ー 2日目・深夜 ー
〜ころんside 〜
ピト……ピト……ピト……
冷たい廊下を、冷えきった裸足で歩く
ステージの真ん中には、耳と尻尾を生やしたるぅとさんが立っていた
そう言って彼は僕の方に手を差し伸べ、頬に手を触れた
彼は小さく微笑んだが、その笑顔の裏に闇を感じた
共に…この屋敷を……?
人を殺して、何を言っている……?
言うんだ、僕……
言って……ちゃんと説得して……
言い返す事が出来なかった
怖かった。言い返したら、殺されるような気がして
待って、待って
今日も殺すのか、今日も……
今日も、何の罪も無い人間を……
守ると決めた、僕の大切な友達を……
僕の……お兄ちゃんを……
言葉が出たのは、るぅとさんが部屋に戻った後だった
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ー 朝 ー
朝、僕は部屋を飛び出して廊下を走り回った
一瞬嫌な匂いがして横を向くと、無惨に首を引き裂かれた莉猫さんの姿があった
莉犬くん……
違う……僕のせいだ……
僕が…
何も守れなかった……
敵なのに……るぅとさんは敵なのに……
「"仲間"です」
ッ…………
あいつ…………
こんなに憎いのに、こんなに悔しいのに……
言い出せない……自分が憎い……
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〜 さとみside 〜
コンコンッ
俺は、ころんが泣いている理由が分からなかった
何かに怯えている
何かに悲しんでいる
その"何か"が、いつも分からなくて……
大丈夫だとか……俺が守るとか……
いつもそんな強がりを言ってそばにいるだけで、実際はなんにも出来てないのに……
じゃあ……なんで……
どうして……どうして俺はこんなに弱いのか
このままじゃ、ただ隣にいるだけなのに……
ころんと同じ気持ちになってやりたかった
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〜 ころんside 〜
ねぇ……なんでごめんって言うの……
謝らないで…僕が悲しい気持ちになるじゃん
悲しい…気持ちか…………
…………そうだ、莉犬くん……!
ダッ
僕はさとみくんの言葉を無視して、走って莉犬くんの部屋へ向かった
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ダンッ
莉犬くん…
守るって約束したのに、僕は……
ギュッ
莉犬くん…………
弱い自分が情けない
悲しいから、さとみくんに頼って
僕が1番そばにいてあげないとだめな人のそばにいてあげられなかった
…こんな僕……ッ
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ー 夜 (夕食時) ー
こいつ……いい人ぶって……
そうだ……今日こそちゃんと声を出す
そして……誰も守れなかった僕から変わる
まだ……守るべき人がいるから…………
タッタッタッタッタッ
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ー 夜 ー
勇気を出した
こんなに怖いのは初めてだ
足がガクガクと震え、もう立っているのもやっとくらい疲れきっていた
ガリッ
僕の腕に痛みを感じて視線を向けると、赤黒い血がぽたぽたと垂れていた
それはしちゃいけないこと……やっちゃダメなこと……
だから……止めないと……止めないといけないのに……
その何かもわからない"望み"に、同情心を抱いてしまう
キイィィィ バタンッ
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切ります!
ラスト近くなってきました(´˘`*)
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。