第108話

雅 サイドストーリー1⃣
139
2022/02/15 07:52
以前に告知してた雅編をスタートさせます✨

本編1-60話までを

雅視点で語ります❣️

本編で雅と純理が両想いになるまでの間は特に
雅視点での語りはなく、
お話はほとんど純理によって進むので
雅の心情を読者の方にあえて読まれにくくしてたんですよね😂

本編を読んだ事ある方は
「あの時雅ってこんな事思ってたんだ‼️」
という新たな発見をして
楽しんで貰えたら嬉しいですし


今から初読みの方は
これを機会に本編の方もチェックして貰えたら
嬉しいです🙌❣️

それでは、スタートします🌟
━━━━━━━━━━━━━━━
𝑀𝒾𝓎𝒶𝒷𝒾 𝓈𝒾𝒹𝑒.Ⅰ








「雅なんて…大嫌い!!早く日本に帰ってしまえ…!!」



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

俺 逢坂雅は、ホテル経営と、Paillettes Parisという世界的に有名な大手ベーカリーチェーン店を展開する、リシャールグループ会長の娘であるリザ・リシャールと、Paillettes JAPANのパン職人からPaillettes JAPANの専務兼、東日本エリアの支社長にまで上り詰めた、逢坂要の間に生まれ、日本で育ってきた。

2人の結婚後、パリのリシャールの本邸に住む案もあったそうだが、兄もいて、リシャール家を継ぐ立場ではなかった母は、父を婿養子に迎えることはせず、嫁入りし日本で住む方針になったそうだ。



俺の住む家の近くにタワーマンションがあって、そこの31階という高層階に住んでいるのが徳原家。1個上の先輩、清人さやとくんの家があった。だから俺と清人くんはご近所付き合いで、小さい時からの仲だった。

特に俺を私立の小学校に通わせることはなく、俺も清人くんも、ごく普通の小学校に通った。
そんな中、小学生の時に仲良くなったのがノブだった。それからはノブを始め、同学年の友達と遊ぶ事や、清人くんとノブ、俺の3人で遊ぶ事も増えてきた。

ただ、小学校卒業後、フランスにいる祖母の体調の関係で、俺は母とフランスで過ごす事になった。
父は専務だから、立場上フランスに一緒に行くことは出来ず、日本の家でしばらく一人暮らしの生活が続いた。とはいえ、寂しがりな父は、休みの日の昼間の空いた時間を使って、ノブ達を呼んでパン作りスクールを無償で開いていたそうな。夏休みに日本に帰ってきた時に一緒に俺も参加させてもらった。



元々、父の家系は山梨で小さなパン屋を営んでいたらしい。俺の曾祖父、曾祖母の代にオープンして、それを祖父が引き継いだそうな。地元の人達から人気のパン屋さんだったらしい。祖母と結婚して2人で営んでいたけど、祖父が早くに他界してしまった事によって、経営が難しくなりお店を閉めることになってしまったという。

当時、俺の父は大学生。父は大学を辞めてまでお店を残そうとしたらしいが、せっかく進学したのだからとそれは祖母から反対されたそう。
でも、いつかはまたパン屋を復活させたいと願う父は、お店は閉めたものの、今も建物はそのままにしていて、自分が立派なパン職人になってオープンさせるとそう誓った。
その夢を実現させる為に猛勉強した結果、今のPaillettes社に入社したと聞いている。母との出会いは、その入社後のフランス研修での事だったそうだ。



話は戻って、フランスに渡った俺は、私立の中高一貫校に通うことになり、そこで運命的な出会いを果たした。

エルザ・ロベール。俺の初恋の相手となる子と出会った。



俺は彼女に一目惚れをした。





当時の俺は、フランス語がなんとなく喋れるくらい。逢坂家での普段のコミュニケーションの言語は日本語。ただ、どちらも話せたらと思った母は、俺と2人の時はフランス語でコミュニケーションを取ってきた。ただそれは俺が小学校に上がるまでの話しだ。


俺がフランスの学校初日で困っていた中、助けてくれたのがエルザと、その幼なじみのレオ・ベルナールだった。たまたまレオは日本人の祖父母を持つクオーターだったのだ。その為、ほんの少しなら日本語が分かった。レオ自身もこの時から、和菓子に興味があったみたいで、いつか京都で働くと夢を語っていた。

エルザは日本語は全く話せない純フランス人だったけど、ずっと俺と一緒にいてくれて、仲の良い子もたくさん紹介してくれて、俺を1人にさせまいと、優しく振舞ってくれた。少し体が弱かった彼女は、月に何回か学校を休む日もあったけど、それでも彼女は俺への配慮を忘れなかった。

日が経つにつれて、俺は益々彼女の事が好きになっていった。

その優しさも、太陽のように温かい笑顔も、
綺麗なウェーブがかったそのブロンズの髪も、大きなグレーの瞳も、俺は、彼女の全てが愛おしくなった。

告白したのは俺からで、中学2年生の春頃から俺達は付き合い始めた。

毎日一緒にいたし、毎日キスもして、毎日手も繋いで…


初めてを捧げたのも、彼女だった。


俺は、彼女の性格も見た目も全てが大好きで、どんどん成長する中で綺麗になっていく彼女にずっとドキドキしていた。


誰がどう見ても、エルザに溺愛していた。

そんな中、中学3年生になったくらいから、エルザの様子がおかしくなっていった。俺ともあまり一緒に居なくなって、学校を休む頻度も上がっていった。

俺の方はと言うと、祖母の様態も良くなったので、俺の将来を考えて俺の育った日本に帰ろうと父と母との話し合いで決まったそうだ。

その話はレオにはまず始めにしたけれど、俺は日本に帰るのが嫌だった。エルザと離れたくなかったから。

それを両親にも話したけれど、父をずっと1人にさせる訳にはいかないという母の意見が出てきた。確かにその通りだし、俺も父と離れ離れのままなのは寂しい。それに、父は専務なので日本を離れられない。

色んな理由があった。だから、俺が日本に帰ることは仕方ない事だと落ち着かせた。

エルザにもしっかり伝えようと思って呼び出して話をした結果、


エルザからは思いもよらない言葉が。



「雅なんて…大嫌い!!早く日本に帰ってしまえ…!!」




この日を最後に、エルザは俺の前から姿を消したのだ。


でも、俺はエルザの事を諦めていない。



どこかで、何かの間違いだと信じていた。


でも、時間は刻々と過ぎて、俺はエルザとの関係が曖昧なまま、日本へ出発する事になった。


日本へ帰国後も夏休み、冬休みを使って定期的にエルザを探しにパリに足を運んでいたけど、

まさかこの日が俺がエルザと会う最後の日になるだなんて、もちろんこの時の俺は知る由もない。







日本に帰って来てからは、俺はノブや清人くんと同じ高校に入学した。



そこから俺は、学校中の色んな女子生徒に言い寄られる日々が続いた。



「逢坂くん、好きです!付き合ってください!」


「雅くん、彼女いるの?」



でも、俺が彼女達の気持ちに応えることはもちろん無かった。



あぁ、ダメだ俺。
俺は、しっかり考えないといけない。エルザが俺にもう一度会いたいと思ってくれるような、そんな人間になっていないといけない。そもそも、エルザは俺のどこが嫌いになった?俺は感情的過ぎた?エルザを独占しすぎた?

ただ日本に帰るから嫌いと言われただけ?

エルザから嫌われた理由のわからない俺は、気が付いたら、誰からも嫌われないように、常に笑顔をみんなに振りまくような、優しく接するような、王子みたいな存在…いや、違う。俺は「八方美人」になっていた。



高校に入学してから1年半。


高校2年の秋。これに気付かせてくれたのがそう、この子だ。



「いっつもニコニコして、綺麗なことばっか言って、何考えてるか分からなくて、それなのに女子にキャーキャー騒がれて、しかも頭も良くて運動神経もいい??何なの?見てて腹立つ!!気に入らないの。あんたのこと。私はあんたみたいな人、嫌いなの!!」





そう、




それが純理だ。




嫌いと言われたのは、エルザ以外の子では初めての事。


純理が言うに、彼女の友達であり、俺の良き女の子友達である瑞乃の事を俺が泣かせた所を見たというのだ。

この事は結局、後で純理の勘違いであった事が分かる訳だが、


純理は俺と違って真っ直ぐで、友達の為にとこうして俺に立ち向かって、正義感の強い女の子だった。今まで俺の周りにいなかったタイプの女の子だったから、非常に興味が湧いた。


「俺に対してあんな風に言ってきたの、純理ちゃんが初めてなんだよ!俺、君に興味がある!俺はそんな君と仲良くしたいけどね」


俺がそう言って感激した思いを伝えても、もちろん純理はそんな俺を拒絶する。


「なんなのこの変人!!もう二度と瑞乃には関わらないで!!」


そう言われて平手打ちまでされたっけ。

でも俺も俺で、今でこそあれは意地を張ってたんだと思えるけど、当時はそんな事にも気付かず、その後も負けじと純理に会っては純理に話しかけて、純理に心を開いてもらおうと明るく振舞った。だけど結局ダメで、むしろ避けられたりするだけだった。

そこから俺自身に奇妙なことばかり起きた。


雨の日に朝来て傘立てに立てたはずの自分の傘が無くなったり、上からバケツの中の水が振ってきたり、上履きの中が画鋲だらけになってたりした。

途中から「きっとあの子のシワザなんだろうな」って気付いていたけど、あの子からそんなに恨みを買われてしまったのか……と思っただけで、そこから別に怒りの気持ちになる事は無かった。



その後、今度は純理にとある出来事が起きた。

純理が同学年の女子生徒にプールの方へ連れて行かれるのをたまたま見かけた俺は、嫌な予感がしてそのままプールへと足を急がせた。

行くと、そこには純理がプールに溺れる姿が。


どうやら彼女達に突き落とされたよう。



カナヅチの彼女を救い出すべく、俺はプールに飛び込んで彼女を助けた。

純理は、なんでここに居るんだと俺を突き返そうとしたけど、彼女は足がすくんで立てず、震えていた。


そんな彼女の事を俺は、

「もう、大丈夫だからね」

と、ギュッと抱き締めた。

純理は諦めたのか、俺にピッタリと寄っかかってくれた。





俺はこの時の事をよく覚えてる。





俺の心にはエルザがいるというのに、




初めて俺に甘えてくれた純理に、





不覚にもドキドキしてしまっている自分がいたのを。








そんな中、俺は風邪を引いてしまった。1日家で寝込んでいた時の事。驚いたのは、ノブからそれを聞いて純理がノブと一緒にお見舞いに来たのだ。

バケツの水も画鋲も傘も、全部私がやったと純理は打ち明けて、
水にかかったり雨に当たったそのせいで、俺が風邪を引いたんだと思った純理は、自分のせいでごめんなさいと、俺に謝ってきた。

俺は、別に君のせいで風邪を引いたと思ってないと返したっけ。

「なんで怒んないんだよ…。こんな時でもなんで怒らないの…?」

純理は半泣き状態で俺にそう言ってきた。



次の日に純理が1人でお見舞いに来てくれたのには正直もっと驚いた。しかも後々分かったのは、彼女は料理が苦手ということ。それなのに彼女は俺にリンゴを剥いて切って、ヨーグルトに入れて出してくれた。

確かにあの時のリンゴには小さい皮が残ってたり、逆に今度は深くまで剥きすぎて、実が削れてる部分もあって、今思えば歪な形のボコボコしたリンゴだったかもしれない。
でも、純理の看病したいというその気持ちがもう充分嬉しかった。

でも、この日の彼女はどこか浮かない顔をしていた。


一昨日純理がプールに落とされた日、あの後様子を見にプールサイドに来た清人くんに俺たちが遭遇した時、

彼女はいつになくソワソワしていた。


確信は無かったけど、もしかして……と思った。


彼女の性格を持ってすれば、もっと積極的に行けそうな所だけど、何か突っかかりがあって躊躇しているようにも感じた。だから俺は純理に、恋に臆病な所があるかと尋ねた。彼女はもちろん、俺に本心なんて話してくれなかったけど、俺はそんな彼女を守りたいと何故か思った。


それに今は家に2人きり。

こんな機会滅多にないと思って、俺自身も彼女に甘えたくなって、

「あーんしてくれたら、いい事あるかもよ?」

と、ヨーグルトを食べさせて欲しいと言ってみた。

純理がそのヨーグルトを食べさせてくれたら、プールに落とされるとか、そんな大事になる前に次から必ず俺が君の元へ駆け付けて助けると。そう彼女に伝えたのだ。


絶対にしてくれないと思ったが、彼女はヨーグルトを掬ってスプーンを俺の口の方へ運んだ。





「何それ…本当に助けに来てくれるって言うの…?」






「うん。行くよ。約束するよ」






彼女が帰った後、俺はリビングで1人、彼女が洗って行ってくれた流しの食器をぼんやり眺めながら、


なんでさっきあんな事をしたのだろう。と思い返した。




今思うと、俺はこの時にはもう純理に恋をしていた…って事なんだろうか。





ねぇ、俺。




一体どうしてしまったんだよ。





続く
ご覧頂きありがとうございました!

今回は6話までを振り返りました!

雅、あのプールの時からドキドキしてたのねという(*ˊ˘ˋ*)

でも、雅の葛藤はまだ始まったばかりです…
次回もお楽しみに✨

※感想もお待ちしています❣️❣️

アンケート

ここまで読んでみて雅に思うこと!
雅の気持ちに共感💦これは葛藤するわ…
22%
うん、それはもう恋でしょ!認めなって!
57%
ダメだよ雅!エルザの事貫くんじゃないの!?
22%
投票数: 23票

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