子達を落としてきたんだろうけど、私には通用しないからね。」


こう言えば少しは逢坂もカチンときて、なにか言い返してくるかな?ここは学校じゃないし、本性なんて出したい放題のはず。

しかし、逢坂はカチンとくるどころか、クスクスと笑い出す。


「何がおかしいの。」


「君は本当に面白いね。俺、何一つ嘘なんて言ってないんだけどなぁ。でも、そういう純理ちゃんの、お世辞抜きにストレートに来るところ、好きだよ。」


「えっ!?」

逢坂の口から“好き”というワードが飛んできた事に驚いた。こんなにコイツ、好きって言葉もサラッと使うの…?


「遠慮無しで接してきてくれるから嬉しいよ。」


逢坂は上機嫌だ。



あぁ、コイツに何言っても無駄だ…。



私よりもコイツの方が何枚も上手かぁ…。




私は逢坂に負けた気分になった。


それから逢坂からもう少し、清人先輩のどんなところが好きなのかって話を振られたりして過ごしたが、そういえば私ばかりが話を掘られてないか…?と思った。

私ばっかりいろんな面を見せるのは気に入らない。

コイツの事も掘ってやる。

そうだ。LINEのトップ画のことを聞こう。


「ねぇ、あんたのLINEのトップ画ってどこの国の写真?」

逢坂は前のめりになってちょっと意地悪そうに、

「へぇ、俺に興味があるんだ…?」


と言ってきた。そう言われて一気に恥ずかしくなった私は、つい反射的に、

「図に乗るなよこのナルシスト!もういいです!」

と言い放った。彼は笑いながら謝ってきた。

「ごめんごめん。君が俺の事聞いてくるのが新鮮でつい意地悪しちゃった。ごめんね。」

私は眉間にシワを寄せる。少し沈黙してから、逢坂がスマホを取り出して、LINEのトップ画を見せながら続けた。


「これ、俺が撮った写真で、パリのルーブル美術館。外にこういうガラス張りのピラミッドがあるんだ。」

「へぇ、旅行で行ったの?」

逢坂はスマホをテーブルに置いてから答えた。

「旅行じゃないよ。一時期向こうに住んでたんだ。写真はその時に撮ったものだよ。」



そういえば、逢坂のお母さんは外国人だった。もしかしてお母さんはフランス人?


「お母さんの出身がパリなの?」

「そうか。純理ちゃん、家に来てくれた時に母さんに会ってるのか。うん。母さんはパリ出身だよ。家庭の事情で中学時代はずっとパリにある母さんの実家で過ごしてたよ。この写真はその時に撮ったものなんだ。」

「そうだったんだ。じゃあフランス語も喋れるの?」

「うん。」


なんだ、やっぱりフランス語も喋れるパターンか。

そういえばコイツの家、かなり広くて大きかった。絶対ただ者じゃない。その辺も気になったので掘ってみた。


「あのさ。あんたって、どっかの坊ちゃんなの?」


「え?」


「だってあんなに家も広かったら…ねぇ?」


逢坂は爽やかな笑顔で、いやいや、と手を振って否定をした後に、あっさり家系の事を説明してくれた。


Paillettes JAPAN パイエットジャパンってパン屋知ってるかい?」


「あぁ、名前は聞いた事あるよ。」


「そのパン屋、元々はフランスのベーカリーチェーン店でね、Paillettes Parisって本店がパリにあるんだ。ここ20年くらいで日本にも進出してきてね。そのPaillettes JAPANの東日本エリアの支社長が、俺の父さん。会社全体としては専務として身を置いてるよ。」


え、すごい人なんじゃん。私は驚いて目をぱちくりさせる。


「父さんは元々はパン職人で、パリでの新人研修の時に母さんに出会ったって聞いてるよ。母さんは、本社のPaillettes Paris会長の娘なんだよ。」


え?はい?お母さんが会長の娘…?話が壮大すぎる!着いていけない…!


「だから母さんは母さんで、あぁ見えて本当は本部長なんだけどね。でも、内勤好きじゃないって言って、エリアマネージャーとして家の近辺の店舗を転々として働いてるよ。」


ヤバい…!この人の家系ただ者じゃない!だって、会長の娘って事はつまり…。


「じゃあ、その本店のさぁ、Paillettes Parisの会長って…あんたのおじいちゃん?」


「そうだよ。」


「ですよね…。」


この人本物の坊ちゃんじゃん…!!あぁ、なんだろう。余計に腹が立ってきた。
これ以上は聞きたくない…。


やっぱり逢坂の事は、好きになれない…。








11月10日の当日。


康作が今日の昼休み、清人先輩と中庭のバスケゴールの所で1on1をする約束になっているらしく、

「後で純理もそこに来なよ。そん時に誕プレ渡ししちゃいな!」

と言ってくれた。

なので昼休みに顔を出しに行った。


私が会いたかった先輩がすぐそこにいるのが幸せ。


「あれ?純理ちゃん、どうした?」

すると康作も何か準備があったようで、一緒にプレゼントを渡した。


康作はiPadのタッチペンだ。

「清人くん、前に壊れたって言って困ってたでしょう?これ、超書きやすいやつなんだって!」

「へぇ!!マジか!!ありがとう!!」

そして私のも開けてもらうことに。


「わ!!うそ!!何?USB!?」

少年のような反応をする清人先輩。可愛らしくてキュンとする私。

「はい。名前も入れてもらいました。」

清人先輩はその部分を行事する。

「わ!!ホントだ!!えぇ!かっこいいね!康作見てよ。やばくない?」

私の目の前で喜ぶ清人先輩。これが今の私にとってどれだけ嬉しい事か。


「純理ちゃん、ありがとう。」


しかも、嬉しいのはそれだけじゃない。


「純理ちゃんの誕生日はいつ?」

なんと、私の誕生日を聞いてきてくれたのだ。

「私、7月21日です!」

「わぁ!俺卒業後やん。でも良いや、絶対渡すね!」

と言ってくれたのだ。

「えぇ!ホントですか!?」

「うん、全然行く!」

「純理良かったやーん!」

「ありがとうございます!!」


少しだけかもしれないけど、清人先輩との距離、縮まったって事でいいのかな…?




それから康作と一緒に教室に戻っている時に、逢坂と鉢合わせた。

そうだ。コイツにも渡せた報告くらいしないと。


「逢坂…ちゃんと先輩には渡せたよ。」

「ほんとぉ!良かった。」

といつものこの笑顔だ。ちなみに逢坂は清人先輩にネクタイを送ったそうだ。入学式やらいずれ来る就活の時期とか、大学生でスーツを着る機会が出てくる事を考えて、そうしたらしい。


「またいつでも相談してね。」



と、逢坂は私の頭をスっと撫でて、廊下を歩いて行った。








そんな時にこの間一緒に出かけた日の帰り道での事を思い出す。





実はあの時彼からこんなことを言われていた。





「清人くんの事、しっかり捕まえておきなよ。」



って。


そう言う彼の顔は、少し寂しそうな表情にも見えた気がした。







続く