休み時間。
私は出久の席に頬杖をつきながら、彼に問いかけた。
とたん、出久の表情が和らぐ。
キラキラとした純粋な瞳で話し出す出久を、私は見つめる。
ほんとにヒーローが好きなんだなぁ。
でも、
そう。
出久は個性を持たない、無個性。
ヒーローは諦めた方がいい、って、医者に言われたらしいんだ。
思わず声を上げて立ち上がり、睨みつける。
が、勝己は不満そうに私を軽く睨むと、なにも言わずに去っていった。
そう言われて、私は椅子に座りなおす。
そう言うと、出久は悲しそうに笑う。
彼の手元には、1冊のノート。
"将来の為のヒーロー分析"
ノートの表紙には、そう書かれている。
私の言葉を聞いて、出久は嬉しそうに笑う。
彼が小さな頃から頑張っているのは知っている。
無個性だとわかった時の、彼の絶望したような表情は今でも忘れられない。
でも彼は、こうやってノートに他のヒーローたちのことをまとめたり、勉学に励んだりして、ヒーローになることを諦めていない。
私はそんな彼を、幼馴染としてずっと応援し続けている。
でも、勝己は...。
勝己は、出久のことを見下して虐めている。
だから私は、彼らの間に入って止めるしかできない。
無個性だからという理由で、私は出久のことを見下したりしない。
私だけでも、出久の味方になれればいい。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。