こんばんは✨
本日9/16は逢坂 雅くんのお誕生日です🎂
おめでとう🎉(っ'-')╮=͟͟͞͞🎂
今日は水曜日なんですが、
雅の誕生日という事で更新する事に致しました🙇♀️
パリ編もこの6️⃣で最後です‼️
是非ご覧ください✨
ーーーーーーーーーーーーーー
エッフェル塔の周りに広がる公園、シャン・ド・マルス公園
目を覚ますと俺はその公園にいた。昔俺がエルザに告白をした公園だ。
快晴の空。
おかしい。俺は今、純理と共に部屋で寝ていたはずだ。という事はじゃあ、これは恐らく夢の中だ。
その時、俺はとある人物から声をかけられた。
「雅」
びっくりした。
透き通った優しい声。この声の主は間違いなく……。
俺はその声のする方へと振り返る。
そこには、エルザが立っていた。
白いサンダルを履き、白いワンピースに淡い青の花柄で、ウエストには大きな青いリボンが結ばれた、エルザの華奢なラインが強調されるようなそんな服装だった。とても似合っていた。
「エルザ……!」
夢だということは分かっていた。でも、夢とは思えないくらいのリアルなエルザに俺は目を丸くし、動けなくなった。
「雅、先日はどうもありがとう」
エルザは俺に近付いてきて、俺の手を取り笑顔を向けてくれた。どうしてだろう。不思議とエルザのいつもの、シャボンの様ないい香りまでも漂ってきていた。
「先日……って?」
「ほら、私に会いに来てくれたでしょう?レオと、それから純理ちゃんと!」
それを聞いて一瞬にして、この間3人で行った墓参りの事を指しているのだと言う事が分かった。
「あぁ、あの日の事か。いいえ、純理の事をエルザに紹介したかったから」
「可愛い子ね!びっくりしちゃったわ!」
と、あどけなく笑うエルザ。そんなエルザの笑顔を見て、自分の心臓の鼓動が速くなった事が分かった。
「そうでしょう?」
確かに純理は可愛い。
でもねエルザ。
俺からしたらエルザも十分、純理に負けないくらいに可愛くて綺麗だよ。
「うん!それに性格もとっても良さそうね!純理ちゃんとこの先喧嘩して別れたりなんかしちゃダメだからね?」
「そんな未来は作らないよ。でもエルザ、どうして会いに来てくれたの?」
そう尋ねると、エルザは言った。
「今日、レオも純理ちゃんも雅のお母さんも、日本に帰ってしまうでしょう?雅は寂しがり屋だから、心配になって会いに来たのよ」
と。エルザにはなんでもお見通しのようだ。
特に、純理が帰ってしまうのは、胸が張り裂けそうなくらいに寂しい。そんな気持ちをここ1日ずっと抱えていたのだ。
「ありがとうエルザ。純理の事、ちゃんと笑顔で見送れるかなぁって、ここ1日ずっと引っかかってたの。だから本当に心強いよ」
と言って、俺はエルザの頭を撫でた。
「雅はずっと、見送ってもらう側だったものね」
そうだよエルザ。
俺はずっと純理に見送ってもらう側だった。
見送る方がずっと辛いんだろうと思ってたからこそ、今日を迎えるのがずっと嫌だったのだ。
見送る事が辛いので言うと、君のことだってそうだよ。
残された側って、辛いんだよエルザ。
俺はエルザの言葉に首を縦に振り、エルザの事をギュッと抱きしめた。
「ごめんエルザ。少しの間だけで良いから、こうさせてほしい」
俺はこの寂しい気持ちを、目の前のエルザにぶつけた。
「うん。よしよし。寂しいよね……」
と言ってエルザは優しく俺の事を抱き返しては、背中をぽんぽんと柔らかく叩く。
こうしていたら、不思議と気持ちがだんだんと落ち着いてきた。やっぱりエルザは凄いね。俺の辛さをこうして軽減させちゃうんだから。俺はもっと強くエルザの事を抱きしめた。
「雅、苦しいよぉ……」
「あぁ!ご、ごめんねエルザ……」
俺は慌ててエルザの事を解放し、少し屈んでエルザの目を見ては、彼女の頬に手を当てた。
「大丈夫よ雅。でも、少しでも楽になったかしら?」
「うん。ありがとう。エルザの気持ちが本当に嬉しい」
「どういたしまして!私達の今いる世界は違うけれど、私はいつだって雅の事をこうして見守っているから、その事はどうか忘れないでね。今の私にとっては、雅の幸せが私の幸せなの」
その言葉を聞いて、いろんな意味で胸がギュッとなった。
「ありがとう。君には感謝でいっぱいだよ」
エルザが亡くなっても尚、エルザはずっと、俺の心の中で生き続けていた。心の中のエルザに「こういう時、君ならどうする?」と問いかけて、自分の進むべき方向に気付けたことだってある。
前にこの話をアリスにした時に、まるで一心同体みたいだねと言われた。そう言われた事がやけに嬉しかった事を今でも覚えている。
「私こそ!雅がこうして前を向いて、元気に生き続けていってくれてる事が嬉しいわ」
俺は彼女の言葉に笑みを零した。
エルザ、ありがとう。俺と君はこれからもずっと……ずっと一緒だからね。
だから、君には決して「さよなら」は言わないよ。この先もずっと。
すると、エルザは少し頬を赤らめ、
「ねぇ雅……?純理ちゃんに怒られちゃうかもしれないけど……許してね」
と言われた。
「ん?何が?」
次の瞬間、俺はエルザにキスをされた。
懐かしい感触がした。
俺はそのエルザの柔らかい唇をそのまま受け入れ、腰に腕を回した。
当時の、エルザを愛した15歳の時の自分に戻ったかのような、温かい気持ちになった。
俺のエルザへの愛は、ずっと消えない。
エルザ、多分もうすぐで夜が明けるよ。
夜が明けたら、また純理の恋人としての俺に戻って、純理と一緒に未来へ進んで行くね。
だから、それまでは…
せめて今のこの瞬間は、エルザの恋人としての俺でいたい。
エルザ。どうかまた、こうして俺に会いに来てね。
愛してるよ。
目を覚ますと、どうしてだろう。部屋から微かにシャボンの匂いがしたのだった。
朝6時。俺は気持ちを切り替え、キッチンに立っていた。
「よし」
実は純理がパリに着いたその日に、純理は俺にこんな事を零していた。
「また雅のパンが食べたいな!」
と。来てくれたその日に、俺が作ったフランスパンを食べてもらってはいたのだが、それはあくまで作り置きのもの。出来たてのパンでは無かった。だから今日は1から作ってもてなしてあげたかったのだ。
それも、日本ならではのパンを。
そういう事もあり、今日の朝食にはレオの事も招待していた。
そして8時半。みんながダイニングルームに集まってきた。今日は日頃料理を担当してくれるメイドさんにもお休みしてもらい、おじいさま、おばあさま、執事さんも含め全員に食べてもらった。
サプライズにしてたので、純理もダイニングルームに来てみてビックリしていた。
「うわぁ!!え!これ、全部雅が!?」
と純理。
「そうだよ!純理が俺のパンまた食べたいって言ってくれたから、本当に作っちゃった」
俺が今日作ったのは、焼きそばパンとたまごパン。コッペパンだけじゃなくて、もちろん中の焼きそばもタマゴサラダも手作りだ。
後は、それに合わせてミネストローネを作り、サラダを添えた。
「あ!!出た!!焼きそばパン!!」
とレオが言う。レオは日本に留学して2年目になるので、さすがにもう存在は知っているようだが、フランス人にとっては焼きそばパンもたまごパンも馴染みのないパン。特に焼きそばパンは衝撃を受けたそうな。
2つのパンの存在を知っていたおじいさまとおばあさまでさえも、改めてそのパンを目の前にして驚いていた。その2人を見て、
「まぁ、2人とも素っ頓狂な顔しちゃって!面白いわね!」
と母さんが言った。
でも、日本人の舌にはこの味は定番で美味しい。母さんもすっかりこの味には慣れているので、パクパクと食べ進めていた。
「雅、美味しい!でも青のりが歯に付きそう…」
と純理。
「わ!!ごめん!!」
「ふふふ、でも良いの!美味しい。ありがとう雅」
と、純理はご満悦だった。他のみんなも絶賛してくれた。
「日本人の発想は斬新だよ!純理ちゃん、考えてごらん?本来なら焼きそばは炭水化物だろう?炭水化物に炭水化物を突っ込もうなんてねぇ!フランス人じゃ思い付かないよ!だから僕はね、日本人が好きなんじゃよ!ちなみにクリームパンも、日本発祥なんだよ」
なんて、日本語の話せるおじいさまは純理に向かって日本人のパン文化について熱弁していた。
「へ!?あれってそうなんですか!?」
おじいさまの熱弁トークは長いから心配だったけど、純理は純理で楽しそうに話を聞いてくれていたので一安心。
みんなが喜んでくれたのも良かったけど、何より、
「雅ってこういう系も作れるのね!凄いよ。本当に美味しかった!ご馳走様でした」
って、純理が喜んでくれた事が本当に嬉しかった。
「良かった。また今度何か作るね!」
「うん!楽しみにしてる!」
朝食も終え、一旦レオは支度の為に家に戻って行き、今は俺の部屋で純理と2人きりだ。
純理は部屋に来ていたおにぎりを抱っこして、優しく撫でてくれていた。そんな純理に俺はこう話しかけた。
「純理、少しだけ外出ない?」
「え?良いけど?」
なんだか無性に、夢に出て来たシャン・ド・マルス公園に行きたくなったのだ。
リシャール邸からそんなに離れていない為、2人でそこまで本当に足を運んだ。
その空は、夢で見たのと同じような快晴だった。
「一昨日はここには来てなかったよね。夜でもう暗かったし」
「そうね。この間回った時にこの公園の存在には気付いてたけど、広いね!この公園」
そんな話をしながら俺達は、公園中央にある噴水の広場にやって来た。
そこのベンチに腰掛けて、とある話を振った。
「ねぇ、純理。去年の3月にパリに出発する時に俺が渡した手紙の事って覚えてる?」
それを聞いて純理は、
「覚えてるよ!どうして?」
と尋ねてきた。
「ん?あのさ、俺が手紙の中で『日本に帰ってきたら純理とやりたい事がたくさんある』って書いたと思うんだけど、そう言えば純理に肝心な何がやりたいのかって部分についてはまだ話をしてなかったなって思ってね」
「あぁ、そういえばそうじゃん!知りたい!」
と言って隣に座る純理は目を輝かせていた。俺はそんな彼女の輝かしい目を見ながら答えた。
「俺、純理とはいろんな所に旅行に行きたい!」
「へぇ!!良いね!例えば?」
「そうだなぁ、北海道にも行ってみたいし、長崎とかも良いなぁ!それから、国内だけじゃなくて海外旅行にも行ったりしたいな!」
「良いね!今回のこのパリ旅行を経て、海外も良いなって丁度思った所だったし、金銭的に頻繁には無理だったとしても、今後もこうやって海外旅行はしてみたいな!」
純理は俺の話を聞きながら、ワクワクとした表情でそう返してくれた。
「あ、ホント?じゃあ俺ねぇ、前にも言ったけどハワイに行きたい!」
「ハワイ、私も行きたい!」
「ね!行こうよ!俺さぁ、育ちが東京だったりパリだったりするから、海に縁ある所って言うの?なんかそういう南国系の国に行ってみたくてね!」
「グアムとか?」
「そうそう!」
こうやって純理と一緒にやりたい事を話すこの時間がとても楽しい。旅行の話だけじゃなくて、何か共通の趣味も作ったりしてみたいって話もしたり、改めて、日本に帰って来て貯金もして必ず一緒に住もうという話もした。
「私と雅で、家事を当番制にしたりするの!そーゆーローテーション考えるのも楽しそう!」
「家事のローテーション?ん?じゃあ純理が料理してくれる日もあるって事?」
と意地悪っぽく尋ねてみる俺。彼女は料理が苦手だ。でも、それを知っているからこそ、彼女が今なんて返して来るかが気になったのだ。「料理だけは勘弁して……」とか、「私の時はレトルトでも良い?」なんて、そんな答えが来たりするのかな?と俺は予想する。別に俺はそんな返答だって良かった。でも、良い意味でその予想は裏切られた。
「私、最近は時間見つけてママの料理のお手伝いしてるのよ?」
「へっ!?」
「料理は出来といた方が得だよー!ってママに言われてね!」
「そうなの……?」
「あれ?言ってなかったっけ?だから、雅が帰って来た時には私が料理を振舞ってあげる!」
純理のその発言に、胸がキュンとした俺。俺は純理の肩に寄りかかり、彼女の手を握った。
「何それ。めちゃくちゃ嬉しいんですけど。じゃあ俺、凄い定番料理言うけど、純理の作るハンバーグが食べたい」
「ハンバーグねぇ……うん、分かった!」
純理はそう答えてくれたものの、苦笑いしているようにも見えたので、
「もしかして苦手?」
と聞いてみた。
「うーん…というか、前作った時に何かの分量間違えたのか、上手く纏まらなくて。ゆるゆるのすぐ崩れちゃう感じに出来上がっちゃった事があったの」
純理は気恥しそうにそう答えた。
「あぁ、そうだったのね」
「うん。でもまぁ、回数重ねて上手く作れるようにしとくわ」
「ホント!?じゃあ、楽しみにしとくね!」
そんな話も束の間、あっという間に時が流れ、気付けば1時間以上が経っていた。そして母さんからLINEで連絡があり、そろそろランチの時間だから帰って来るようにと言われた。
今日のランチはライアン叔父さまが家に来てくれるので、叔父さまを交えたランチだ。そのまま叔父さまが純理と母さんとレオの3人を空港まで車で送ってくれる事になっているのだ。もちろん俺も同行する。
「母さんから連絡が来た。そろそろ帰ろうか」
「うん、そうだね!早いなぁ。もう12時なのね」
2人は一緒にベンチから立ち上がり、手を繋いで歩き出す。
夢の中でエルザから元気を貰ったばかりだと言うのに、刻々と純理の帰国時間が迫っている事を受け入れたくない自分がいた。
男だからって気負いすることは無いかもしれないけど、純理がもし「寂しい」って言ってきた時に、「大丈夫、またすぐに会えるよ!」って伝えて支えてあげる立場なのに。
ダメだ。俺は弱いな。
離れたくない気持ちを隠せなくなってる俺は、その場で純理の手を引き、そっと唇にキスをした。
「雅……?」
唇を離し目を開けると、周りにはシャボン玉が飛んでいた。周囲でシャボン玉を吹いて遊んでいる子供達がいたのだ。
シャボン玉を見ると、エルザの事を思い出す。絶対にそうじゃない事は分かってるけど、このシャボン玉が、今の俺にはエルザからのエールのようにも感じた。
「……ごめんね。ビックリしたよね」
「えっと……いや……」
純理は俺からの前触れも無しのキスに驚いているようだった。彼女の顔は赤くなっていた。
フランス人にとってキスは当たり前で、風習的に周りに人がいても気にしない人達ばかり。俺も日本にいる時は、人がいないまたは、人が少ない所とか、見られないように一瞬だけにするとか、キスする場所は選ぶようにしてるけど、ここはパリだ。でも、だからと言って純理の気持ちも考えずにキスをしてしまった訳なので、この事を一瞬にして後悔した。
「申し訳ない。……行こうか」
と言って、純理の手を取り再び歩き出そうとした時、
「なんで落ち込むの?」
と彼女から声をかけられた。
「え……?嫌じゃなかったの?」
すると純理はこう言って照れ笑いを浮かべた。
「ちょっと恥ずかしかったけど、まぁ別にここ日本じゃ無いし……良いか!って感じ」
彼女の照れ笑いがくすぐったい程愛おしく感じた俺。まさか彼女がこんな事を言ってくれるなんて。
そしたら純理が、俺の腰に手を回してきて、頬を赤らめながら上目遣いでこうオネダリしてきたのだ。
「ねぇ……チューして?」
そんな純理の言動に、心臓が破裂しそうなくらいにドキドキさせられた。
「良いの?めちゃくちゃ人いるけど…」
「大丈夫。良いよ」
青く綺麗に生い茂る芝生の上。空中にシャボン玉がふわふわと風に流されていく。
晴れ渡る空の下、俺達2人はそのままそっと目を閉じ、熱いキスを交わした。
あぁ……。純理、愛してる。
本気で愛してるよ。
このまま純理の事を離したくないよ……。
そして数時間後、
とうとうこの時間が来てしまった。
アンケート
雅は無事に純理達を笑顔で見送る事が出来るのか!?
出来ると思う!
14%
なんだかんだ号泣しそうw
33%
号泣までは行かずとも、泣いちゃいそう
33%
雅じゃなくて純理が泣いちゃうのでは!?
19%
投票数: 21票
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。