え、母さん?
何を言っているんだこの人…………。
似てたのかなもしかして。
考えを巡らせていると男は私に話しかけてきた。
神威) 君はいつからかこの死の星(ほし)に住んでるんだい?
え、いつから…………?
まず私は何歳かもわからないのに。
こっちが知りたいくらいだよ。
冬華) 気づいたらここにいた。私を産んだ母親さえもわからない。
神威) ふーん、そっかー。ここには一人しか人間はいないんだ?
冬華) おそらく。
神威) そう。俺の名は神威。あんたの名は次会ったときにでも聞こうかな。徨安のヌシが許してくれたらの話だけどね。
冬華) そんな事を言うために来たのか?元々ここは夜兔族の故郷だ。帰るなら勝手に帰ればいいさ。だがそんな物好きはお前以外会ったこともないが。
オロチはお前を襲いたかったわけじゃない。
興奮してじゃれていただけさ。
人々から忘れ去られたこの星を、私達を覚えていたことが嬉しかったのかもな。
それから…………私は徨安のヌシではない。
私は…………
_____江華だ
神威) ん?
冬華) なんでもない。冬華だ。
今のは…………なんだったんだ?
まるで自分は…………自分は…………
冬華という名ではない気がしてきた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!