それから一ヶ月が過ぎ、季節は夏へと移っていた。
クラスメイトの東山さんは、ほっとして胸を撫で下ろした。
私は、これまで封印していた相性占いを再開した。
すると、思ってた以上に占って欲しい子がいて、今は順番待ちの状態。
さっきの占いを思い返しながら、私は本を開いて確認する。
相性占いは星を読むのが難しいから、必死で勉強中。
やがてお昼休みが終わるチャイムが鳴ると、あわてて午後の授業の支度を始めた。
* * *
放課後、私はいつものように、占いの館でお母さんから借りた本を読んでいた。
占いの本をパタンと閉じると、腕を伸ばして大きく伸びをした。
すると、ビロードのカーテンが少し空いて、お母さんが顔をのぞかせた。
お母さんは少し笑って、机の上にあった私の書きかけのホロスコープを見た。
これからは精度の高い占いで、みんなが幸せになれるよう、導いてあげたい。
その時、チリンと呼び出し音が鳴った。
お母さんが隣の部屋に戻っていくのを見届けて、私はハーブティーに口をつける。
カーテン越しに、隣の会話が聞こえてきた。
ふと、真宙くんのことを思い出す。
あれから彼とは、ずっと会っていない。
いつも優しい真宙くんが、ホロスコープを破る姿を思い出して、胸が痛くなる。
私の占いを心から信じてくれていたのに、私は嘘をついてしまった。
もう、彼に会う資格なんてない。
エキストラという言葉に、ハッとなる。
私は急いでドラマの情報をスマホで調べると、既に第三話まで放映されていた。
けれど、真宙くんが何話で出てくるかはわからず、見逃し配信を利用して、一話からさかのぼる。
途中、早送りをしながら見ていると、第二話の後半で、チラリとピンク色の頭が目に入る。
私は動画を戻して、真宙くんが出てくるのを待った。
それは警察署で、取り調べを受けている場面だった。
普段の優しい真宙くんとは別人のような、荒々しい口調だった。
バンと机を叩きながら立ち上がる。
その迫力がすごくて、一瞬、いつもの真宙
くんを忘れた。
そして彼は、周りにいた警官に取り押さえられて去っていった。
魚座は芸術的なセンスがあるから役者も合うとは思っていたけど、ここまでとは思わなかった。
そう思ったら、胸がきゅうっと苦しくなる。
私はもう一度、真宙くんの出てくるシーンを見た。
何度も何度も同じシーンを見返しているうちに、
スマホにぽたっと涙が落ちた。
彼のことを河原で占っていた日々を思い出す。
もう戻れないあの日々がかけがえのないものだったと、今、痛いほど感じていた。