第6話

優しさ
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2019/04/17 08:38


あの一件以来、私はバイト先を変えた。
一緒に働いてた同期も先輩も
すごく寂しがってくれたけど、
宮田さんと同じ空間には
さすがにもういられなかった。

えいちゃんとのわだかまりも
あれからすっかりなくなって、
今じゃ一緒にいる時間は1番長いかも。

エ「今日アップする動画、ちょっと見てみて。」

『え、いいの?』

私はソファーにいるえいちゃんの隣に座り、
イヤホンの片耳を借りる。

『ふふっ、ほんとみんな楽しそうだね。』

エ「遊びの延長戦みたいなもんだしね。」

『・・・よしっ・・・。今日もありがと。
じゃあお昼ご飯準備するね。』

エ「ん。サンキュー。」

そう言うとえいちゃんは両耳にイヤホンをつけて
またパソコンを触り始めた。


キッチンに立っていると、

そ「なんか手伝う?」

と、そっちゃんがやって来た。

『ううん、大丈夫だよ。ありがとね。』

そ「・・・最近あなたちゃん、
えいちゃんとめっちゃ仲良いよね。」

『そうかな?
みんなとも同じくらい仲良しだよ?』

そ「この前・・・夜にあなたちゃんとえいちゃんが
手繋いで歩いてるの見たんだ。
だから・・・もしかしたらと思って。」

そっちゃんは頭をかきながら
少し苦笑いでそう言った。

『あ・・・えっと、あの日は・・・』

えいちゃんとのことが後ろめたいんじゃない。
宮田さんとの出来事が
鮮明にフラッシュバックしてきて言葉が詰まる。

『えっとね・・・えっと・・・』

エ「そら。あんま野暮なこと聞くんじゃねーよ。」

えいちゃんがキッチンに入ってきて
冷蔵庫の飲み物を取り出しながら
そっちゃんに言った。

そ「えいちゃん・・・」

エ「夜遅かったし、あの辺酔っ払いも多いし
たまたまあなた見つけたから
手引いて帰ってきただけ。
てか見かけたなら声かけろよなー。」

そ「・・・そっか俺の勘違いか〜(笑)
ゴメンゴメン。
あなたちゃんもゴメンね?」

そっちゃんはそう言ってキッチンから出て行った。

エ「嫌なことは思い出さなくていいよ。」

えいちゃんもそう言ってキッチンから出た。




・・・そうえいちゃんには言われたものの、
なんだかそっちゃんに申し訳なくなっちゃって
昼食のあと、私はそっちゃんの部屋に行った。

─コンコン・・・─

そ「はいー?」

『私。入ってもいい・・・?』

そう言ってそっちゃんの部屋に通してもらい、
あの日のことを簡単に説明して
えいちゃんが助けに来てくれたことを伝えた。

そ「・・・ねぇ、ちょっとだけ出かけない?」

『えっ?でもそっちゃん・・・』

そ「大丈夫!ちょっとだけ。」

そう言ってそっちゃんは
大きめのパーカを羽織ってフードを被り、
サングラスをかけた。

そ「これならちょっとくらいいけるっしょ。」

そっちゃんは鏡越しにニコッと笑った。


そっちゃんに連れてこられたのは
家の近所にあるクレープ屋さんだった。

そ「甘いもの食べると元気出るよ。」

そっちゃんは私にクレープを1つ渡してきた。

『私元気ないように見えた?』

そ「いや、全然元気そう(笑)
ただ頼れるやつはえいちゃん以外にも
いるんだよって証明したくて。」

そっちゃんはサングラスを
少しずらして私を見た。

そ「どう?さらに元気出た?」

『・・・あははっ!出た!』

私の笑顔を見るとそっちゃんもクシャッと笑った。

み「あっ!あなたちゃんとそらが
一緒にクレープ食べてる!」

リ「ホントだ〜。
そら俺たちにも奢って〜〜!」

出かけていたみっくんとりっくんに遭遇して
そっちゃんはクレープを買わされるハメに。

そ「お前ら自分で買えよ!」

リ「人のお金で食べるものって
自分で買って食べるより美味しいんだよね。」

み「めっちゃ分かる。」


大好きな4人。昔と何も変わらない。


・・・ずっとそう思ってた。



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