第66話

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2022/03/10 07:00
🐰 「 え、ちょっと、何勝手に話進めてるんですか 」















と言いつつも、この流れになることは少なからず察していた。俺に少しでも隙を見つければ、必ずそこをついてくる。先生がそういう性分だということは、今まで行ってきた "勝負" で、散々味わってきた。だからこそ、これぐらいの予想は朝飯前なのだ。ではなぜこんなにもすんなりと予想できるのか。それは俺が今まで受けた先生からの勝負に、尽く敗れているが故だろう。そして同時に得た敗北感や屈辱感、羞恥心は計り知れない。だからつい、この流れになると














🐰 「 普段からそんな事ばっかなんでね、慣れっこです 」















そうぶっきら棒に答えてしまう。















🐯 「 へぇ、随分と大口叩くじゃねぇか 」















🐯 「 けどお前、忘れんなよ?」















🐰 「 …何がですか 」















🐯 「 付き合ったとはいえ元は教師と生徒 」















🐯 「 どっちがどっちに従うかなんて、一々言わなくったって分かるよな?ジョングク君 」















そう意地悪な含み笑いをする先生。そうだ、つい忘れそうになってしまう。俺がこの人に言い負かされ続けるのには理由があるのだ。どれだけ牙を向けたって、彼の頭の回転の早さには到底及ばない。勝ち目のない勝負。何度彼の手のひらの上で転がされたことか。おまけに心まで持っていかれたのだ。一つ一つの "罰ゲーム" やら "お仕置" やらは、決して侮れないものなのである。第一、彼は何を為出かすかわからない。そこが何処であろうが、どんな状況であろうが、彼には関係ないのだ。そんな妙な緊張感が、かつてのように俺の身体の隅々までに及んだ。全く。優しいのやら意地悪なのやら。いい加減はっきりして欲しい。俺の中にある先生の印象が、未だに確定し切れないのだから。お陰で毎度毎度感情が完全に迷子だ。と、諸々の思いを吐き出すように、もう一度大きく息を吐いた。















🐰 「 …で、罰ゲームって…なんですか 」















すると口角を上げ、そうだなぁ、と何か考える様子で視線を遠くに向ける。何処からでもかかってこい、と1人戦闘モードに切り変わろうとしている中















🐯 「 …じゃあまぁ罰として、」















グッズ売り場の店舗内に向かって歩き出す先生。思わぬ行動に後を追うようにしてついていくと、あるブースの前で何かを手に取れば、















🐯 「 今日1日… 」















それをこちらに見せるようにして振り向いた。















🐯 「 これ付けて過ごせ 」














🐰 「 え、これ…カチューシャ?」
















予想だにしなかった方向から飛び出した "それ" に、思わず唖然とする。しかし、何故これが罰ゲーム?とよく見てみれば、まるで強調するように大きなリボンが付いている。たまたま真横を通った女性陣の付けている "それ" と見比べて、なるほどと理解する。















今までとは比にならないほど可愛らしい罰ゲーム。それに対してここまで警戒していただなんて。先生も大して本気では無いようだ。またもや先生に翻弄されてしまった。というか、勝手に翻弄されたと思っているだけなのだろうが。














🐯 「 見りゃわかんだろ 」















🐰 「 いや、でもこれ女の人用だし…あ、俺そっちがいいです!」















と、一応抵抗してみる。というか、普段の罰ゲームに比べればと割り切ろうとも思ったが、やはり普通に恥ずかしい。















🐯 「 あーだめだめ、お前はこれ、決まりな 」















そう異論は認めんというばかりに女物のカチューシャを押し付けてくる先生。こちらも負けじと押し返す。全く、これはこれで嫌だ。可愛らしすぎるデザインのこれを付けた自分の姿を想像すると、あれよあれよという間に恥ずかしさが込み上げる。















🐰 「 んもぅ、いやですよ!恥ずかしいじゃないですか…俺これでも男なんですからね!」
















🐯 「 我儘言うな、大体これ罰ゲームだかんな?」















🐯 「 決める権利は俺にあんの 」















🐰 「 …っそ、そうですけど… 」















だとしても、これを自分一人だけが付けるなんて、せっかくの初デートが下手すれば黒歴史と化してしまうではないか。なんとしてもそれだけは避けたかった。さて、この状況で明らかに優位なのは先生であり、何を言っても言い負かされるだろうということは先程思いめぐらしたように経験済みだ。そこで、瞬時に考えた唯一の策。あくまでも平然を装って、仕方ない、という風に先生に切り出した。















🐰 「 わかりました、付けます 」















すると満足そうに微笑んで、カチューシャを手渡ししてくる先生。















🐯 「 素直でよろしい 」















🐰 「 けど、僕一人は絶対嫌です 」















🐯 「 …え?」


















🐰 「 …先生も、…付けてください 」















そっと先生の様子を伺えば、首を傾げながら















🐯 「 …お揃いにするってか?いや、それじゃ俺まで罰ゲームじゃん 」















と言い返してくる先生。そこでもう一言付け加える。















🐰 「 いや、先生はその…男物の方でいいんで 」















そう言った後、どこか一瞬間が空いたような空気が漂ったが、すぐに先生がその間を埋めるように言葉を口にした。















🐯 「 …あぁ、なるほどね 」















するとニヤニヤと笑いを堪えながらこちらを見る先生。















🐰 「 な、なんですか 」















🐯 「 お前俺とペアリングしたかったわけだ 」















🐰 「 …なっ!」















🐯 「 カップルコーデ?みたいな?」















🐰 「 ち、ちが!違う!そういう訳じゃ!」















🐯 「 分かった分かった、仕方ねぇなぁ 」















🐰 「 だ、だから!そういうつもりじゃなくて!」















🐯 「 いい加減素直になれって、お前も 」















そう言いつつ、別のブースから男物のカチューシャを掴み、俺に持たせていたカチューシャを取ると















🐯 「 買ってくるから 」















とレジカウンターの方へ向かって行った。ケラケラと笑って俺の反応を面白がる先生の後ろ姿を見ながら、俺は心底、自分の不甲斐なさを感じていた。お陰で、俺って本当に男だっけ、と愚問を発する始末である。果たしてこの調子で、今日1日何事もなく無事に過ごすことが出来るのだろうか。






















































































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