第17話

確信
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2019/05/13 16:59



一緒何が起きたか分からなかった。
こんなに近くでそっちゃんの顔を見たのは
初めてかもしれない。
数秒してそっちゃんの唇が離れた。

『あ・・・の・・・』

そ「幼なじみとしてじゃないよ。
1人の女性としてあなたちゃんが好き。」

そっちゃんの眼差しは真剣そのものだった。

そ「今すぐ返事してなんて言わないから。
急に幼なじみだと思ってたヤツに
こんなこと言われて
困らせちゃったよね、ゴメン。
でも本気だから。ゆっくり考えて?」

そう言うとそっちゃんは立ち上がって、

そ「俺リビングにいるから、
落ち着くまで涼んでて〜〜。」

と言って、何もなかったかのように
笑顔で自分の部屋から出て行った。


・・・短時間でいろんなことが起こりすぎて
完全にキャパオーバーだった。
あんなにボロボロ泣いていたのに、
涙もすっかり出なくなってしまった。

私はただ・・・
昔みたいに4人で過ごしたいだけだった。
たわいのない話をして、
4人が楽しそうにYouTube活動をしているのを
近くで見れるだけで良かったのに。

だけど私達はもう無邪気に笑い合ってた
子どもの頃には戻れなくて。
向き合うことを覚えなきゃいけない、
大人の階段を登り始めている。

目を閉じて、前にりっくんに言われた
「特別」の意味を考える。
私にとってこの幼なじみ4人組は「特別」。
それはこれからも絶対に変わらない。
でも、その中で一際目立つ私の感情。
私の名前を呼ぶ声。
いつも私の手を引いてくれてた温かい手。
笑うとなくなる切れ長の目に、
本人は気にしてるのかもしれないけど
私は大好きな、笑顔と一緒に出てくる
昔から変わらない豊麗線。
そして・・・あの日聞いた2人の艶やかしい声。

『・・・・・・っ・・・』

胸がまたキュッと苦しくなる。
そっちゃんの優しさも私への想いも嬉しくて
心が温かくなったのは確かなのに、
ことある事に胸の痛みは私を苦しめる。


『えい・・・ちゃん・・・』


口に出した彼の名前が私の身体中に響き渡る。
・・・他の誰かじゃダメなんだ・・・
この胸の苦しみは彼じゃなきゃ埋められない。
えいちゃんの特別になりたい。
自分の気持ちに確信がもてた瞬間だった。



『私、えいちゃんが好きだ・・・』


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