(Watanabe)
俺の男はモテる。
男女関係なく、とにかくモテる。
ほら、今だって。
せっかく二人で出掛けてるっていうのに、たまたま会ったあいつの友達と近況報告やら何やらで楽しそうに話している。
…距離近すぎんだろ。
意識は一ミリもこっちを向いてなくて、ほんとにつまらない。
しかも厄介なことに、女友達。
べたべたくっつきやがって、ほんとのほんとにつまらない。
楽しそうにしやがって。俺にはめったにそんな顔しないくせに。
深「うん、また今度ね~!…どしたの。」
渡「なんでも。」
ちょっと腹が立ったから、話を終わらせてこっちを振り向いたふっかを少し睨んだ。
…心の中に湧き上がる黒い嫉妬の感情には気づかないふりをして。
渡「ね、これとこれどっちが良いと思う?」
深「んー、どっちも似合うと思うけどなぁ」
渡「いや、どっちって聞いてんだけど。」
楽しみにしてたアクセサリーショップで新しいピアスを物色するけど、ふっかはどっちつかずの返事しかしてくれない。
友達とはあんな楽しそうに話すくせにな。
深「どっちかって言われたら、こっちかなぁ」
渡「そう、じゃあこっちにする。」
深「いや、なんで笑」
やっぱり少し腹が立つから、ふっかが指さした逆を選んだ。
深「なんで怒ってんの。」
渡「別に。怒ってないし。」
深「いや、怒ってるよ?」
渡「怒ってないって。」
お前の友達に嫉妬したなんて、死んでも言ってやらない。
でも、俺と店にいるときはあんな楽しそうに笑ってくれなかったくせに。
だめだ、ほんとに腹立ってきた。
渡「っ、前言撤回。俺、マジで怒ってる。」
深「だよね。…なんで?」
渡「帰るぞ、早く。」
深「え、ちょっと!」
困惑してるふっかの手を引いてタクシーに乗り込んだ。
お互い家につくまで一言も話さなくて、ピリピリした雰囲気が広がっていく。
深「ねぇ、な…っ、」
渡「うるせ、」
なんで怒ってるの?と聞こうとしたふっかの手首を玄関の扉に押し付ける。
渡「しばらくじっとしてろ、」
深「えっ、ん…っ、!」
女から握られてた手を取って、手の甲、手首、指先、と、順番にキスを落とす。
深「いたっ、…っ、」
薬指にガリっと噛みつけば、紅く歪な跡がつく。
指輪のように薬指を囲う、俺だけのものだって印。
すぐに消えてしまわないように、何度も、何度も、血が滲むくらい跡をつけた。
深「も、やめ、てっ、」
渡「お前、ガード緩すぎんだよ、」
シャツのボタンを二、三個外して、今度は肩や腕にキスをして、跡をつける。
ふっかが触れられてたところ全てを俺の唇で上書きしていって、俺のものだって印を残す。
どうせすぐに消えてしまうのに、馬鹿馬鹿しいって思うけど、辞められなかった。
深「ね、急に、なにっ、?」
渡「お前、べたべた触られすぎなんだよ。
…友達とばっか楽しそうにしやがって。」
深「…え、?」
渡「そりゃ、俺は可愛くないし愛想も良く
ないからふっかは女のほうがいいかも
しんないけど。
でも、今付き合ってんのは俺だろ。」
女友達ばっかと楽しそうにしやがって。
俺が男で悪かったな。
深「…ごめ、っ、!」
ふっかの言葉を待たずに、その唇にキスをする。歯がぶつかるような、雑で激しいキス。
渡「…無理やりされてこれって、変態かよ。」
深「ゔぁっ、っぅ…、」
足の間、熱く勃ち上がったところを握り込むと、喉の奥から絞り出すような声が漏れた。