第65話

56
7,251
2022/03/09 07:17
先生と連絡を終えてから30分。片手でスマホを握りしめ、走る振動でずれ落ちるリュックの肩紐を何度も戻しながら、先生の元へと急いだ。















🐰 「 …はぁっ、…はぁっ… 」















人混みを掻き分け、集合場所の目印を手がかりに先生を探す。雑音に紛れるように、リュックやら服やらが擦れる音がする。生憎今日は休日、おまけにここがテーマパーク前ということもあり、周囲はすっかりごった返していた。家族連れの人もいれば、友人同士で来ている人もいる、もちろん、恋人同士らしき人達もいた。果たして先生と二人でこの中に紛れた時、世間は俺たちのことをどういう関係性だと思うだろう。教師と生徒?妥当だ。なんなら正しい。兄弟?それはないか、似てないもんな。俺なんかより先生の方がずっとかっこいい。それ以外の関係性として、即座に納得のいくものは浮かぶだろうか。恐らくないだろう。要するに、この中で俺たちが恋人同士だと疑う人間は、誰一人として居ないということ。それぐらい、男同士であるという事実はどうも恋愛感情を連想させにくいのだ。

















🐰 「 …ぁ、いた!…って、あれ…先生だよな… 」















グッズ売り場の前で、腕時計を見ながら立つ男性の姿。スマートな服の着こなしに、育ちの良さを思わせる佇まい。まるでその部分だけを切り取ったかのように、彼を取り巻く雰囲気やら空気間は他と全く異なっていた。そしてそれは彼の前を通る人はみな共通に感じるようで、思わず2度見する人もいれば、開いた口が塞がらないという人もいるように、周囲の反応として明らかに証明されていた。














普段の学校生活で見慣れている分、そんな異様な光景がやけに新鮮に感じる。いや、この新鮮さの要因は慣れによるものだけでは無いだろう。見た目というものは、人と人とを見極める時において、何よりの判断材料となる。それは顔立ちのみならず、ファッションという類においても十分適応されるだろう。想像してみて欲しい。服のセンスや見た目の重要性を気にもとめてなかったような人間が、ある瞬間をきっかけに、まるで洗練されたかのように見違えるという光景を。一般的に、"あいつ垢抜けたよな" と囁かれるその当事者には、男女問わずどの人間もなり得る。さて、その当事者に、手を加えずしも美しい人間がなればどうなるだろうか。あっという間に誰もが羨む理想の人間像の完成だ。そしてその理想とやらを現実世界で形作ったのが、まさに彼。キムテヒョンである。学校という仕事場では、その容姿共々一般人に溶け込むかのように、女子生徒から黄色い声の上がるただの顔の良い教員という印象が付けられてしまっているが、街に出てみればどこぞの芸能人よりもオーラのある存在に早変わりだ。だからこそ、別人のようにさえ感じたのだ。これには一瞬でも、本当に先生かと目を疑ってしまうのは無理もないだろう。















と、そんな思考を振り払うように、頭を軽く横に振る。そして、先生に聞こえるように雑音に負けないほどの声で名を呼んだ。















🐰 「 …っせんせ!テヒョン先生!」















すると視線をこちらへ向け、片手を挙げつつゆっくりと近づいてくる。その様子を確認しつつ、俺自身も先生の方へと急いだ。















🐰 「 …はぁっ…すいません、遅れちゃって、」















🐯 「 あれだけ楽しみにしときながら遅刻とは、いい度胸だな 」















🐰 「 いや、…ほんとすいません、… 」















そう軽く頭を下げつつ、チラチラと先生に目をやる。















🐯 「 …なんだ 」















🐰 「 え、いや…その、」














🐰 「 やっぱかっこいいな…って 」


















そう言ってへなりと笑えば、一瞬目を開きすぐさま視線を逸らす先生。かと思えば、あっという間に先程までのまるで此方を試すような表情に戻って、














🐯 「 へぇ、今更ご機嫌取りか?」















なんて言ってくるんだ。とことん意地悪な人だな、と軽くため息を吐く。















🐰 「 まさか…純粋な気持ちですよ 」













すると俺の様子を見て、















🐯 「 …ならまぁ、着飾った甲斐もあるわけだ 」















と、呟くように言った。














🐰 「 …え?」













🐯 「 いや、こっちの話 」















そして再び、話を変えるように表情が変わる。


















さて、ここで1つ確認しておかなければならない事がある。それは、いくら見た目の変化があった所で、性格まで変化する訳では無いのだ、ということ。装うのは見た目だけ。根本にあるSっ気なんて、爽やかさや洗練された雰囲気と馴れ合うつもりはさらさら無い。つまり、何処に居ても先生は先生なのだ。考えることだって、普段と全く変わらない。俺だけが知ってる先生は、そういう人なんだ。















🐯 「 でもまぁ、遅刻に変わりはないからな 」















🐯 「 とりあえず、___ 」































「 "罰ゲーム" な?」
















































































































next ⇒ ♡ × 80

プリ小説オーディオドラマ