(Miyadate)
「じゃあ手、繋ご?」なんて、からかったつもりだったのに。
俺が無造作に握った手をさらっと恋人繋ぎに変えられたら、そのつもりが無くても照れてしまう。
なんか企んでるんだろうとは予想がついてたけど、まさかこんなことだとは。
舘「けど、なんで俺を甘やかそうなんて
思ったの?」
深「舘さんの家に居候してから俺、甘え
てばっかだったし。恩返しできるこ
と、なんかないかなって。」
深「…甘えんの、嫌じゃないでしょ?」
舘「…いや、まぁ…」
嫌ではないけど、甘えるのは苦手だ。
なんせ恥ずかしいという思いが勝ってしまう。
深「なんでもするよ?」
舘「じゃあ、洗濯物畳むの手伝って。」
深「あ、そういうこと?まぁするけど…。」
舘「あと、寝るとき壁側譲って。」
深「…それ、いつもしてるじゃん。」
舘「あとは、お風呂洗うの…」
深「いや、そうじゃなくて!」
家事に自信が無いから甘やかすっていう思考になったんだろうとは予想していたけど、その予想はどうやら正解だったらしい。
俺は甘やかされるのは得意じゃないってふっかも知ってるはずなのに。
舘「ほんとに大丈夫だから…」
深「俺が甘やかしたいんだって!」
そこまで言われてしまえば折れない訳にもいかなくて、小さく頷いた。
舘「じゃあ、頭…乾かして貰おっかな。」
深「それだけ?」
舘「いつもよりくっついて寝る、とか?」
圧倒的に一人で寝る派だけど、ふっかがそこまで言うなら甘えてあげても…。
舘「あ、腕枕はなしね!!!」
あれは首がイカれるだろうし、寝苦しいに決まっている。
深「わかってるよ!」
にんまりと口角をあげるふっかに、思わず苦笑いが溢れる。
俺、今から甘やかされるのか…。
頭を乾かして貰って、きゅっと密着して眠る自分の姿を想像して耳がぶわっと紅く染まっていくのが分かる。
砂糖みたいに甘ったるい妄想に飲み込まれそうになったとき、
深「あ、そーうだ!」
なんて、やけに楽しそうなふっかの声に現実に引き戻される。
深「いつもは背中合わせだから、今日は向
かい合って寝ようか。」
舘「…っえ、いや、いいけど…」
別にいいんだけど、自分の無防備な顔を見られると思うと恥ずかしすぎる。
けど、朝起きて一番に恋人の顔を見られるって思うとそれは幸せなことかもしれない。
深「…ていうか、俺が提案しちゃったら舘
さん甘やかしてることになんないよね。」
舘「…え、?」
深「ごめん、今の忘れて笑」
焦ってる俺の様子を見て、俺が嫌がってると勘違いしたんだろう。
舘「嫌じゃないよ、むしろ……嬉しい、かな。」
深「いや、無理して俺に合わせなくても…」
舘「無理、してない。朝起きて、一番にふ
っかの顔みれるんだって思ったら、幸
せだなって思う、よ…」
あまりにも恥ずかしい本音に、ふっかの顔を直視できない。大の大人がなに言ってんだか。
深「っふ、やっぱ舘さん可愛いよね。」
舘「…またそれ、」
付き合いはじめた頃はあまりにも可愛いって言われすぎて俺が耐えられないから、可愛い禁止令を出したこともあったなと思い出す。
可愛いって言ってくれたり、甘やかしたいって思ってもらえるなんて、俺は愛されてるんだな…。
深「なーに考えてんの!なんか幸せそーな
顔してんね。笑」
舘「内緒。笑」
ふっかのこと考えてた、なんて死んでも言えない。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。