第2話

No.2
8,937
2021/08/20 04:11
あなた
ねぇ出久、なんかあった?
緑谷出久
え?どうして?
あなた
なんか、すごく嬉しそうに見えるから







休み時間。





私は出久の席に頬杖をつきながら、彼に問いかけた。





とたん、出久の表情が和らぐ。







緑谷出久
実は、今朝ヴィラン退治中のプロヒーローを見てね。Mt.レディとか、シンリンカムイとか...







キラキラとした純粋な瞳で話し出す出久を、私は見つめる。





ほんとにヒーローが好きなんだなぁ。





でも、







爆豪勝己
おいコラデク!!
緑谷出久
わわっ、かっちゃん!?
爆豪勝己
無個性のくせにあなたのこと誑かしてんじゃねぇよ!!







そう。





出久は個性を持たない、無個性。





ヒーローは諦めた方がいい、って、医者に言われたらしいんだ。







あなた
勝己、やめなさい。なんてこと言うの
爆豪勝己
事実だろーが。実際に無個性の木偶の坊なんだからよ
あなた
勝己!!







思わず声を上げて立ち上がり、睨みつける。





が、勝己は不満そうに私を軽く睨むと、なにも言わずに去っていった。







緑谷出久
あなたちゃん、僕なら大丈夫だから...







そう言われて、私は椅子に座りなおす。







あなた
ごめんね出久
緑谷出久
あなたちゃんが気にすることじゃないよ。それに、かっちゃんが言ってることは本当なんだし...







そう言うと、出久は悲しそうに笑う。





彼の手元には、1冊のノート。







"将来の為のヒーロー分析"







ノートの表紙には、そう書かれている。







あなた
ねぇ出久、そのノートに、今朝のことはもうまとめたの?
緑谷出久
ううん、まだだよ。帰ってからまとめるつもりなんだ
あなた
そっか。ねぇ、まとめてからでいいからさ、よかったら見せてよ
緑谷出久
!うん、もちろんだよ!







私の言葉を聞いて、出久は嬉しそうに笑う。





彼が小さな頃から頑張っているのは知っている。





無個性だとわかった時の、彼の絶望したような表情は今でも忘れられない。





でも彼は、こうやってノートに他のヒーローたちのことをまとめたり、勉学に励んだりして、ヒーローになることを諦めていない。





私はそんな彼を、幼馴染としてずっと応援し続けている。





でも、勝己は...。







あなた
勝己には、またちゃんと言っておくから、安心してね
緑谷出久
...うん、ありがとう







勝己は、出久のことを見下して虐めている。





だから私は、彼らの間に入って止めるしかできない。





無個性だからという理由で、私は出久のことを見下したりしない。





私だけでも、出久の味方になれればいい。

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