(Watanabe)
ソファで項垂れながらちらっと時計を見ると、もう少しでふっかが帰ってくる時間で、スマホには
「仕事終わったよ❗」
と、いかにもふっからしい文章が表示されている。
返信する気なんて微塵も起きずにソファにもたれかかっていたら、インターホンが鳴った。
オレオレ詐欺かよ、なんて心の中でツッコミを入れて、プレゼントを持って玄関まで歩く。
うるせぇな、俺の心臓の音。
いい加減静かにしてくれよ、
うわ、俺まじで可愛くないな。
照れるとどうしても口調が悪くなってしまう。
ふっかに押し付けるようにしてプレゼントを渡せば、驚きながらも受け取ってくれた。
結局、好きって言えなかった…
しょんぼりしながら部屋へ戻ろうとしたら強く腕を引かれて、気づいたらふっかに包み込まれていた。
ヘラヘラ笑いながら髪を撫でられる。
好きって言うなら今しかない、そう思った。
やっと言えた安心感からかなんなのか、肩の力がすっと抜けたその時だった。
俺のおでこにふっかの唇が触れる。
びっくりしすぎて変な声が出てしまった。
今度は目を合わせて頭をくしゃくしゃ撫でられる。
なんだよこれ、苦しい、かも。いや、かもじゃなくて普通に苦しいんだけど。苦しすぎるんだけど。
俺がその場で棒立ちしてたら、
とか言いながら俺の手を引いて歩いていく。
しかもちゃっかり恋人繋ぎだし。
俺をどこまでキュンキュンさせるつもりなんだよ!
くだらない事を考えていたら、着ていた上着を脱ぎながら俺に話しかけてくるふっか。
耳で光るピアスにさえもドキドキして。
と、苦し紛れにそういえば大爆笑されて、俺がむっとしてたらごめんごめん、なんて言いながらまた、俺の頭を撫でてくる。
頭撫でられても俺の怒り収まんねーから!!
…でもそれ、嫌いじゃないよ。
ふっかおめでとう。
これからも俺だけのふっかでいてね。
__________End________
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!