(Fukazawa)
そうこうしてるうちに約束の時間になって、慌てて準備してラーメン屋に向かう。
位置情報は送ってるからあとはだてを待つのみなんだけど…
深「…さむっ」
思わず声に出るぐらい寒い。
上着一枚着てくりゃよかったな。
舘「あ、ふっか!」
寒さに震えながらスマホゲームをしていたら、だての声が聞こえてくる。
舘「ごめん!待った?寒かったよね、」
深「んーん、待ってない。行こ。」
待ってないなんて嘘だけど、だての乱れた髪の毛と荒い息遣いから急いできてくれたんだなって伝わって、愛おしいなぁと思った。
手を引いて暖簾をくぐれば中は暖かくて、カウンターに座ると体がだんだんほぐれていくのが分かる。
舘「ここ、すごいいいね。」
深「でしょ?人少ないし、穴場だよね。」
感心したように店内を見つめるだてを見て、喜んでくれてるんだって分かってほっとする。
舘「…すごい、うまそう。」
しばらくして注文したラーメンが来て、それをキラキラした目で見つめるだて。
…なんか、可愛い。
舘「…っ、!…あつっ、…うま!」
深「…かわい、」
舘「…ん?」
深「…あ、いや、なんも…」
熱さと格闘しながら、キラキラした目を俺に向けてうま!って言ってくるだてはあまりにも可愛くて。
思わず声に出てしまったらしい。
大口を開けて頬張るだてをぼーっと見ていたら、自分の前に出されたラーメンの存在を忘れていて。
舘「ふっか、伸びるよ?」
なんて言われて初めて自分のを食べていないことに気づいた。
仕事のこととか、色々話してたら食べ終わるのなんてあっという間で、
舘「ここまたこようね!」
と分かりやすくテンションが上がっているだての横を並んで歩く。
やっぱり外は寒すぎて、震えながら歩いてたらふわっと何かに包み込まれる。
驚いて見れば、それは舘がさっきまで着てたコートで、
舘「そんな薄着じゃ風邪引くよ?」
なんて言いながら俺に羽織らせてくれる。
深「でも、舘さん寒いでしょ?」
舘「大丈夫!厚着だから。」
深「っふ、ありがと、笑」
ウィンクしながらぬくそうなインナーをちらっと見せてくる様子が面白くて、つい笑ってしまう。
さすが俺の彼氏。包容力がすごい。
でも、今日はこのクールさに負けてはいけない。
舘「ふっか、なんか企んでるでしょ笑」
深「…えっ、?」
悪戯な笑顔で覗き込まれ、つい間抜けな声が出る。
そうだ、この人には隠し事なんて通用しない。
なんでも鋭い観察眼で見抜いてしまう。
深「いや、えーっと、」
舘「ふははっ、分かりやす!笑」
俺の馬鹿!もうここまで来てしまえば誤魔化しようがない。
深「あの、今日…さ、甘えてみない?」
舘「…え?」
今度はだてがキョトンとした目で俺を見る。
そりゃそうだろう。この人には甘えるなんて無縁な話だ。
きっと甘え下手なタイプだろうし、やっぱりこんなこと言うのはだめだったかな…。
舘「じゃあ、手つなご。」
深「あ、うん…。」
頭の中で猛反省を繰り広げていれば、ぎゅっと手を握られる。
思ってたよりすんなり受け入れられててびっくり。
嫌がられないか心配だったから、ほっとした。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。