〜 さとみside 〜
赤錆びた線路の上を、君と手を繋ぎながら歩く
俺はさとみ。17歳。
普通ならもう高校生なんだけど、俺は孤児院育ちだから、学校には通っていない
もちろん親もいないし、家も家族もない
でも、そんな人生も嫌じゃなかった
だって、こいつがいるから
…そう、こいつ
ころんって言う俺の弟
歳は15歳
弟って言っても血は繋がっていないけど、小さい頃からの大切な家族だ
俺ところんは、まだ俺が14の時に孤児院を逃げ出した
一緒に、遠くへ遠くへ。誰にも見つからない、小さな廃村まで
俺ところんが孤児院を逃げた理由は、ころんの秘密だった
ころんは……"人狼"っていう、人の姿をした人喰い狼
それが原因で周りから嫌われ、施設の人にまでろくな扱いを受けてもらえなかった
だから……孤児院を逃げ出したあの日から、ころんは俺が守ると心に誓った
ある冬の寒い日の事
その日は食料が見つからず、雪山の奥へと食べ物を求めてさまよっていた
吹雪が俺の視界を遮り、強い風が行く手を阻む
ころんが飛ばされないようにしっかりと抱きかかえるが、足がどうにも動かない
……あと少し、もう少し
そう自分に言い聞かせながら、震えて動かない足を必死に動かす
しばらく歩き続けると、遠くの方に小さなあかりが見えた
(あれだ……)
あそこに誰かいるかもしれない
そう思い、必死に灯りの方へと足を動かす
それと同時に、物凄い風が俺達を襲った
ザザザザザザ……
薄れ行く意識のなか、俺はころんの手を、強く強く握りしめた……
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(あれ……ここは……)
目を覚ますと、そこは大きな屋敷のホールのような場所だった
俺の目の前には、黄色い髪の、多分俺より年下っぽい男が立っていた
(そうだ……ころん……!)
彼が指をさした方に視線を向けると、俺の隣ですやすやと眠っているころんがいた
(良かった……ころん、生きてる……)
そんな安心と共に、恐怖心を持ちながら黄色い髪の人に話しかける
倒れていた、という事は、気を失った時にここの近くまで飛ばされたのか
……ころんの手を握っておいて良かった
……僕達?
という事は、他にも遭難した人達がこの屋敷にいるのだろうか
そうか、俺達の他に5人も……
声がした方に目をやると、缶詰のようなものを沢山持った5人が階段から降りてきた
黄色い人が言っていた他の遭難者は、多分この人達だろう
食べ物を探してきてくれたのか、ありがたい……
俺が口を開こうとすると、隣で小さな音がした
その方に目をやると、寝ていたころんが目を覚ましていた
(よかった……)
俺がころんを強く抱きしめると、ころんは「んぇ…?」と情けない声を出す
ころんに状況の説明が終わり、一段落ついた所で黒い髪の人が口を開いた
俺達の他にも孤児院育ちのやつがいるのか……
(この後か……)
正直まだ心が落ち着いていない
疲れているからゆっくりしたいが、そうしている暇も無さそうだしな
そして、俺ところん。
莉犬さんと莉猫さん。
ジェルさんとあかねさん。
ななもりさんとるぅとさんでペアを作って、俺達は3階の探索に行く事になった
俺達はそれぞれの階に行き、探索を始めた
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1話なのにこんなに長くなっちゃってすみません!
多分こっちがメインの投稿になると思います……(´・ω・`)
2話をお楽しみに(´˘`*)
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!