(Iwamoto)
"今朝、ーー県ーー町の交差点で、車3台が絡む事故が発生しました。"
道路の血痕、遺影、遺族。それに、無機質なアナウンサーの声。
嫌なものを見てしまったと思った。生憎家には俺一人で、ふっかは仕事に行っている。
「気をつけて帰ってきてね」とだけラインを送ってテレビを消したけど、頭の中はふっかのことばかり。
もしふっかが、俺が、こんなことになったらどうする?
もしふっかがいなくなったとして、俺はちゃんと生きていけるのだろうか。
逆に、俺がいない生活なんてふっかは耐えられるのだろうか。
岩「…っはぁ、」
次第に息苦しくなってきて、余計な思考を逃がそうと頭を左右に振る。
最近、人の死に関するニュースを見ると自分に重ねて考えてしまうようになった。
これがもし俺だったら、ふっかだったらって考えて不安になる。
夢を見ることもある。
俺がふっかの遺影を抱いていて、棺の中には確かにふっかが眠っているんだ。
どんだけ名前を叫んだって、その冷たい体をゆさぶったって起きてくれることはない。
冷たくて、暗くて、絶望感でいっぱいになる夢。
岩「はぁ…、」
ため息をついてソファにもたれかかれば、スマホの通知音がなる。
ふっかからだった。
「仕事終わった❗」というなんとも緩い感じのメッセージと、ふっかから返信が来たことに安心して緊張しきっていた体の力が抜ける。
時計を見れば8時20分。今から30分もすれば帰ってきてくれるはずだ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。