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第1話

Masahiro Yanagida
1,761
2021/08/02 13:06

「海なんていつぶりだっけ?」

ふわりと笑う彼女は6年経っても愛おしい。

ワールドカップが終わり、久しぶりのオフにあなたを誘って海に来た。

砂浜に座り込み、海の向こうを眺めながら、この6年間を思い返す。
高校のクラスメイトだったあなたは、昔から少し周りより大人びていた。あの頃黒髪ロングだった髪の毛は、今は肩に付くくらいの長さで緩めのパーマがかかって明るめの茶色に染まっている。

練習、試合にスケジュールは埋もれ、周りの友達のようなデートはあまりしてあげられなかっただろう。
それでもあなたは、一言も文句なんて言わず、いつも穏やかだった。
もともと感情の起伏が激しくない俺にとっては、そんなあなたと過ごす時間はとても心地が良く、甘えてしまっていた部分もあったのだと思う。

「確かにあまり来たことなかったな。」

「私、実は海って結構好き。マサみたいだから。」

いつも通り、落ち着いている声であなたがそんなことを言う。

「俺って海みたいなの?」

「うん。海に来ると落ち着くの。マサといる時間に落ち着くのと似てる。」

そう言ってまたふわっと笑ったあなたに、俺は今から大事な言葉を伝える。
激しすぎない波音が心地良い。
この人に言う以外に考えられない。考えたこともない。









「あなた」

「遅くなってごめん。結婚しよう。」

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