第4話

第4話
1,504
2020/07/20 13:28


ー 2日目・深夜 ー



〜ころんside 〜




ピト……ピト……ピト……


冷たい廊下を、冷えきった裸足で歩く

ステージの真ん中には、耳と尻尾を生やしたるぅとさんが立っていた

るぅと
るぅと
……来ましたか
ころん
ころん
…………
るぅと
るぅと
ねぇ、ころんくん?


そう言って彼は僕の方に手を差し伸べ、頬に手を触れた

るぅと
るぅと
…僕と貴方は"仲間"です
貴方の事は僕が守りますよ?
ころん
ころん
ぇ……?


彼は小さく微笑んだが、その笑顔の裏に闇を感じた

るぅと
るぅと
同じ人狼なんです
共にこの屋敷を出ましょう?
ころん
ころん
…………


共に…この屋敷を……?

人を殺して、何を言っている……?


言うんだ、僕……

言って……ちゃんと説得して……

ころん
ころん
……ぁ…あの……!
るぅと
るぅと
……?なんですか?
ころん
ころん
ぁ……いや……
るぅと
るぅと
……シーッ……
るぅと
るぅと
この世に存在する醜い人間共は、僕が全員殺しますから
ころん
ころん
ッ…………


言い返す事が出来なかった

怖かった。言い返したら、殺されるような気がして

るぅと
るぅと
じゃ、僕そろそろ行くんで、また明日
ころん
ころん
…………


待って、待って

今日も殺すのか、今日も……

今日も、何の罪も無い人間を……

守ると決めた、僕の大切な友達を……

僕の……お兄ちゃんを……

ころん
ころん
……待ってッ……!


言葉が出たのは、るぅとさんが部屋に戻った後だった




┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



ー 朝 ー


ころん
ころん
ごめ……なさ…………


朝、僕は部屋を飛び出して廊下を走り回った

一瞬嫌な匂いがして横を向くと、無惨に首を引き裂かれた莉猫さんの姿があった

ころん
ころん
あ……あぁ…………
莉犬
莉犬
……ころちゃ…?
莉犬
莉犬
え………………
莉犬
莉犬
あ…………あ…………
莉犬
莉犬
に……ちゃ……?
莉犬
莉犬
ねぇ……にいちゃん……?
莉犬
莉犬
起きてよ……ねぇ……


莉犬くん……

莉犬
莉犬
ねぇ!!起きてよ……ッ!!
莉犬
莉犬
起きてって!ねぇ!!
莉犬
莉犬
や"だ"よ"……もう"…いや"ぁ"…………
ころん
ころん
莉犬くん……ごめん……守れなかった……
莉犬
莉犬
ん"ん……ころちゃんの…せいじゃない……


違う……僕のせいだ……

僕が…


何も守れなかった……

敵なのに……るぅとさんは敵なのに……





「"仲間"です」





ッ…………

ころん
ころん
ごめんなさい…………
さとみ
さとみ
…………
ななもり
ななもり
…………
ジェル
ジェル
…………


あいつ…………

るぅと
るぅと
…………


こんなに憎いのに、こんなに悔しいのに……

言い出せない……自分が憎い……



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


〜 さとみside 〜



コンコンッ


ころん
ころん
……なに…………
さとみ
さとみ
…ころん……
さとみ
さとみ
大丈夫…………?
ころん
ころん
……ごめんなさい…………グスッ


俺は、ころんが泣いている理由が分からなかった

何かに怯えている

何かに悲しんでいる

その"何か"が、いつも分からなくて……

大丈夫だとか……俺が守るとか……

いつもそんな強がりを言ってそばにいるだけで、実際はなんにも出来てないのに……

さとみ
さとみ
…ごめんな…………
ころん
ころん
さと…みく……ごめんなさい……
ころん
ころん
僕ッ…誰が殺したか……わかってるのッ…グスッ…
さとみ
さとみ
ぇ…………


じゃあ……なんで……

ころん
ころん
ごめんなさい…グスッ…ごめんなさい……
さとみ
さとみ
…………
さとみ
さとみ
大丈夫
さとみ
さとみ
お前の好きな時に言えばいい
気持ちが落ち着いたらでいいから……ゆっくりな……
ころん
ころん
うんグスッ……ありがと……さとみくん……


どうして……どうして俺はこんなに弱いのか

このままじゃ、ただ隣にいるだけなのに……

さとみ
さとみ
ごめん…ほんとに……ごめん…………


ころんと同じ気持ちになってやりたかった



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



〜 ころんside 〜



ころん
ころん
うんグスッ……ありがと……さとみくん……
さとみ
さとみ
ごめん…ほんとに……ごめん…………


ねぇ……なんでごめんって言うの……

謝らないで…僕が悲しい気持ちになるじゃん

ころん
ころん
…………グスッ…
さとみ
さとみ
……落ち着いた…?
ころん
ころん
うんッ……


悲しい…気持ちか…………


…………そうだ、莉犬くん……!

ころん
ころん
……ごめんッ!


ダッ

さとみ
さとみ
……おいちょっところん!!


僕はさとみくんの言葉を無視して、走って莉犬くんの部屋へ向かった


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


莉犬
莉犬
うッ…グスッ……


ダンッ

ころん
ころん
莉犬くん!
莉犬
莉犬
ぇ…ころちゃ……?グスッ


莉犬くん…

守るって約束したのに、僕は……

ころん
ころん
大丈夫……


ギュッ

莉犬
莉犬
うぁぁ……ころちゃぁぁ……
ころん
ころん
…ごめんね、お兄さん守れなかったや……
莉犬
莉犬
ちがっ……ころちゃんの…せいじゃないよ……?
ころん
ころん
僕だから……僕だから出来た事なのに…
莉犬
莉犬
…………んぇ?
ころん
ころん
んーん…なんでもない…ごめんね莉犬くん……
莉犬
莉犬
……………………


莉犬くん…………


弱い自分が情けない

悲しいから、さとみくんに頼って

僕が1番そばにいてあげないとだめな人のそばにいてあげられなかった

…こんな僕……ッ



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



ー 夜 (夕食時) ー

ころん
ころん
…………
ななもり
ななもり
皆…大丈夫……?
ジェル
ジェル
……
莉犬
莉犬
……
るぅと
るぅと
…大丈夫なわけないですよ……
ほっておいてあげましょう……?
ななもり
ななもり
う、うん…………
ころん
ころん
…………


こいつ……いい人ぶって……


そうだ……今日こそちゃんと声を出す

そして……誰も守れなかった僕から変わる


まだ……守るべき人がいるから…………



タッタッタッタッタッ

るぅと
るぅと
……今日も来て下さいね
ころん
ころん
……ビクッ



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



ー 夜 ー


ころん
ころん
…………
るぅと
るぅと
……こんばんは
ころん
ころん
ねぇ…もうこんな事やめてッ…!
るぅと
るぅと
……は?
ころん
ころん
こんな事したって……ッ
ほんとに……なんのために………!


勇気を出した

こんなに怖いのは初めてだ

足がガクガクと震え、もう立っているのもやっとくらい疲れきっていた

るぅと
るぅと
……はぁ…もう
…僕にもそれなりの理由があるんです
醜い人間共は僕が全員食い殺すから貴方はそれを黙って見てればいいんですよ
ころん
ころん
どんな理由があっても人を殺すのは間違ってるよ!!
るぅと
るぅと
……うるさい
ころん
ころん
罪の無い人間を傷つけて楽しいの?!
みんなみんなッ、まだこの世でやる事がいっぱいあった!!
るぅと
るぅと
黙って下さい…
ころん
ころん
なのに…全部ッ!お前が奪ったんだ!!
るぅと
るぅと
うるさい!!


ガリッ

ころん
ころん
った…………


僕の腕に痛みを感じて視線を向けると、赤黒い血がぽたぽたと垂れていた

ころん
ころん
ぁ…………
るぅと
るぅと
…………!
ごっ、ごめんなさ……ッ
ころん
ころん
…………
るぅと
るぅと
…ごめんなさい…………
僕だってわかってるんです
こんな事したって意味は無いって
ころん
ころん
ぇ……
るぅと
るぅと
……でも、そうしていないと生きる意味が無いんですッ…
遠い望みを、願うことすら出来なくなるんです…
ころん
ころん
…………でも…


それはしちゃいけないこと……やっちゃダメなこと……

だから……止めないと……止めないといけないのに……

ころん
ころん
うッ……グスッ…


その何かもわからない"望み"に、同情心を抱いてしまう
るぅと
るぅと
…さよなら
ころん
ころん
おねがい……も……やめて…………


キイィィィ バタンッ


ころん
ころん
ぁ…………



━━━━━━━━━━━━━━━




切ります!





ラスト近くなってきました(´˘`*)

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