(Fukazawa)
最近、照の心配性に拍車がかかってるみたいでスマートフォンを見て思わず苦笑いがこぼれる。
何かあったことは照の様子を見てたら一目瞭然だけど、こういうことはなかなか相談してくれないから少し心配。
いつも不安そうな顔して、俺が仕事から帰るとほっとした顔して、どうしたもんだか…。
深「あ、そうだ…」
ふいに、照がここ行きたいって言ってたお菓子屋さんがこの近くにあったことを思い出す。
買って帰ってあげようと思ってウキウキしてたのに、お店は大混雑。
これは長くなるなぁと思いつつ、お店の看板商品を手にとってレジの列に並ぶ。
結局お店を出る頃には9時を過ぎていて、家についたのは9時半前だった。
深「ただいま!」
岩「遅いって。何やってたの?」
玄関の扉を開ければ、焦った様子で駆けてきた照。 なんか、不機嫌そう。
しかも睨まれてる。超怖え…。
深「そんな怖い顔しないでよ!これ買って来て
たの。照、食べたいって言ってたでしょ?
思ってたより店混んでて…!、おぉ、照?」
必死に弁解してれば、突然俺を抱きしめる照。
ほんとに、何があったんだ。
岩「何もなくてよかった、」
そう言った照の手は震えていて、抱きしめないと消えてしまいそうで。
俺もぎゅっと照を抱きしめる。
深「ごめん、心配かけちゃったね?それと
照、俺に言ってないことあるでしょ?」
岩「…何が、?」
深「最近の照、見てられないよ。ずっと不
安そうな顔してさ。」
今日だって、いつもは遅くなってもこんなに不機嫌になることないのに。
深「あ、…これ食べよ!照のためにめっちゃ
並んだんだよ?」
岩「ん、…」
やべぇ、拗ねたかも。
でも、甘いもんでも食べてゆっくりくつろいだら少しは話す気になってくれるだろう。
深「これうんめぇ…!」
岩「うん、…」
いや、気まず!何だこの沈黙は。
岩「…ねぇ、ふっか?」
深「ん、?」
何か話題はないかと必死に考えていれば、急に照が話し出してびっくり。
岩「ふっかはさ、急にいなくなったりしない
よね?俺置いていなくなっちゃうなんて、
ふっかはそんなことしないよね、?」
深「っ、ちょっと待って、落ち着いて?」
話が飛躍しすぎてて飲み込めない。
…てか、今一番焦ってるのは俺じゃん。俺が落ち着かないと。
深「ゆっくりでいいから、ね?」
岩「…最近、やな夢ばっか見る。」
岩「ふっかがいなくなる夢。そんなときに限
って俺一人だし。…嫌なニュースばっか
り耳に入ってくるし、」
岩「だから俺、不安だよ。ふっかが俺の見
えないところにいる時間が一番怖いっ、」
深「…そんなの、俺もだよ?」
今にも泣いちゃいそうな照を見てたら、不思議と混乱してた頭が冷静になってくる。
深「できることなら…俺も、一生離れないで
ずっと、そばに居たいくらい。それに、
照が急にいなくなったらって考えたこと
何回もあるけど、今は、不安じゃない。」
まじで俺らしくない言葉すぎて話し方がぎこちなくなるけど、こうでもしなきゃ照、泣いちゃうから。
深「勝手にいなくなるとか、照は絶対そんな
ことしないって俺分かってっから。照も、
俺がそんなことするやつじゃないって
知ってるでしょ?」
あー、こういうのってほんとに恥ずかしい。
こんなんで伝わったかな。俺の気持ち。
岩「…っ、そうだよね。ありがと、」
一瞬の沈黙の後、安心したようににこっと笑った照の頬を一筋の涙が伝って、俺の思いが伝わったんだと安心する。
大丈夫。何があっても俺らは一緒。なんて、そんなこと口には出せたもんじゃないけど。
でも、ほんとにそう思ってるよ。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。