第6話

あの日、描き出した青い空[三部]
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2020/10/16 14:34
 何週間にもわたる長旅の末、ようやくコウタニウムラボに辿り着くことができた。旅は楽しかったけれど、やっぱりいつものラボにつくと帰ってきたという安心感が凄い。やっぱり我が家が一番だ。そういえば、imo64君は我がラボを見て凄い驚いていたっけ。
imo64 <メモ帳>
博士‼ あれなに?
 実験道具を興味津々に聞いてくるimo64君。このラボには危ないものもあるからちょっとだけ落ち着いてほしいが…。まあ、可愛いから許しちゃうボクもボクなんだけど。幸いにしてimo64君は賢かったから勝手に実験器具に触ったりすることはなかったから危険なことはなかったけれどね。imo64君はすぐにラボに馴染んでくれた。今では、簡単な実験なら助手として力を貸してくれるほどだ。imo64君の適応力はとてつもないと思う。
 そんなある日、ボクはimo64君と二人で外食に行くことになった。他の研究者はこの後も研究を続行するって言って聞かなかったから。
koutan
imo64君、今日はファミレスでも良い?
imo64 <メモ帳>
勿論
 という事でラボから比較的近いファミレスに入った。店員さんは、青い着物を来た人でなんか猫さんを×したり、ツイキャスとか配信とかで女性を囲わせて怒られてそうだな…と思いつつ、僕らは席についた。
imo64 <メモ帳>
博士、今日はなに食べるの?
koutan
あー…何でも良いや。ボク食事には興味ないし。imo64君に合わせるよ
imo64 <メモ帳>
よく言うよ…結構偏食な癖に
 軽く愚痴をこぼしながら、imo64君は店員さんをスパゲッティとドリンクバーを二つ頼んだ。
imo64 <メモ帳>
何がほしい?
koutan
紅茶の冷たいの
imo64 <メモ帳>
おっけー
 という事でドリンクを持ってくるのはimo64君に任せることにした。その間、ボクはというとはじめてimo64君と会ったときのことを思い出していた。風ノ巡リ人でも、あんな高い所まで上るのは難しいはずなんだけどどうしてあんなところまで上ってこれたのか…ちょっと疑問は残るけれど、別に知ったところで何にもならないからいいか…
imo64 <メモ帳>
なに考えてんの?
 後ろからひょいっと現れて目の前に紅茶を置いてくれたimo64君が不意に聞いてきた。
koutan
ありがと、imo64君。いやー、君とはじめて会ったときのことを思い出していてね
imo64 <メモ帳>
ああ、あんときか。いきなりどうしたの?
koutan
君の種族でも、あんな高さの所まで来れるものなのかなって思ったんだ
どうせ、嘘をついて何にもならないし正直に言った。すると、imo64君はちょっとばつの悪そうな顔をして……
imo64 <メモ帳>
その事は……まあ、あまり気にしないでくれ
koutan
勿論、気にしようとしているわけじゃない。知らなくたって、君は君でなにも変わるわけじゃないんだし
imo64 <メモ帳>
けど、正直知りたいっていう気持ちはあったりする?
koutan
まあそりゃあね。知れるんだったら知りたいよ…ってこの会話、ちょっと前にしなかったっけ?
imo64 <メモ帳>
飛行船でな。まあ、koutanだったら知っても悪用はしないだろうし、教えてやるよ。ただ今回の話は俺のプライドもかかってるからあももさんにも話さないでくれよ?
koutan
約束する、もしよければ教えてよ
imo64 <メモ帳>
俺は、風ノ巡リ人の中でも優秀な個体だったんだよ。これだけだ。これのせいで色々酷い目にあったからあまり言いたくなかったんだよ……
 そうか、imo64君が優秀な個体であったから研究者にもたくさん実験をさせられたのか……。そりゃ、思い出したくもないよな……
koutan
そっか…ごめんね、辛いことを思い出させちゃって
imo64 <メモ帳>
ははwこれこの前と流れが同じだよなw
koutan
それは思ったw
 いつも通りに笑うimo64君。だけど、彼の笑顔に影が差したのをボクは見逃さなかった。

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