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第27話

幼馴染の秘密
699
2018/08/22 01:27
伊藤珠莉
えっと…凄い言い難いんだけど
ね、まー君には…
珠莉が言葉を濁らせ何て言っているのかが
聞き取れない。
鹿島瑚子
もぉ、結局は言うんでしょ。
友哉、単刀直入に言う。真には
家族がいない。
三浦友哉
え?だって、真の母さんは出張
って…
鹿島瑚子
それは真がついた嘘。真には、
お母さんもお父さんもお姉さん
もいない。
伊藤珠莉
まー君の家族の人達はまー君が
10歳の時に目の前で車に轢かれ
て事故で亡くなっているの…
三浦友哉
は…?10歳?そんな話、全く真
から聞いたことがないぞ?
そうだ。真は10歳の時もいつも通り笑って、
凄い元気な印象だった。
鹿島瑚子
真が隠した。
三浦友哉
…ちょっと待て。真は10歳から
後もずっと俺の隣の家に住んで
いるんだけど…つまり……
鹿島瑚子
そう、真は10歳から誰にも頼る
ことなく一人暮らしをしてる。
三浦友哉
せ、生活費とかってどうしてる
んだよ。
伊藤珠莉
まー君のお母さんもお父さんも
お金持ちだったらしいからね、
家のローンは無いし、両親の
遺産だけで暮らしてるの…
三浦友哉
引き取り先は?
鹿島瑚子
おばあちゃんは寿命、従姉妹は
全員亡くなっているってさ…
三浦友哉
あ…
真の従姉妹の神崎舞さん…確か、全員死んで
いるってニュースやっていたっけ…
伊藤珠莉
孤児院にも行きたくないって、
騒いだらしくてね…しかたなく
って感じ…
三浦友哉
真が悲しそうな顔をしているのなんて見たことないんだけど…
鹿島瑚子
そこから真の笑顔に繋がるの。
前に本人に聞いたんだけどね、
真曰く、友哉に心配をかけたく
ないんだってさ。いつも通りの
友哉でいてほしくて、気遣わな
いでほしくて笑ってた。
三浦友哉
じゃあ、俺がその事を知らな
かったのも…
伊藤珠莉
家族がいないことをとも君が知
ることで変な目で見られたり、
避けられるかなって少し思った
らしいよ…それで私達は知って
たけど、とも君には言わないで
って…
鹿島瑚子
10歳にしては凄いよね、家族が
死んだのに心配をかけたくない
からって感情を隠して笑い続け
ていたってさ…
三浦友哉
ああ…全く気付かなかった……
鹿島瑚子
私と珠莉はよく遊ぶけど、あの
子の泣き顔なんて見たことない
んだよ。
三浦友哉
俺もない…
伊藤珠莉
…案外、女子って弱いからさ。
もしかしたら今、一人で泣いて
いる可能性だってあるよ…10歳
の頃の記憶が一気に思い出すん
だもん…
鹿島瑚子
だね……話はそんなとこだよ。
このあとの行動は友哉が考えて
くれればいいと思う…
三浦友哉
分かった…んじゃ、じゃあな。
2人に軽く手を振ると、俺は公園を出て家に
向かう。
…何で真は言わなかったんだよ……
もし、言ってくれれば母さんに頼んで俺の家
に一緒に住むことも出来たのに…
真の家を通り過ぎ、自宅前で止まる。
三浦友哉
……。
やっぱり、心配だな……
俺はそう思うと、自宅前を離れ、真の家の
インターホンを押していた。

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