夜。
就寝支度を終えて部屋で授業の復習していた私は、その声を聞いてドアの方に身体を向ける。
私がそうしたと同時に、勝己が部屋の中へと入ってくる。
そう言うと、勝己は大人しく私のベッドに腰掛ける。
...すっごい視線感じるんだけど。
私は後ろから勝己の視線を感じ取りながら、なんとか今日の分の復習を終える。
パタン、とノートを閉じてから、私はこちらを見つめている勝己の隣に腰掛けた。
ムスッ、と唇を尖らせたのを見て笑うと、勝己は私の肩にぽすっ、と頭を乗せてくる。
それから軽くぐりぐりと擦り付けてきたかと思うと、顔を上げてこちらを見つめた。
再び身体をこちらに預けて寄り添ってくる勝己の頭を、軽く撫でてやる。
2人になるといっつもこうなるんだから。
そう言いつつも顔を上げない彼を見て、思わず笑う。
控えめに背中に腕をまわされ、それに応えるように私も同じように抱きしめる。
そうすれば、勝己は遠慮なく抱きついてきた。
これ出久が見たらどうなるかなぁ。
まあまずは勝己がキレ散らかすよね、絶対。
そう言いながらも、私の身体を包む腕の力が弱まることはない。
学校と家でのギャップがえぐい...。
実の弟とわかっていながらもその姿にキュンとしてしまう私は、きっとどうかしてる。
頭を撫でていると、勝己は顔を上げて私を呼ぶ。
ルビーのような紅い瞳が、こちらを見つめている。
急だな。
私の反応を見て、勝己はムスッ、と唇を尖らせる。
あーもう、しょうがないな。
私たちは実の姉弟だ。
それをわかっていながらも、私たちはお互いに姉弟に向けるものではない感情を抱いている。
だからキスなんて、平気でできるんだ。
...正直、照れるけど。
ちゅ、と触れるだけのキスをして離れ、私は勝己を見つめる。
が、勝己は私の腕をがしっ、と掴むと、自分の方に引き寄せた。
そう言って、驚いている私を見て舌なめずりをした。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。