
「ただいま〜」
仕事を終えて帰ってくると、いつも子犬のように玄関まで出迎えてくれるのに今日は来ない。
おかしいな、と思いながらリビングへの扉を開けると練習を終えてシャワーに入ったのであろう太志がソファで寝ていた。
テレビに映る彼はいつもユニフォーム姿だから、こうやってスウェット姿で無防備に寝ている姿を見れるのは、私の特権だ。
太志の前にしゃがみ込み、寝顔可愛いなぁ、と思いつつ、
もう一度小さな声で
「ただいま」
とだけ言って太志の髪の毛を撫でる。
おそらくテレビを見ながら待っていたのだろう。
さて、夜ご飯作らなきゃ、と立ち上がろうとした途端、
腕を引っ張られ、私の顔の前に太志の顔が。
「あなた帰ってきてたの?おかえり。」
と寝起きの声で微笑む彼。
「遅くなってごめんね。」
「んーん、寝ちゃってたや。ごめんね。仕事お疲れ様。」
「ありがとう。太志も練習お疲れ様。ご飯作るからもう少し寝てていいよ。」
と言って太志のおでこに軽くキスをすると、今度は太志に唇にキスされる。
「ん、ありがとう。帰りにケーキ買ってきたからあとで一緒に食べよ。」
彼と、デザートを食べながら少しだけ夜更かしをする時間が、私にとっては幸せな時間だ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。